たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

不可能を可能にした、完全無農薬・無肥料「奇跡のりんご」

2013-07-17 11:20:08 | 劇場映画

映画「奇跡のりんご」を観ました。公式サイト
りんごの故郷、青森・津軽・岩木山の風景画が美しい。



りんごは実って売れるまでに、10回前後の消毒をしなければなりません。
傷のない美しいりんごほど消毒が大切です。
うどんこ病、赤星病やアブラ虫を予防するためで、手遅れになると、
あっという間に葉が黄変色し、実はいびつになってしまう。
全国生産2位県のりんご農家で育った「たにしの爺」には体験的に分かります。



今では使用禁止になっている、
硫酸銅と生石灰で調剤するボルドー液のや怖いパラチオン系の消毒剤を、
樹木と樹木の間を、ホースを引っ張り回しながら手繰ります。
ときには消毒液を被ることもありました。

映画は青森・津軽の岩木山の麓でりんご栽培の若夫婦の物語です。
実在のモデルもいる実話でもあります。



高校を出て東京でサラリーマンをしていた主人公の木村秋則(阿部サダヲ)は、
帰郷した際に見合いを勧められる。
相手は高校時代から好きだった初恋の木村美栄子(菅野美穂)だった。
機械ものが好きで、メカに憧れて農業を馬鹿にしていた秋則だったが、
大りんご農家の一人娘美栄子との結婚に乗り換えてしまう。
夫婦でりんごの消毒に奔走する日々が始まった。





しかし、
消毒作業のあった日は、必ず美栄子の身体に変調が起きた。
皮膚はただれ潰瘍が出来ていた。そして美栄子は身ごもっていた。

秋則は子育ての本を買いに本屋に出かけた。
偶然にも「無農薬農法」の本を手にする。
愛する美栄子の苦悩を救うために消毒をしない、「無農薬りんご栽培」を決意する。

もともと研究熱心な秋則は農薬の代わりに、酢や重曹液の散布を試みながら、
絶対不可能といわれている「無農薬りんご栽培」の研究に没頭する。
研究というより「憑依かれて」しまう。
義父から受け継いだりんご園は荒れ果て、
枝には無視や毛虫がびっしり取付いている。



花も実も付かず、葉は枯れ落ち、木も枯れていく。
同業者から奇人扱い、お金もコメもなくなり、りんご園は差し押さえられる。
妻の美栄子はそんな秋則を理解し、極貧の生活を支える。
3人の娘たちも健気に、
「父ちゃんの作ったりんご」食べたいと作文に書いていた。

りんごが成らなくなってから、11年が過ぎていた。
長女の病気、義父の痴呆症、家族全員の支えが崩れ始め、
一家は絶望のときを迎えていた。
秋則は一本、一本りんごの木に「ゴメンね」と謝り、
岩木山の山中に死に場所を探しに分け入っていく‥‥



妻・美栄子役の菅野美穂が好演です。3人の娘の母になって、
夫・秋則を見守る健気に明るく、そして哀しく、演技が実にいいです。
義父・木村征治役の山崎努も素晴らしい。
寡黙ながら、娘と婿を信じて、支援するため全財産を失う。、
痴呆症の果て最後に信じていたものがあった。



原作は「奇跡のリンゴ 『絶対不可能』を覆した農家・木村秋則の記録」(石川拓治著/幻冬舎文庫刊)。
近く続編ともいえる「ドキュメンタリー いのちの林檎」も封切りされます。