日々の泡盛(フランス編)

フランス在住、40代サラリーマンのどうってことない日常。

ジョルジュ・ブラックの謎

2013-10-07 22:06:26 | パリ右岸
先週仕事を一緒にしたフランス人のデザイナーに誘われて
ランチをともにしていたのだが、彼女に今、グランパレで開催中の
ジョルジュ・ブラック展がお薦めだ、と絶賛されたので重い腰を上げて
展覧会を見てきた。

ブラックというと、ポンピドーセンターに無数にある、キュビズムの
作品が有名だ。コラージュだったり、静物画だったり、ギターだったりと
さまざまなモチーフだけれども、どれもキュビズムの画風にもとづいて
空間や輪郭を解体して立体的なキューブで表現している。
僕はそんな作品が延々と続くのかと思っていた。

ところが入っていきなり、風景画。ブラックがブラックにまだなる前の、
具象画を書いてたころの作品から展示は始まる。フォービズムのように
鮮やかな色彩で描かれた南仏のエタックの港の絵が部屋一面に
並んでいる。そして展覧会はブラックの画風の移り変わりを説明しながら、
すぐにキュビズムに。その長いキュビズムの時代を終えたあと、
またブラックの作風は変化していく。

最後の部屋に掲げられた晩年の作品。キュビズムの面影も何もない。
ただ広い麦畑の向こうに広がる大地と空。そこにある空虚感や
絶望感なんだろうか。絶望のふちに沈んだようなブラックの絵画を
通して何か深遠なものが届いてきそうな感じだ。

結論としてこの展示を見に行って非常によかったと思う。
もし見ていなかったら、僕はブラックを、ただのピカソと競作していた
キュビズムの作家としてしか見ていなかったと思う。

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