「小説 The Saitama市誕生」には『担当部長・中尾浩介の告解』という副題が
そして「自治体合併懲戒処分」には『小説The Saitama市 誕生 その後』という副題がついている。
つまりこの2冊は前編・後編という仕掛けにもなっている。
で、この題名をみてなんとなくわかると思うのであるが、浦和市・大宮市・与野市の3市の合併による「さいたま市」誕生とその後にまつわる物語である。
そして著者は、この合併を最初から最後までの7年間、与野市政策企画部長として担当した人なのである。
したがって、この物語で語られていることは限りなく事実に近い、と思っていいだろう。
だが、この物語は、合併について表向きに語られていたことと裏側で行われていたことのギャップだとか、首長や議員など特別職の公務員の思惑の変遷や暗躍、或いは一般職の公務員であるいわゆる市役所職員の無気力さなど行政の欺瞞などを暴くものではない。
そういうことを知りたくて或いはそういうことを知って行政を批判しようなどと考えて、つまり「暴露本」として本書を選んだり読んだりしてはつまらない。
平成の大合併という自治体にとっては大きな出来事を背景に
↓
一地方公務員の中尾浩介がどう生きたのか・何を考えたのか
↓
ということを通じて
↓
地方自治というのは日本に存在するのかという大きな問いかけ、つまりはこれからどう生きるべきなのか、ということが著されていると思うのである。
中尾浩介個人としては「合併に疑問」であるが、地方公務員としては合併に突き進まなければならない。
悪戦苦闘して合併に持っていけば、理想はすでに遠のき目の前のおいしいものを奪い合うところになっていて愕然とする。ものすごい無力感・脱力感である。
何かをやろうとしたときが一番よいときであって、すぐにそれは陳腐化が始まる。特に組織とかシステムはそうなるということを改めて感じたのである。
後編では合併後のことが描かれているが、どちらかといえば中尾浩介の生き様が主に描かれている。
私は深夜に読み終えて、しばらく眠れなかった。
中尾浩介に降りかかったことは、私にも小さい形ではあるが降りかかっており、とても人事(ひとごと)のようには思えなかったのである。
そして、私は中尾浩介のようには生きていない。
これからどうすべきなのか、ということを真剣に考えさせられたのである。
と書けばものすごく硬い物語のようであるが、実は著者は学生時代は落研にいて、この物語もユーモアと駄洒落たっぷりである。
行政のことで専門的な部分があることは仕方がないことだが、一般の人でも十分読み応えのあるものになっていると思う。
決してベストセラーにはならないだろうが、心ある公務員にはぜひ読んでもらいたいものである。
追伸
実は私はこの2冊を著者から直接いただいたのである。そしてお話もさせていただいた。物語の中尾浩介そのものの人であった。
だからといって「ヨイショ」をしたのではない。
私が今持っている悩みのようなものに対するひとつの答えとして、いい本に巡りあえたなあ、というのが偽らざる私の感想なのである。
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そして「自治体合併懲戒処分」には『小説The Saitama市 誕生 その後』という副題がついている。
つまりこの2冊は前編・後編という仕掛けにもなっている。
で、この題名をみてなんとなくわかると思うのであるが、浦和市・大宮市・与野市の3市の合併による「さいたま市」誕生とその後にまつわる物語である。
そして著者は、この合併を最初から最後までの7年間、与野市政策企画部長として担当した人なのである。
したがって、この物語で語られていることは限りなく事実に近い、と思っていいだろう。
だが、この物語は、合併について表向きに語られていたことと裏側で行われていたことのギャップだとか、首長や議員など特別職の公務員の思惑の変遷や暗躍、或いは一般職の公務員であるいわゆる市役所職員の無気力さなど行政の欺瞞などを暴くものではない。
そういうことを知りたくて或いはそういうことを知って行政を批判しようなどと考えて、つまり「暴露本」として本書を選んだり読んだりしてはつまらない。
平成の大合併という自治体にとっては大きな出来事を背景に
↓
一地方公務員の中尾浩介がどう生きたのか・何を考えたのか
↓
ということを通じて
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地方自治というのは日本に存在するのかという大きな問いかけ、つまりはこれからどう生きるべきなのか、ということが著されていると思うのである。
中尾浩介個人としては「合併に疑問」であるが、地方公務員としては合併に突き進まなければならない。
悪戦苦闘して合併に持っていけば、理想はすでに遠のき目の前のおいしいものを奪い合うところになっていて愕然とする。ものすごい無力感・脱力感である。
何かをやろうとしたときが一番よいときであって、すぐにそれは陳腐化が始まる。特に組織とかシステムはそうなるということを改めて感じたのである。
後編では合併後のことが描かれているが、どちらかといえば中尾浩介の生き様が主に描かれている。
私は深夜に読み終えて、しばらく眠れなかった。
中尾浩介に降りかかったことは、私にも小さい形ではあるが降りかかっており、とても人事(ひとごと)のようには思えなかったのである。
そして、私は中尾浩介のようには生きていない。
これからどうすべきなのか、ということを真剣に考えさせられたのである。
と書けばものすごく硬い物語のようであるが、実は著者は学生時代は落研にいて、この物語もユーモアと駄洒落たっぷりである。
行政のことで専門的な部分があることは仕方がないことだが、一般の人でも十分読み応えのあるものになっていると思う。
決してベストセラーにはならないだろうが、心ある公務員にはぜひ読んでもらいたいものである。
追伸
実は私はこの2冊を著者から直接いただいたのである。そしてお話もさせていただいた。物語の中尾浩介そのものの人であった。
だからといって「ヨイショ」をしたのではない。
私が今持っている悩みのようなものに対するひとつの答えとして、いい本に巡りあえたなあ、というのが偽らざる私の感想なのである。
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