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ROSSさんの大阪ハクナマタタ



横尾さんの「横尾流現代美術・私の謎を解き明かす」という本によると、デザイナーとして出発した横尾さんは、自分の作品がどんどん複数化してゆく魅力が快感だったと書いています。

1966年、画廊の勧めで初の絵画展をやっていますが、作品には事件性と暴力と諧謔と挑発を込め、ポップアートには無い日常生活の虚偽や穏やかでないもの、土着的な魔力を絵の中に表したいと思ったそうです。

その作品の「ピンクの女」には、アートが絶対やりそうもないこととして、睫毛を一本一本上下に描き、歯をむき出して笑っている女性を描いています。

絵画展の作品は4割が売れ残ったそうですが、後にそれがパリ・ポンピドーで発表された途端、日本の美術館が残りを全部購入していますので、横尾氏の才能は、フランス人が先に認めたということでしょう。

1980年、横尾氏はニューヨーク近代美術館で開催されたピカソ展を見に行き、そこで自己の思いを忠実に描いている作品(2500点)を見て、その会場で絵を描くことを決断したそうです。

「ピカソは本当に生理のおもむくまま、身体の求めるまま、考えよりもむしろ、彼の思いの強さが正直に作品に現れている」と著書に書いています。

ピカソに啓発された横尾氏は「作品に取り組む際、初めにあれこれ考えても思う通りにいかないので、まず描きはじめ、作品のテーマと技術は描きながら決める」そうです。

また1984年に「アートの原点は作品を作ることが目的では無く、それができてゆくプロセスを楽しむこと」であることに気が付き、以降それを実践しているとか。

こうした横尾氏の作品は、美術界でも分類が難いと言われていますが、「どこにも分類されないという言われ方は僕にとって非常に嬉しいこと」とも書いています。

 さらに、「僕の作品は、直観的、生理的、肉体的に作っているように見えるけれど背後には何らかの形で謎のようなものを埋め込んでいる。それは僕の遊びなんです」ということだそうです。

参考文献:横尾流現代美術・私の謎を解き明かす  横尾忠則著



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