今年は大阪、京都の紅葉名所をいくつか訪ねたので、公平を期して奈良の名所にも紅葉狩りに出かけてみることにしました。
紅葉と正暦寺の本堂
JR奈良駅から今の季節だけ運行している直行バスで30分、奈良の中心部から12キロ近く離れた場所にある正暦寺(しょうりゃくじ)は、両側から山が迫った深い谷沿いにありました。
客殿の門
西暦992年、一条天皇の勅命を受けて創建され、創建当初は、堂塔・伽藍を中心に86もの坊が建ち並び、威容を誇っていたといいます。
客殿の中庭
ところが、平安末期の1180年、平重衡の南都焼き討ちの際、正暦寺も焼かれて廃墟と化しているので、平家に反逆する興福寺の一味とみなされていたようです。
鎌倉時代に入った1218年、興福寺の信円僧正が再興し金堂、弥勒堂、講堂、十三重宝塔、経蔵、御影堂、鐘楼、六所社および別院などが整備されています。
応仁の乱などで一時衰えた時期もあったようですが、江戸時代初期には本堂、三重塔など多くの堂塔伽藍がまだ建ち並んでいたようです。
鐘楼
しかし、1629年の火災によって堂塔伽藍が焼失、江戸中期以降には真言宗仁和寺の末寺となっています。
土蔵
さらに明治の廃仏毀釈によって正暦寺の荒廃は一挙に進み、延々と続く石垣だけが往時を物語っています。
現在、菩提山真言宗の本山となっている正暦寺には、福寿院客殿(重文)があり、この座敷から見る庭の紅葉は一見の価値があると思います。
そこから川に沿って奥に進むと高い石段があり、その上に小さな本堂と鐘楼、土蔵などの建物がありました。
本堂
正暦寺には、菩提仙川の清流の清水を用いて、初めて清酒が醸造されたという伝承があり、「日本清酒発祥之地」の石碑が建っています。
今から千年以上前、奥深い奈良の山中に正暦寺という大伽藍があったとは、迂闊にも知りませんでした。
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