日々の泡盛(フランス編)

フランス在住、40代サラリーマンのどうってことない日常。

カタカナの罠

2007-10-31 06:58:58 | フランス語
同僚のフランス人にカタカナで書かれたフランス語の
一節があってまったく分からないんで解読して、と頼まれた。
カタカナは以下の文句。

レタ・ネパフェ・プー・ディーゼ・アール・メプー・セビー

まったく分からん。マルローの言った言葉ということしか。
レタというところだけ、多分、国家の意味の「エタ」だと
分かった。で、ネットで検索しているうちに判明。

L'ETAT N'EST PAS FAIT POUR DIRIGER L'ART MAIS POUR LE SERVIR.

国家は文化を動かすためにあるのではない。
それを使うためにあるのだ。

という大仰なセリフだった。マルローはこんなこと言ってたのだ。
60年代の「文化の家」政策は失敗したとフランスでは言われている。
誰もマルローの提唱する崇高な「文化論」についていけなかったのだ。
労働者も炭鉱夫もオペラを見に行く、という図式は誰が考えても
無理があるもんな。

パリで焼酎

2007-10-30 07:41:02 | パリ右岸
パリで焼酎といえば、シャンゼリゼ近くにある和風居酒屋
「ひょうたん」にさつま白波キープしている自分ですが、
今回、同僚のお母さんが日本からの土産ということで、僕に
鹿児島の焼酎を買ってきてくれた。お母さん、生まれが九州らしく
(同僚は関東なんだけど)、九州出身の僕のためにわざわざ
日本から買ってきてくれたらしい。ありがたいことっす。
二日続けて氷で割って飲んだんで、今日はお湯で割ってみた。
焼酎のお湯割りなんて、そんな飲み方したことなかったよな。
なんか、うちのオヤジみたいだよな、などと思うことしきり。
今日の焼酎は芋焼酎だったが、福岡の実家の近くには胡麻焼酎
で有名な酒蔵がある。あと、大分まで行くと麦焼酎か。

夜にポンピドーセンターで行われたコンサートを見に行く。
終演後、カクテルに誘われたがそそくさと帰ってきてしまった。
なんかいつもの気後れが出てきてしまったのだ。あと、そんな
気乗りしないのに無理やり会話したって、自分らしくないしな。

誰がダメなやつじゃないか?

2007-10-27 15:39:11 | パリ左岸
taréという言葉がある。辞書にも意味は出ているが
どちらかというと、ある人間を指して、「ダメなやつ」とか
「欠陥のあるやつ」みたいなニュアンスだと思う。
残念なことに日常生活で非常によく耳にする。

そんでもって、今日職場の同僚のフランス人と話していたら、
ある他の同僚(もちろんその場にいない)をさして、

elle est vraiment tarée!
(あの女はホントに、欠陥人間だよ!)

と言った。そうすると、その場にいたバレリーがすかさず

Qui n'est pas taré ici?
(欠陥人間じゃない人がここにいるの?)

と大声で返していた。大笑い。
みんな同類だよ、って。

チャリンコのパリ

2007-10-25 06:18:40 | パリ左岸
昨日のフサギ病から今日は回復、新たな企画など
考え仕事先の人にメールする自分だった。自分の鬱なんて
そんなもんかよ。まあ、人間の感情すべてに言えることだが
悲しみも、憂鬱も、幸福感もどれも持続しないんだよね。

さて、パリ市が夏から始めた市営貸し自転車システム、
velibに初の死亡事故が起きたらしい。自転車を運転していた
おばさんが大型トラックに跳ねられて即死、とか。
やっぱ危ないもんね、あの自転車。パリは自転車のために
作られてないって。
などと友人から話を聞くのだった。

ふさぎ込む日

2007-10-24 07:22:28 | 自分について
別にそんなふさぎ込む理由なんかないのだけれど、
いつまでたっても晴れない秋空と、いきなり下がった気温の中で
なんだか浮かない表情をする。友達と飲み行くのも億劫。
というか人付き合い自体、面倒くさい。憂鬱な状況の自分。

