波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「新しき道」③

2020-06-08 13:55:10 | Weblog
「今日も親会社へ行かなければならないから」これがその日の挨拶のようになった。つまりい習慣のうち半分以上は親会社へ出向くのが義務のようになった。今までの営業後用務は若いものに任せて大事な時だけの時間となる。「М君、仕事の方はどうなっているかね。」「新しい事業は業界では後発なので仕事はあるのですが、大手のお客さんはまだ取引してもらえません。できればお力になっていただければありがたいのですが、」「其れは何処だね。」「T社です」「ああ。あそこか、さっそくこちらからも担当をつけて君と一緒に動けるようにしよう。」岡山の地場産業の会社としてよりも上場会社の名前はやはり世間的には影響が大きい。
訪問して要件を話すにしても、先方も敬意を表して上のクラスの人が対応して話を聞いてくれる。世間というものはこんなものかと、初めて世の中の仕組みの常識を知るところとなった。しかし、簡単には採用とはならない。一週間に一度は㏚を兼ねて親会社の担当のĪ氏に同伴してもらい、訪問を繰り返していた。
暫くしてチャンスが巡ってきた。それはその担当部署の工場が生産拡大のために静岡へ工場移転の計画が分かったのだ。「Īさん、チャンスですね。ぜひこの機会に売り込みをかけて採用してもらいましょう。」「何か良いアイデアはないかね。」「窓口の若い人はゴルフが好きらしいですよ。」「よし、それじゃあ、うちのゴルフ場へ接待しよう」「えつ、そんなことできるんですか。」「秘書課へ話を通じればあそこのゴルフ場へは行けるよ」ゴルフは営業をするうえで、絶対必要と言われて、少しづつやり始めていたが、河川場ゴルフでメンバー性のゴルフ場は経験がない。「其れだと喜ぶでしょうね。そんなところ行けるんですか」
当に世界が変わりつつあった。こんなことが出来るんだ。世の中の新しい面を知る始まりでもあった・

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