日々の泡盛(フランス編)

フランス在住、40代サラリーマンのどうってことない日常。

アンダルシアへの道(4)

2012-08-20 22:41:02 | スペイン
セビリヤで一泊したあと、次の朝、エストレマドゥーラ地方の都市、
カセレスに向かうために、セビリヤのバスステーションに向かう。
今回の旅行で行きたかったのは、乾ききった、スペインとポルトガルの
国境の地方、エストレマドゥーラ地方だ。これまで足を踏み入れたことの
ない未開の地方、そしてガイドブックや本などではたびたび
読んだことのある、他地域のように名所旧跡があふれるわけではないが、
スペインの深層に触れられるような地域。

いつかみた本に、エストレマドゥーラに住むおばあさんの写真が
出ていた。小さな、城砦に囲まれた村に住むおばあさんだ。家の仕事を
して、そして地平線まで続く乾いた荒野を見つめる毎日。
この村から出たことがないのに、人生や世界のすべてを見透かすような
おばあさんのまなざしが記憶に残っている。

セビリヤの街の北側に位置する、中・遠距離バスの駅まで歩いていく。
スペインは窓口がバス会社によって違うのだが、電光掲示板を見ても、
時刻表をみても、エストレマドゥーラのカセレス行きのバスが
どの会社のバスなのかさっぱり分からない。窓口は三つ開いている。
あてずっぽうで端っこの窓口に行って、「カセレスまで」と尋ねる。
窓口のおばさんはとんでもない、といった顔で
「それはここじゃないよ」という。
「どこの窓口で切符が買えるんですか?」と聞くと、
「そんなの分からないわ」
とそっけない。

その隣に行くと、
「そこはうちじゃない」と窓口の中の娘さんが答える。
「どこの窓口ですか?」と聞くと、
「カセレスは一番端っこの窓口」と今度は丁寧に教えてくれる。

端の窓口で、カセレス行きの切符を買い、ようやくエストレマドゥーラ
に迎える自分なのだった。