夕方あたり、飲みに誘われる。フランス人の同僚たち。
「ふさぎ込んでるときぐらい、一杯飲まなきゃ」みたいな誘い文句。
塞いでいるからこそ、そういうのがうっとおしいんだよ、と
思いつつ、断るのに10分ぐらいかかる。日本式な
「いけたら行くから」みたいな言い回しって全然思い浮かばない、フランスじゃ。
行くか、行かないか、のどっちかだもんな、こっちじゃ。

同僚のバレリーが休暇中で、さびしいと思う。
彼女だったら、憂鬱もすぐに吹き飛ばしてくれるんだが。



街角の壁画アート

2007-10-23 05:51:15 | パリ右岸
ある晴れた日の朝、パリ東部を歩いていてふと見つけた
アパルトマンの壁に描かれたアート。
こんな街角にひょっこり現れるアートってなんか
ほっとしていいなあ、と思う。シャチホコばった公園の
ブロンズ像なんかより、砕けていていい感じ。

気持ちの整理がまったくつかない

2007-10-21 06:26:45 | 自分について
最近、気持ちの整理がまったくつかない。
最近始まったわけでもないか。事務所の
机の上もかなり長いことカオス状態になっているので
精神的にbordéliqueになっていても驚くに足りないが。

会社に「飲みに行こう」としきりに誘ってくる
女の子がいる(フランス人)。しかも一対一がいいらしい。
しかし彼女とサシで飲みに行く気にまったくなれないので
毎回お茶を濁していたんだが、とうとう嫌になったらしく、
今日たまたま出くわしたときに、
「あなたを誘うことにもう疲れた。もう誘わない」
と言われた。つーか、なんじゃそりゃ。自意識過剰な・・・。

関係ないが昔、新入社員だったときに同期みんながいわゆる会社の
偉いさんの前で、自己紹介しないといけない場面があった。
同期といっても小さい会社なので10人ぐらいしかいなかったが。
で、そのうちの一人の男がニヤニヤしながら、
「自分はムードメーカーなんで、みんなを盛り上げて行きたいと
思います」みたいなことをのたまっていた。
こいつ、自分が人気者だって自覚してるってことか?
絶対友達になんかなれないよ、と思っているうちに自分の
番が来たんで、手短に名前と出身地だけ言った。誰よりも
短い自己紹介だった。

今日は気温が下がり、底冷えのする夜の舗道を
アパルトマンまで一人で帰った。歩きながら孤独について
考えた。一人でいることは別に苦痛ではない。むしろ
その逆だ。誰かと一緒にいたいということは、誰かを
占有したい、ということに他ならないのではないか?



さかさまの世界

2007-10-20 16:15:13 | フランス語
同僚のバレリーにメールで何か返事をしたら
一言、この言葉がまたメールで返ってきた。

Ci mer

最初、「何書いてんだろう、この人」と考えていたが
そのうち分かった。これ、「Merci」の逆さ語なんだな。
日本語だと、渋谷のことを「ぶやし」とか
女のことを「なおん」と言ったりとか、そういうふざけた
言い回しがあるけれど、フランス語であんまり聞いたこと
なかったんで笑ってしまった。単語自体を入れ替える
contrepètterieというのは聞いたことあったが。
他にどんな逆さ語があったっけ・・・。



セルビアから来た人(2)

2007-10-19 06:54:28 | パリ右岸
こっちに来て思うのだが、利害が絡まなければ僕はワリと他人と
友達になるのは簡単なんじゃないかな、と思う。知らないうちに
友達だけ増えていく、という状況がある。あとは自分の心の
中にオブスタクルがあるか、ないか次第である。せっかく
友達になってくれよう、という人に僕が心を開かないもんだから
結局は離れていく、という図式も結構ある。とかなんとか書くと
なんか僕が人気者みたいだが、そういうことはなくてもともと
友達の絶対数が少ないから、出入りが目立つだけのことだ。

