波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

波紋      第59回

2009-01-19 08:39:18 | Weblog
小林は正直、自分が酒を飲まず、酔っ払った経験が無いので、どうしたらよいのか、分らない。松山はまた車の中で眠りこけている。「仕方が無いなあ、家まで送っていくしかない。君も悪いが付き合ってくれ。」若い者と二人で千葉の奥まで行くことにした。いささか、腹も立つが、何しろ相手は正体無く酔っ払っていている。夜の道を走り、電話をかけた。奥さんは玄関まで出て迎えてくれた。
何とか三人がかりで彼を下ろし無事送り届ける事が出来た。恐縮して見送る家族を後ろに小林はホッとした。考えてみると、朝の紹興酒から始まっているのだが、どこでどのように作用したのか、分らない。つくづく酒の魔力を思わざるを得なかった。翌日、松山はいつものように出社してきた。本人も気まずい思いだろうと、あえて何も聞かずそっとしていたが、本人も気分が悪いと見えて、口数も少なかった。後日、松山が話したところによるとT商事で飲み始めた頃から、少しづつ記憶が薄れて、そこを出た頃から記憶が無かったそうである。
勿論家で寝てることも、靴をなくしたことも、スーツが泥だらけになっていることもどこでどうしたか一切記憶が無いのだ。電車で降りる駅を間違えることは間々あることで特別なことはないが今回だけは、さすがに懲りたらしい。
そして、その年の夏、松山は社長や親会社のえらいさんのお供で台湾への出張を命じられた。単独で行くことはよくあるのだが、今度はえらいさんのお供である。
ホテルの手配、車の手配、お客さんのアポイント、お土産の準備など、雑用が多く気が重かった。ホテルも最高級の五つ星である。車もリムジンを用意した。
食事は特別に予約をしてある。そして、その日が来た。飛行機も当然フアーストクラスとエコノミーに別れ別々である。
予定のコースは何事もなく、進みセレモニーも無事終わった。そして指定のホテルへ送り届けて自分のホテルへ帰り、ホッとしてやすんでいると、部屋の電話が鳴った。「松山君、ここでは部屋へ女性が呼べるって聞いているんだが、君手配を頼むよ。君と僕の二人を出来るだけ早くね。」驚いた。まさか、そんなことを頼まれるなんて想像もしていなかった。話には聞いたことはあったが自分で呼んだことはないし、本当かどうかも分らない。しかし、上司の命令は絶対だった。(?)業務命令である。
「そんなこと出来ません」と言う言葉は見つからなかった。松山は暫く考えた。
そして、ホテルの部屋付きのボーイを読んで聞くことにした。
「大丈夫、大丈夫、可愛いこいるよ。心配すること無いよ。待っててください。」
ボーイはそういうと、部屋を出て行った。

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