く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<BOOK> 「チャールズ皇太子の地球環境戦略」(君塚直隆著、勁草書房発行)

2013年10月09日 | BOOK

【熱帯雨林保護へ積極的に講演活動や各国歴訪!】

 英国のエリザベス女王の長男、チャールズ皇太子(1948年11月14日生まれ)。王位継承順位1位だが、皇太子在任期間はすでに60年を超え、王室の最長記録を更新中。チャールズといえば、どうしても〝ダイアナ事件〟がまず思い浮かぶ。国民からの風当たりはなお強く、次期国王にはウィリアム王子のほうが望ましいとの声もまだ多いそうだ。そのチャールズが長年、地球環境問題に真摯に取り組み、近年は熱帯雨林保護のため奔走していることを本書で初めて知った。

   

 著者の君塚氏は1967年東京生まれで、立教大学卒業後、英オックスフォード大学に留学。専門はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史で、東大客員助教授などを経て現在、関東学院大学文学部教授。著書に「肖像画で読み解くイギリス王室の物語」「女王陛下の外交戦略」などがある。

 本書は「チャールズ皇太子の社会活動」「環境問題への関心と取り組み」「熱帯雨林プロジェクト」「地球環境と国際政治」の4章で構成する。社会活動といえばダイアナ妃の地雷禁止やエイズ患者救済活動が広く知られるが、著者は「慈善活動や博愛活動といった面では、チャールズのほうがその取り組みにしろ活動歴にしろ、はるかに年季が入っていた」とまず指摘する。

 「彼が公の場で環境破壊、とくに農業における化学肥料の使用(ひいては生態系の破壊)などについて強い懸念を表明したのは、1970年のことである。当時の社会ではそれは『変人扱い』される発言であった」。チャールズは自ら有機農法を実践する一方、海洋資源の保全など地球環境問題に数々の提言を行ってきた。1991年にヨーロッパ環境賞、2007年には米ハーバード大学から地球環境市民賞を受賞。その年2007年には宮廷に「皇太子熱帯雨林プロジェクト」を立ち上げ、伐採・減少を食い止めるキャンペーンに乗り出した。

 チャールズの環境政策のキーワードは「持続可能(サスティナブル)な発展」と「自然との調和」。「『近代的な』農法や漁法を批判し、『持続可能な』農業・林業・漁業・牧畜業のあり方を提唱してきた」。熱帯雨林についても今すぐに動かなければ「白亜紀(6500万年前)末期以来で最大の種の絶滅が予想される」と訴える。

 これまでにチャールズが訪ねた世界の国々は2013年4月現在で105カ国(延べ389カ国)に及び、エリザベス女王の95カ国(延べ350カ国)をすでに上回る。とりわけ近年は南米や東南アジアなどの熱帯雨林諸国の周遊を重ねている。一方で、G20(主要20カ国首脳会議)やCOP(国連気候変動枠組条約締結国会議)などの機会をとらえて、各国首脳に熱帯雨林保護の重要性を訴え続けてきた。

 その熱意が通じ、チャールズは「いまや地球環境問題の専門家として誰もが認める」存在になっている。2009年12月、デンマーク・コペンハーゲンで開かれた第15回COPで、チャールズは演壇からスピーチをこう締めくくった。「私たちの子や孫の世代は、私たちが何を言ったのかではなく、何を成し遂げたのかを問うていくのです」。地球環境保全に残された時間はもうない、議論ではなく実践あるのみ――チャールズはこう訴えたかったのだろう。

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