東京・乃木坂の国立新美術館で『ルーヴル美術館展 』
日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄――
が開かれています。2015年2月21日(土)~6月1日(月)
ヨハネス・フェルメールの「天文学者」を観て来ました。
展覧会はパリのルーヴル美術館のコレクションの中から、
16世紀から19世紀半ばまでのヨーロッパ風俗画83点が出展されています。
「風俗画」とは、人々の日常生活の情景を描いた絵画で、
家事にいそしむ召使い、つましい食卓につく農民の家族、
身分や職業を異にする様々な人々の日常を描くものです。
展示品にはフェルメールの《天文学者》が初来日しました。
ティツィアーノ「鏡の前の女」、クエンティン・マセイス「両替商とその妻」など、
目を引く作品もありましたが、たにしの爺が一番、良かったと思ったのはスペインの画家、
ムリーリョの「乞食の少年<蚤をとる少年>」でした。
ぼろを纏い、ノミを取りながら物乞いする少年。
悲惨な情景であるはずが、なんとも言えない明るさが醸しだされています。
あの優しい聖母像や子どもらを描いてきたムリーリョの筆によると、
こういう雰囲気になるのだろうか。不思議な明るさに満ちています。
風俗画の多彩なテーマは当時のヨーロッパが身分や貧富の差もリアルに、
農作業、食卓、女性の家事労働など各階層の生活ぶりが描かれています。
中世ヨーロッパ絵画の占める宗教を題材にした大型作品や自画像などに比べ、
比較的小型作品が多いです。
絵を飾る場所が教会、宮殿、お城から一般家庭にも広がったことが分かります。
これまで、フェルメール絵画は、
2007年の秋にこの美術館で「牛乳を注ぐ女」を観賞して以来、
32点しかない世界の至宝「フェルメール」の絵画のうち、
半分の16点と東京で対面できたことになります。
2008年秋、東京都美術館で「マリアとマルタの家のキリスト」
「ディアナとニンフたち」「小路」「ワイングラスを持つ娘」
「リュートを調弦する女」「手紙を書く婦人と召使」
「ヴァージナルの前に座る若い女」の7点。
2009年夏、国立西洋美術館で「レースを編む女」
2011年春、渋谷のBunkamuraで「地理学者」
2012年春、渋谷のBunkamuraで「手紙を読む青衣の女」「手紙を書く女」「手紙を書く女と召使い」
2012年夏、東京美術館で「真珠の耳飾りの少女」「ディアナとニンフたち」
2012年夏、国立西洋美術館で「真珠の首飾りの少女」を観賞してきました。
そして今回の2015年春、国立新美術館で「天文学者」で16作品になりました。
これまで対面した作品でイチオシは、やはり初めて対面した「牛乳を注ぐ女」でしょうか。
キラキラ輝く光あふれる絵画を、何度も並び直して見つめていました。
今回の「天文学者」はこれまでのフェルメール絵画の光が少なく、キラキラもブルーも乏しく地味なものでした。
この美術館の空間に浸ると、来る度に転地療法の気分になりますね。
国立新美術館はちょうどサクラがほころび始めた26日でした。
美術館の外は咲き始めたサクラに彩られ、
とても心地よい美術館めぐりになりました。
ミッドタウンを散策し日比谷線・六本木駅まで歩きました。