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私たちの免疫のベース(基本)は、リンパ球が働いているだけではなくて、もっと白血球の抵抗とか、マクロファージ(貪食《どんしょく》細胞)などがあって行われているのです。とりわけマクロファージの活性が高いと、リンパ球にウイルスを処理してもらう前の段階で、マクロファージ自身の力で治してしまいます。マクロファージは体の元気さといっしょなのです。
実は、マクロファージはウイルスをやっつけたり、いろいろな細菌をやっつけたりするだけでなく、栄養処理もやっています。ですから、栄養をたくさん摂取している人の場合、マクロファージがコレステロールなども処理して分解し、血管を掃除して、動脈硬化を防いでくれたりします。しかし、処理能力を超えるほど食べ続けると、マクロファージは泡沫《ほうまつ》細胞となって血管壁に沈着し、ついには動脈硬化を進めます。つまり、ごちそうをたらふく食べると、ただの栄養処理屋になってしまうのです。マクロファージの無駄遣いをしているわけで、すごくたくさん食べている人ほど、すぐ病気になるし、すぐ風邪をひくというわけなのです。
先日、認知症の研究会に行ってきました。記憶を司る部位の「海馬」についての研究報告があったのですが、アミロイドたんぱくが脳にたまると、グリア細胞(脳のマクロファージはグリア細胞)が集まってきて、そのたんぱくをなんとか食べようとします。しかし、食べきれずに脳に沈着すると、認知症につながるわけです。いわゆる、アルツハイマー型の認知症です。
◇飢餓 無駄なものから食べてゆく
飢餓状態になったときはどうなるかというと、例えば、漂流して食べるものがない場合など、マクロファージは自分の体の構成成分を食べて栄養に変えるのです。何が起こるかというと、栄養が枯渇した際に最初に食べるのは、まず老廃物を食べて、ポリープを食べて、シミを食べて、ガン細胞を食べる・・・。そういう無駄なものから食べて処理し、エネルギーに変えるわけです。
そうして、マクロファージの働きで、ポリープが消える、ガンが治る、ということが起こるわけです。しかし、そういう無駄なものを処理してもなおかつ飢餓状態が続くと、今度は筋肉を食べたり、骨を食べたりします。マクロファージはまさに食べる力です。
◇たんぱく質を減らす
私は、少食の問題を科学的に解明しようと思い、最初にたんぱく質を減らす実験を始めたわけです。実験に使うマウスは通常、25%のたんぱく質の入ったエサで飼育するのですが、たんぱく質の割合を10%、5%、0%に減らして免疫力がどう変化するのかを調べました。すると驚くことに、たんぱく質の割合を下げれば下げるほど、免疫力が上がっていくことがわかったのです。
今、地球上で最もかかる人が多く、死亡する人の数も多い病気は、開発途上国ではマラリアです。マラリアは感染者がおよそ2億人で、年間の死亡者数が300万人 一方、先進国ではガンです。ガンも全世界で見れば年間の死亡者数がおよそ300万人くらいなのです。このマラリアとガンに対して、マウスがどういう抵抗性を示すのかを調べてみました。マラリアは致死株を、ガンも確実に死に至るレベルのガン細胞を植えて、実験しました。
結論からいうと、低たんぱく食のエサにしたら抵抗力が強くなっていくことがわかりました。それも、たんぱく質の割合を下げれば下げるほど、抵抗力が強くなっていくのです。普通のエサを与えたマウスでは100%マラリアに感染して死ぬのが当然で、まさか致死株ですから生き延びるということは予想もしていませんでした。しかし、たんぱく質の割合を5%、0%まで減らしたら、全部のマウスが生き延びたのです。さらには、ガンも転移が消滅していたのです。