「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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小児科医としても、「20歳未満の人間は立ち直る柔軟さがあり、更生のための教育的配慮が有効」というところ、同感です。

2017-11-16 17:37:25 | 子育て・子育ち
 小児科医としても、「20歳未満の人間は立ち直る柔軟さがあり、更生のための教育的配慮が有効」というところ、同感です。

 私達が知っておくべきこととして、少年事件は増加も凶悪化も低年齢化もしていません。

*************朝日新聞***************************
http://digital.asahi.com/articles/DA3S13228078.html

(インタビュー)非行少年だけが悪い? 家庭裁判所調査官・伊藤由紀夫さん

2017年11月15日05時00分


 少年犯罪の厳罰化を求める声が強まる中、法制審議会で少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げる検討が進んでいる。非行少年たちは社会の変化とともにどのように変わってきたのか。家庭裁判所の調査官になって37年、彼らに向き合い、寄り添ってきた伊藤由紀夫さんに聞いた。


 ――最近の少年たちの気になる特徴はどんなところですか。

 「昔に比べて、孤独が深いと感じます。アニメ『エヴァンゲリオン』のようです。主人公の少年はいきなり汎(はん)用人型決戦兵器のコックピットに座らされて闘わされます。最近の子どもたちも、大人の社会ではグローバル経済などと言っているけれど、よくわからないものに踊らされ、ひとりコックピットに押し込まれ闘わされているという感覚ではないでしょうか」

 「昔は孤独でも、不良の文化に入れましたが、いまはそんな場所さえ減りました。私が調査官になった1980年ごろは、大規模な集団非行が特徴でした。暴走族が改造バイク200台で走るのは珍しくありませんでした。そこには先輩後輩文化がありました。昨今は5台以上はめったに見かけません。共犯事件も減っています」

 ――子どもたちの非行の内容は変化しているのでしょうか。

 「全体としては、万引きや自転車盗などの窃盗・横領が5割、交通事故や交通事犯が3割、けんかや傷害などの暴力事件が1割で、およその割合は昔から変わりません。最近は、ちかんや盗撮などのわいせつ系が目立ちます。スマホの普及やネット社会の広がりの影響でしょう。非行少年はうまくいかないことやおもしろくないことがあると、投げやりになって窃盗や無免許運転など行動化します。悪いことだとわかっていても抑えられない。そういう未熟さは今も昔も変わりません」

 「共働きが普通になり、家族もそれぞれが孤立して、学校にも居場所がなくなっています。昔は反社会的・不良顕示型の少年が多かったですが、最近は非社会的・対人関係回避型が増え、不登校や引きこもり、自殺念慮が目立ちます。『一昨日から何も食べていない』という子どもによく会います。昼夜逆転の生活で親と顔を合わせず、家の冷蔵庫に何もない状態です。小学校高学年から大人と一緒に食事をしたことがない子どもも珍しくありません」

     ■

 ――子どもを取り巻く環境が変わっているのですね。

 「昔は家裁に呼ばれた少年の多くは攻撃的でした。面接でも親子一緒のときは突っ張っていた。でも、親が退席すると、態度がコロッと変わる少年が多かったです。いまは突っ張って家裁に来る子も減り、親を退席させた後の変化も少ない。自分の部屋でゲームやラインをして親子が面と向かって会話する時間が減っているのでしょう。少年と話すと、『大人にこんなに話を聞いてもらったことはない』と漏らす子も少なくない。早い段階で話を聞いてあげれば、少年たちは変わっていきます。非行を起こした少年が何にはまって、どういう考え方を作り出してしまったのかに社会はもっと目を向けるべきです。大人が子どもを放置しすぎていないでしょうか」

 「一方、少年院に入るような子は、就職や復学の手がかりが得にくくなりました。高校を中退しても、学習を支援するサポート校に入れば高卒認定資格を取りやすいですが、学費が高い。経済力がないと、学歴を取り戻すのは難しい。かつては型枠や塗装などの親方への弟子入りもありました。でも、いまは一人親方も非正規雇用で、少年を連れて歩くのは厳しいのが現状です」

 ――少年事件は凶悪化しているという意見があります。

 「少年非行の第1次ピークは、朝ドラ『ひよっこ』の舞台だった65年前後で、少年による殺人・殺人未遂事件は年300件超。いまの10倍以上でした。83~84年の第2次ピークでは約80件。少年人口の減少を考慮しても、凶悪事件は激減しています。今の殺人・殺人未遂事件の6割は親や親族が対象で、15%は嬰児(えいじ)殺。残りも交友関係内が多く、第三者の殺人は、年間0~3件程度で、世界的にみれば極めておとなしいと言えます」

