2003年12月に公開された映画「ラストサムライ」は製作費 1,4億ドル (168億円) 、世界全体での興行収入4,5億ドル(540億円、日本だけでは137億円)というので興業的には成功した映画であろう。

この映画では、トム・クルーズ(出演料20億円といわれる)が演じる主人公「オールグレン大尉」が、反政府軍に捕らえられ、「たか」(小雪)の手当てを受けるのであるが、小雪とのキスシーンにはかなりの違和感があったことを記憶している。
しかし回復してきたオールグレンが、僧院のような住居に住む「勝元」(渡辺 謙)と会話し、勝元の精神世界に魅せられるようになるシーンは説得力があり、その舞台となった寺院の撮影場所がどこか前から気になっていた。

最近、そのロケ地が姫路郊外にある書写山圓教(えんぎょう)寺であったと知ったので、早速訪ねてみた。

ラストサムライのスタッフが、撮影場所の候補となっていた姫路城を見たあと、時間が余ったために観光に訪れ、偶然発見したのが圓教寺であったという。
市外地から遠く離れた山中にある寺の静寂と、500年前の室町時代に建築された巨大木造伽藍をみてスタッフは一目で気に入り、監督にロケ地とするように推薦している。

その後エドワード・ズウィック監督(1952年生まれ)が円教寺を訪問し、ラストサムライの「勝元」の住む住居のイメージにピッタリであったので京都で予定されていたロケを、即座にこちらに変更したらしい。
確かに騒々しい京都の大寺院よりも、自然豊かな圓教寺のほうが映画のロケ場所としては遥かに上であろう。
常行堂(重要文化財)

ここは、交通の便が悪いので予算と日程にかなりの余裕が必要となるが、シカゴ生まれハーバード大学卒業の監督は即決したという。
渡辺謙演じる「勝元」の居宅をはじめ、5日間に渡って数々のシーンが撮影されたが、その間トムクルーズは神戸のホテルからヘリで通勤したらしい。
食堂(じきどう)1階

オファーの無かったスティーヴン・セガールは、「俺は日本で育ち、格闘技師範の肩書きを持っているが、日本のことを知らない157センチのトム・クルーズを使ったのはミスキャストである」と悔しがっていたらしい。
事実、渡辺 謙は184センチ、80キロという日本人離れした立派な体格なので、映画の中でもトム・クルーズを圧倒する存在感を示していたように思う。
食堂2階

それにしても、ハリウッドの映画スタッフと監督が、これぞ日本のサムライが居住するにふさわしい場所と一目で気に入った圓教寺を、日本人なら一度訪ねてみて欲しいものである。
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