波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

パンドラ事務所  第三話  その2

2013-09-05 11:24:27 | Weblog
杉山氏は同業他社からの入社で異色だった。考えてみると青山と一緒に仕事をした仲間は何人かいたが、全部現地採用で本社採用の人間はいなかった。人手不足の時代背景もあったが、一人は青山の自宅の隣にあった電気店へ集団就職で田舎から出てきた中卒の青年で
転職の相談に乗ったのが、きっかけで採用が決まった。もう一人は優秀なゴルファーの道を歩んでいたが、周りからちやほやされて酒を毎日ごちそうになっているうちに糖尿病で体をかわしゴルファーを断念しなければならなくなり取引先の兄が何とか引き取って
仕事をさせてくれと頼まれた変わり者だった。女性事務員も青山の友人であった人形作りの指導していた女性の所へ習いに来ていた人を紹介してもらった。
「そんなに困っているなら言ってあげても良いわ」と言う感じで、何となく頼んできてもらった形になっていた。こうして全員をそれぞれ見比べるとそれぞれ個性があり、寄せ集めでできたチームであり、ある意味ばらばらのメンバーであった。昔映画で見た
「荒野の7人」黒沢監督作品を思わせる顔ぶれだった。
青山自身も転身組だから、本社から見れば「外人チーム」とみられていたことだろう。
その中で杉山君は同業他社で中堅の営業マンとして経験があり即戦力で計算できた。
彼のいた会社が事業部の刷新で当該事業部をクローズしただけのことであった・
そんなわけで彼とは特に話が合い、青山とはゴルフを通じて親密にしていたが、、青山が定年で去った後も親会社に引き取られて頑張っていたらしい。
青山は親会社との合併後のことは知らなかったが、彼は定年まで仕事を続けたいとエリートの中で肩身の狭い思いをしながら頑張っていたと聞いていた。
いつの間にか、「去る者は日々に疎し」の言葉のようにいつの間にか忘れていたが、ある日突然昔の同僚から電話があり、彼の「死」を知らされた。
苦らしいことは分からなかったが、仕事の勤務中だったということであった。
「あの日のことは忘れられません。主人から電話もなく世を過ごした朝、警察から電話があり、呼び出しを受けました。駆けつけると汚物にまみれて冷たくなった主人が霊安室に横たわっていたのです。警察の話ではビルの清掃員がトイレで発見したとのことで一応変死体として取扱い手続きが終わったとのことでした。
いつもならどんなに遅くなっても駅から電話があり、迎えに行っていたのにどうして電話がないのかと思っていた矢先でした。」奥さんの話は初めて聞く彼の死の様子だった。