さて最近友達になったセルビアの友達は非常によく働く。
某フェスティバルの仕事をする以上に、プロのジャズ
ミュージシャンもやっていてコンサート
ツアーに出かけたりするし、ジャズの授業を音楽学校で教えたり
もしている。平日も23時ぐらいまで働いていて、深夜に仕事の
メールが来たりする。もちろん土曜日も働いている。日本人かよ。

で、今日、仕事の関係で彼が教えてくれたレピュブリックの
ホテルに予約の電話をする。割引料金だし、仕事のクライエント
をそこに泊めようとしたのだ。ホテルの電話に出た人に、
割引料金のことを説明したが、あまり的を得ない。
終いには「○○(そのセルビア人の友達の名前)
が明日入るから、やつに聞いてくれ」と言われる。え?明日入る?
話をよく聞くと、セルビアの友達はそこのホテルで時々
レセプショニストとして働いているらしい。
彼はホテルマンもやっているのか?飽くなき労働意欲。

知の巨人

2007-10-18 06:37:24 | 自分について
3年ぶりに、日本の師匠に再会した。某文学賞の審査委員会に出席するため
パリに来たのだった。相変わらずの師匠はますますパワーアップしたようで
次から次へと固有名詞や書籍の名前が口から出てくる。
この春にイギリス人のジャーナリストによって出版された
アウンサン・スー・チーの伝記とか、森有正の著作とか。
まあ、パリだから森有正の話をするのは唐突ではないのかもしれないが、
すみませんが一回も読んだことないです。つうか、読む気にもならないが。

文学賞の余興で、オーベール・シュル・オワーズに行ったらしく、
地平線まで続く麦畑に立ったことを楽しそうに話していた。子供のようだ。
ゴッホの絵と糸杉、古ぼけた教会と下宿屋。写真の中の村は
時間が止まったように絵の中となんらかわりない。
歳を取るにつれて、日本を離れるのがだんだん億劫になる、
なんて話をされる。そんなこというのは師匠には似合わないよ、
と心の中でつぶやきつつ、なんかしんみりした気持ちになった日だった。






ベルビル界隈

2007-10-15 01:50:36 | パリ右岸
朝から早起きしてベルビルへ行く。なんのことはない。
散髪にどうしても行きたくて、日曜に開いている理髪店
を探したらベルビルにあることが分かったのだ。
さすが中華街。そもそも日曜の午前中に街に出るのなんて
何ヶ月ぶりだろうか。そんな億劫さも我慢したくなるほど、
髪がボサボサに伸びていたのだ、仕方ない。

ベルビルの地下鉄を降りると、午前11時だというのに
街はすごい人の波ができていた。
買い物袋を下げた人、路上で待ち合わせをしている人々、
街角で世間話に興じる人々、なんかアジアが押し寄せてきた感じ。
カット11ユーロととんでもなく安い理髪店に入る。
いつも行くチェーンの散髪屋は22ユーロだから
べらぼうに安いのだ。

中国人の女性がフランス語で話しかける。
店内にはフランス人のオヤジと、絵に描いたような
華僑顔の中国人のオヤジの二名の客だけ。
僕の番になる。「とりあえず短く切ってください」
と頼むと、もくもくとその中国人女性は髪を切り始めた。
彼女は、なんだかひっつめた髪と、化粧ッ気のない顔で
場末感ただよう。というかベルビルって場末なんだが。
歳の頃は45歳ぐらいか。途中で彼女が口を開く。
「あなた中国人じゃないでしょ?」
「ええ、違います」(まあ、フランス語で話してるんだから当然だが)
「どこの人?タイ人?カンボジア?」
「いや、日本です」
「ああ、そう」
そのあと、彼女はほかの従業員になんか中国語で
こそこそ僕の顔を見ながら話していたが、意味分からず。
どうせ、「この客、日本人なのよ」とかそういうこと
言ってたんだろ!

