たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

母べえ 戦争の昭和時代の家族

2008-02-12 23:08:06 | 劇場映画
自由な思想が犯罪になる「治安維持法」下の昭和時代。
ドイツ文学者の「父べえ」(坂東三津五郎)が逮捕される。
残された「母べえ」(吉永小百合)と二人の娘たち。

父べえの妹の久子叔母さん(檀れい)、教え子の山崎さん(浅野忠信)が親身に留守家族を励ます。
獄中の父べえとの手紙の交換が、家族の支え……そして日米開戦……

この映画には「懐旧的な昭和」などは全くない。
得体の知れない「意思」が国家権力と民衆によって、(近頃の言い方で言えば)コラボして圧倒してくる「暗い昭和」の時代が日常として描かれる。

「靖国の母」も切ないが、気強く働くこの「母べえ」は、もっと切ない。
ただ止めどなく、涙腺が弛み続けるのは、なぜだろう。

11日・国の祝祭日にこの映画を見ました。
意識したわけではありません。たまたまそうなっただけです。
映画のなかに「皇紀2600年祝賀」のシーンがありました。

場内はほとんど中高年以上、お年寄りばかりでした。
支配人らしき人に聞くと、お客さんは「L」の方に集まっているということでした。

「武士の一分」で健気で哀しい下級武士の妻を演じた檀れい。今回は父べえの妹として登場する。
美貌と気品は比類ない。宝塚時代の中国公演で楊貴妃の再来と評されたという。

タニシは、原節子の再来と言いたい。