く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<シオン(紫苑)> 薄紫色の可憐な花、草丈は2mにも

2013年10月15日 | 花の四季

【「鬼の醜草」の異名も、今昔物語に由来】

 キク科シオン属の多年草。アジア東北部に分布し、日本でも中国から九州地方にかけ山野に自生する。ただ、古い時代に薬用植物として中国から朝鮮半島を経由して渡来し、栽培していたものが野生化した帰化植物ではないかともいわれる。花期は9~10月。花びらが薄紫で中心部が黄色の直径3~4cmほどの小花をたくさん付ける。

 和名のシオンは漢名の「紫菀」の中国読みが転訛したものといわれる。平安時代前期の古今和歌集では「シオニ」と呼ばれていたが、枕草子や源氏物語には「シオン」と出てくることから、平安中期にはシオンの呼び名が定着していたとみられる。シオンは「オモイグサ(思い草)」や、中秋の名月にちなみ「ジュウゴヤソウ(十五夜草)」とも呼ばれる。

 「オニノシコクサ(鬼の醜草)」という異名も。これは今昔物語に由来する。親を亡くした兄弟のうち兄は悲しみを忘れようと墓前にワスレグサ(萱草=カンゾウ)を植えて墓参りをやめる。一方、弟はワスレヌグサ(紫苑)を植えて毎日墓参りを欠かさなかった。墓守の鬼は弟の孝行心に感心し、弟に霊力を与える――。

 シオンはいわゆる野菊の1種だが、草丈は1.5~2mにもなる。葉も大きく、ヨメナやノコンギクなどに比べるとたくましい。ただ花は可憐で色も「紫苑色」と形容されるほど美しいため、古くから生け花や茶花としても用いられてきた。花色は晩秋になるほど冴えてくる。ちなみに伊藤左千夫の小説「野菊の墓」(「野菊のごとき君なりき」として映画化)の野菊については、関東地方に多いカントウヨメナまたはノコンギクが有力という。いずれもシオン属の同じ仲間だ。

 シオンの根は紫色を帯びており、咳止めや去痰、利尿などの生薬に使われる。シオンの野生種は環境省のデータレッドブックに絶滅の危険性が増大している絶滅危惧種Ⅱ類として掲載されている。県別にみると、宮崎と鹿児島が絶滅の危機に瀕している絶滅危惧種Ⅰ類、大分と熊本が同Ⅱ類。「紫苑にはいつも風あり遠く見て」(山口青邨)。

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