日々の泡盛(フランス編)

フランス在住、40代サラリーマンのどうってことない日常。

考えても分からないこと

2010-02-27 23:32:34 | 東京
うちの会社をやめて転職する人のあいさつ文みたいなのが
メールで来たが、文化や宗教の違いを乗り越えて、お互いに
分かり合いたい、みたいなことが書かれていてげんなり
してしまった。そもそも文化や宗教の違い、ってなんのことか
分かってるんだろうか。寛容さは何ものにも耐え難いぐらい
重要だと思うけれど、実際に本当に「寛容である」ということは
無茶苦茶しんどいことなんだと思う。

外部から来たFAXを読んでいたら「日本民族」みたいな言葉が何度も
出てきてなんかぞっとした気持ちになった。日本民族なんて集団の
幻想で、いろいろな人間が交じり合って「日本」という国民国家を
作り上げたに過ぎないんだよ、と思った。

大学の先輩と会う

2010-02-23 22:48:18 | 自分について
仕事の関係で大学の先輩と初めて対面する。
初めて対面するとは言え、よく名前は知っている人だ。
というのも大学の頃から有名人で、よく他の人から
噂だけ聞いていたのだ。もう20年も前の話だ。
大学を出て先輩は、東京の大学の大学院に進み、その後
会社に入り、そこから転職し、某大新聞の記者になったと聞いた。
僕は、その先輩がかつて働いていた会社に今勤めていて、
昔をよく知っている同僚からも、「ああ、●●さんね」と
先輩の噂を聞かされていた。つまり大学でも、就職先でも
先輩の名前を聞かされる羽目になった。
と不思議な因縁の先輩だったが、会うのはこれが初めてだった。
もっとギトギトした、都会的な人を想像していたが、
思ったより普通の人だった。もう50近いのだろう。
雑談で大学や、九州の話などをした。

夜は大学院に行って、論文指導など受ける。
いまいち焦点が定まらず、輪郭がぼやけたまま家に戻る。

物事の真ん中にあるもの(5)

2010-02-21 22:47:53 | 読書生活
来週に大学院の修士論文の指導教官と面談をすることになっているので
いろいろペーパーを作成していたのだが、あとで読み返して、
こんなんじゃレポートの延長だよ、とか学部レベルだよ、とか
いろいろ考えて思い悩んでしまう。やっぱり絶対的な基礎的な
学力が自分にはないんだろうな、と思ってしまう。
今週続いていたピーター・キャメロンの「アリア」はこんな
終わり方だ。国際政治を考えるのもあきて、ちょっと逃避。

   *    *    *
私はそれからテーブルについて、トーマの電話番号を押した。

-私よ、と私は彼の留守電に話しかけた。今、家にいるの。
水曜の夜。今何時か分からないんだけれど。かなり遅い時間ね。
よく分からないけれど、でも、今が何時なんだか知りたくないの。
ちょっと眠って、今、目が覚めたばかり。今夜、ルディにさよなら、
って言ったの。彼は明日になれば行ってしまう。本当のことを言うと、
彼にさよならなんて言ってないの。お互いに、本当のところ、
さよならなんて言い合えないから。当然だと思うわ。
今日、ある男の人から話しかけられたの。そんなこと初めてだったわ。
誰か知らない人よ、通りで会ったような。彼は私が「ドリアン・グレイ」
で歌っていたのを見たんだって。彼は私が素晴らしかった、って言ったわ。
でも多分、人は、誰かを通りで見かけて話しかけたんだったら、その人に
「素晴らしかった」って言わないといけない気持ちになるものよね。
本当はそれは通りじゃなかったの。それはルディの住む建物だったの。
今、私は猫を飼っているの。ルディが飼っていた猫よ。
猫はベッドの下にいるわ。私は素晴らしくなんかないわ、そうじゃない?
トーマ、あなたはそこにいるの?そうは思わないけど、でもそこにいるような
気もするの。かなり遅い時間だし。本当に遅い時間なら。きっと
あなたを起こしてしまったかもね。そうだといいんだけれど。
あなたに私の家にいてもらいたいの。あなたにここで、私と一緒に
いてもらいたいの。あなたに、私があなたに話ができる場所に
いてもらいたいの。

私はちょっと間を置いた。
-いや、あなたと話すんじゃない、と私は言った。あなたを見ることが
できる、あなたに触れることができる場所に。

物事の真ん中にあるもの(4)

2010-02-20 10:10:29 | 読書生活
(続き)

   *     *     *
-ここに引っ越してきたときのことを覚えてる?アパートの中に
何もなくて、地面に座ってピクニックしたよね。
-ああ、マイケルと、とルディは言った。
-そう、マイケルと、と私は言った。