 「凶悪とされる事件も、少年に接すると、違う実態が見えます。中高一貫校に通う高校1年の男の子が、成績が落ち、学校を休んだことがばれて、『最近ちょっと変じゃない』と言った母親をナイフで十数カ所刺して殺した事件がありました。大きな期待をかけられて育った少年にとって母親は大きな存在でした。2日さまよったものの死ぬことができずに逮捕され、3年半少年院に入りました。まじめに勉強して高校卒業認定資格をとり、出院後に大学にも入りましたが、成人した後に、彼なりの『責任』をとる形で自死しました。これを『凶悪事件』と決めつけていいのでしょうか」

     ■

 ――社会ではこの20年、厳罰化が進んできました。

 「以前は凶悪な行為は問題としながらも社会の責任という視点がありましたが、最近は自己責任論が蔓延(まんえん)しています。80年ぐらいまでは少年事件の報道は新聞やテレビで発生から1~2日が常識だったと聞きます。今はワイドショーなどが延々と伝え続け、悪い事件が増えた印象を広めています。きっかけは97年の神戸小学生連続殺傷事件ですが、少年が被害者の子の首を切った事件は60年代にもあったし、戦前には11歳の女子が子どもを惨殺した事件もありました。今はセンセーショナルに取り上げすぎです」

 「少年事件は増加も凶悪化も低年齢化もしていないのに、イメージに引きずられています。私も庶民ですが、庶民感情は根拠のないところで右に左に動きがちです。政治に責任をもつ人が、それを抑えたり、説明したりすることが大切だと思いますが、事実誤認の上に立った発言をする政治家が少なくありません。それで少年法の改正が繰り返され、厳罰化が進められてきた、と言っても過言ではないでしょう。もちろん、被害者遺族への対応や配慮は足りなかったですし、人命を奪った事件が原則1年の少年院収容でいいのかという問題はあったので、以前のままでよかったと言っているわけではありません」

 ――少年法の適用年齢の引き下げ議論も、自民党政調会長だった稲田朋美さんの発言がきっかけと聞きました。

 「そうです。2015年に中1の男子が殺害された川崎事件で、リーダー格と言われた加害少年が18歳だったことを受けて、少年法の改正が言及されたのが始まりです。が、すでに重大事件では16歳以上は原則検察官に逆送され、成人と同じ刑事裁判を受けることになっている。川崎事件を受けて適用年齢引き下げの検討を始めたのはお門違いです。本当に痛ましい事件ですが、その少年はいわゆる血も涙もないような『ワル』ではないと思います。被害者とはゲーム仲間でラーメンをおごるなどしていました。小さいときから家庭で暴力を振るわれ、学校での成績も悪く、問題に直面したときに解決する方法を学んでこなかった。酒を飲んで後輩を殴ったことが地元の不良グループに知られ、家に押しかけられて縮み上がり、それが被害者のせいだと思い込んで犯行に至った、と私は見ています」

     ■

 ――法制審では、今の少年法はおおむね機能していると意見が一致しながら、適用年齢引き下げが前提のように議論されています。

 「予定される成年年齢の引き下げに合わせるためと言われますが、そもそもは憲法改正に向けた国民投票法の付帯決議に関連した公職選挙法改正で、18歳以上に選挙権が与えられたことにあります。成年=18歳は世界基準という論が国会議員は好きですが、第2次世界大戦後、米国の多くの州、欧米、中南米・アフリカ諸国では21歳か23歳でした。年齢が高かったのは、二つの大戦を経て子どもの教育的な機会や環境を整えることが大きな目的でした。その後、多くで18歳に引き下げられた原因は徴兵制です。米国はベトナム戦争期に徴兵制に合わせて成年年齢を引き下げました。国家が破綻(はたん)し、税金徴収の必要からという国もある。成年年齢問題の先には徴兵制や増税などが控えていることを歴史から学ぶべきでしょう」

 「少年司法の原点は、20歳未満の人間は立ち直る柔軟さがあり、更生のための教育的配慮が有効として、全ての非行事件を家裁送致にしたことです。少年法の適用年齢引き下げ問題は、この原点を根本的に否定することにつながります。なのに最高裁も家裁も沈黙していることが残念でなりません」

 (聞き手 編集委員・大久保真紀)

     *

 いとうゆきお 1955年生まれ。大学卒業後、80年に調査官になり、3千人以上の子どもたちを見てきた。2015年の定年退官後も臨時任用で続ける。


 ◆キーワード

 <家庭裁判所調査官> 離婚や親権などを扱う家事事件、非行をした少年の処分などを決める少年事件で、少年や家族、関係者に会うなどして、事実調査のほか、生活環境や成育歴、少年の性格、特性、学校生活、非行の動機などを調べる。判事は、その報告を受け、少年の要保護性を考慮して処分などを決める。
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