波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

 コンドルは飛んだ  第8回

2012-07-20 11:42:10 | Weblog
会社も規模によって、社内の様子も大きく変わる。100人以下の小さい会社だと何となく家族的な雰囲気になり、あまり気負うこともなく馴染むことになるが1000人以上の上場会社ともなると、その辺がぜんぜん違ってくるようだ。辰夫は初めてに事で比較するものは何もなく、会社と言うものはこんなものかと受け入れていたが配属された「総務部」と言う大部屋で毎日を過ごすことになった。仕事は多岐にわたっているが今までの知識の中で少しづつ処理できることであったし、人間関係の中で交渉することが少なくて事務処理が多いことはあまり気を使うこともなく過ごせていた。それは楽でもあったが、半面刺激もなく何となく物足りなさを感じさせていた。
それは辰夫の潜在的な能力を感じさせることであり、まだ他の事も出来ることを示していた。
久子とのデイトの時にはそんな事が愚痴になって出てしまう。「総務と言う仕事はあまり面白くないね。決まったことを処理する事務の仕事が多くてやりがいを感じないんだ。」「そうでしょうね。辰夫さんなら何でも出来るし、研究熱心だから何か新しい仕事のほうが向いているかも知れないわね」「でも暫く辛抱してみるよ。上の人も見ているんだろうから。それより二人のこれからのこと相談しようよ。そろそろ親の承認をもらって結婚を決めようよ」「そうね。私はいつでもいいわ。辰夫さんが決心して決めてくれればそれでいいのよ」久子は学生時代の時の辰夫の姿を思い出しながら素直に聞いていた。
「所で新居は何処にする。仕事の通勤のことを考えると東京が便利だけど君の考えはどうだい。」「私も東京でいいと思っているけど出来れば親のことも考えると近くに住みたい気もあるの。」久子は母がリュウマチで足が悪く、身体が少し不自由なことをおもい、出来れば近くに住んでいつでも手伝いが出来るようにしたいと考えていた。
「そうか。それだとすれば常磐線の沿線になるね。我孫子辺りどうだい、その辺で探そうか。」そんな話をして急に二人の結婚が具体的に進んだ。何事も積極的に勧めて実行するのが辰夫のやり方だった。全てにぐずぐず、もたもたするのを嫌う性格から話は早かった。身内でのうちわの質素な結婚式を終わると新婚旅行に出掛けた。大島は東海汽船を社員割引で利用できることと
何となく町を離れると言う雰囲気を味わいたいと言う二人の希望であった。

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