私はいつも死んだ人のことを、意識の外に出して放ってしまうけれど、
ルディは逆で、絶えず死んだ人を、自分の中で生き続けさせようとする。
私にとって死んだ人の話をすることはなんだか失礼な気がするのだ。
本当はそんなことはないんだろうと分かっているけれど、
でもどうしても私はそんな気がしてしまうのだ。

-マイケルはいつもドアを大きな音を立てて締めていたから、
そのことを階下の人たちは苦情を言いに来ていたわよ。

そう私は言いたした。なぜなら、一度死んだ人の話をしてしまうと、
私はその人たちのことを怖がっていないことを証明するために、
なにか言い足さないといけないような気持ちになってしまうのだ。

でも本当は、彼らは死んでいる、ということだ。必死になって
彼らを私たちの生活の中に呼び込もうとがんばっても・・・。


物事の真ん中にあるもの(3)

2010-02-17 07:03:13 | 読書生活
「アリア」の一場面から。

     *     *     *
もう6年も前から私は、トーマという人と恋愛をしていた。
彼は金持ちで、積極的で、そして結婚していた。フェリシア、
という名前の女性と。でも彼女は6ヶ月前にそのせいで自殺した。
彼女はアパートのテラスから身を投げたのだ。
「身を投げた」というのは適当な表現ではないかもしれない、きっと。
でも私はそういう行動にたいするふさわしい言葉を知らない。
それ以来、トーマは私に会うのをやめてしまった。

「死」が彼を誠実な人間にしたのだ。彼は女性を裏切ることが
できたかもしれないが、思い出は裏切ることができなかった。
とにかくそんな風に私は考えていた。

物事の真ん中にあるもの(2)

2010-02-15 00:16:51 | 読書生活
昨日引用したピーター・キャメロンの「アリア」とは
不思議な短編だ。もう死ぬことが分かっている親友が、
死を準備するために田舎に旅立つのを静かに見送る、
そんな話だ。誰も誰のことを責めない、自分以外は。
どうすればいいのか分からないまま、時間だけ残酷に
流れていく、そういう状況を描写した話だ。

   *    *    *

私はルディをもう18年も前から知っている。
私たちは、お互いがそれまで持ったことのなかった、本当の
友達だったと思う。少なくとも私にとってはそうだ。
私たちは大学で知り合った、ちょうど私たちがようやく
本当の自分自身になろうとしていた頃、そして
なりたい自分になるために励ましあった最初の友達だった。
もう長いこと、私たちはそんな人間だったのだ。

物事の真ん中にあるもの

2010-02-13 08:40:44 | 読書生活
ポルトガルから戻ってきて、まあ、淡々と働いているのだが
なんかいろんなことが馬鹿らしく思えてきて
気を紛らわすためにピーターキャメロンの昔買っていた
フランス語の小説を読んでみた。

ピーターキャメロンらしく、短編を読むと心につっかかる
文章があちこちに散らばっている。

     *     *     *
私は彼が行ってしまうことを、そしてたぶんもう彼に二度と
会えないことも知っていた。
でもそれに対して、どう反応すればいいのか分からなかった。
それは今まで彼との友情の中で出会ったことのない状況であったし、
そうでなくても私の人生の中でもこんな状況に出会ったことはなかった。
私は、まずどうやって生きるのかなんて学ぶことなく、
生きていけるような類の人間でいたかったのに。
                        「アリア」

ポルトガルの1月(5)

2010-02-08 06:59:42 | 海外(フランス、スペイン以外)
夜が更けはじめた。さっきまで夕暮れの雲で覆われていた空は
いつの間にか真っ青になり、街角に街灯の光がこぼれる。
ゆっくりと歩いて、夜の街、バイロ・アルトに向かって歩き始める。
通りは緩やかな坂道になっていてふと振り返ると、眼下には
眠るような、穏やかな街が広がっていた。

ポルトガルの1月(2)

2010-02-01 06:04:34 | 海外(フランス、スペイン以外)
空港から事務所に行き、打合せをバタバタとすませ
そのあとホテルにチェックイン。荷物をといた時にはもう
夕方の6時を過ぎていたが、そのまま着替えて通りに出る。
リスボンのシャンゼリゼといわれる、
リベルダーデ通りをゆっくりと歩いていく。

リスボンは2003年に来て以来、6年ぶりということになる。
ああ、何も変わっていないな。港町ののんびりした空気も、
街のあちこちからふとしたときに顔を覗かせる大西洋も。