散髪してもらったら、なんか自分で言うのも変だが
なかなか爽やかなアジア人になったぜ。

ユリシーズへ

2007-10-14 06:41:58 | フランス
昨晩、コンテンポラリーダンスを見に行ったばかり
なのに、今夜もダンスを見に行ってしまった。
今日は、シャイヨーでジャンクロード・ガロッタの作品
「ユリシーズへ」(cher Ulysse)
1981年に初演され、これでフランスのヌーベルダンスが
生まれたといわれる伝説的な作品。クラシックバレエ的な
動きを残しつつ、動きも、音楽も、照明もすべてが
魅力的な、思わず息を呑んで舞台に向かってしまう
すばらしい作品だった。

ふと思い出したのだが、昔、文章がうまくなるには
どうしたらいいのか、ジャーナリストの友達に
尋ねたことがある。友達はしょうがない、みたいな
顔をしながら、「何が何でも、とりあえず文章を読むしか
ないんじゃない」みたいなことを言った。
アートも同じようで、どんなものでも、どんなスペクタクルでも
幅広く見て目を養うのが必要なのかなあ、などと
ぼんやり思った。

燃え尽き症候群

2007-10-13 07:12:15 | 自分について
ここ二週間の激務に一段落つき、かつ原稿も提出したもんだから
今週はなんか気が抜けて、いきなりぽっかり穴が開いたように
なってしまった。毎日、早めに事務所を出て、レストランに
行ったり、友人に会いに行ったり、同僚と飲みにいったりと
せわしない。

そんなかなりボケ気味の自分に朝から不意に来客。
4人のフランス人がやってきた。1時間後、今度は2名の日本人の
来客。そんでそのあと昼過ぎにセルビア人の友人に会いに行く。
ちょっと仕事がらみだったのだが、そのせいで昼飯を食い逃す。
午後3時にまた別のアポ、そのあとアルザスの会社に電話、
午後7時半ごろオフィスを出て、今度は郊外までコンテンポラリー
ダンスを見に行く。かなりクタクタ。ダンスが終わるともう午後10時。
地下鉄に乗ってアパルトマンまで帰る。
なんか目が回るような一日だったよ。

有機的連帯

2007-10-09 05:16:08 | 自分について
今日は仕事の一環で夕方あたりから事務所で文章を書いていた。
あるテーマがあって、それについての記事を書かないと
いけなかったのだ。文化がどうたらこうたら、とかそういう
テーマだったんだけど、詳細は省力。
取材はもう済ませて、いろいろラフな記事は
書いていて、字数制限に合わせて文章を短くしていたのだが、
なかなかうまくいかない。僕の性格からいって、書きたいことや
ネタになる要素が山ほどあって、それが文章の中で雑多に同居
していて、うまく切れないのだ。
それでもなんとかつじつまを合わせて短くしたが、全然
テキストが有機的じゃない。唐突な、不自然な記事なのだ。
しまいには声に出して文章を読んでみた。でも、やっぱり不自然。
有機的言語の連携、って文章をまとめるうえで大事なんだなあ。
って、自分だけかもしれないけど、こんなこと思うの。

盗られるほうも悪い

2007-10-08 05:33:19 | フランス
郊外の知り合いの家に行こうと舗道を歩いていたら
見事に窓ガラスを粉々に割られたルノーの小型車が
路肩に止められていた。持ち主は知っているのだろうか?
それとも割られたあと、仕方ないと思って車を放置している
だけなのか?

フランス人の友人にこの車の話をしたら
驚いたそぶりも見せず、
「ああ、車の中のシートに上着か、バックか
なんかそういう外から見えるものを置きっぱなし
にしてたんだろう。それで泥棒がガラスを割って
中に侵入したんだろ」と事も無げに言った。
「そうやって泥棒を誘惑したらダメなんだよ」
と車の中に物を放置した人間のほうが悪いような
言い方だった。

これで思い出したことがある。パリのメトロのアナウンス。
NE PAS TENTER LES PICKPOCKETSとよく言っている。
「スリを扇動するような行為はしないように」との
意味だ。バックを開け放しにしていたり、おしゃべりに
夢中になって身の回りの所持品に注意しなかったり。
泥棒が一番悪いんだが、泥棒にスキを与えるのも同じくらい
悪い。フランスはそういう社会なんだなあ。というか
そっちが世界的には標準なのかもしれないが。

写真は今日の晴れた街角。