く~にゃん雑記帳

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<黒井健・絵本原画展> 「ごんぎつね」「手ぶくろを買いに」など約150点

2013年09月24日 | 美術

【画業40周年記念、阪急うめだギャラリーで30日まで】

 「ごんぎつね」や「ころわんシリーズ」などで知られる絵本画家、黒井健(1949年、新潟市生まれ)。その画業40年を記念する「黒井健 絵本原画の世界展」が大阪市北区の阪急うめだギャラリーで開かれている。色鉛筆やパステルを使って描いた原画が約150点。繊細で柔らかいタッチの作品1つ1つにじっと見入る女性客の姿が目立つ。30日まで。

  

 これまでに出版された絵本や画集は200冊を超える。新美南吉作の「ごんぎつね」(上の写真㊧)や「手ぶくろを買いに」(写真㊨=部分)、宮沢賢治作品、1983年からほぼ毎年1作ずつ出してきた間所ひさこ作「ころわんシリーズ」、脚本家・山田太一の「リリアン」、みなみらんぼうの「月からきたうさぎ」……。新井満の詩を絵本にした「この街で」や武田鉄矢が実話を基に書いた戦争童話「二十六夜まいり」、新潟中越地震後に故郷を訪れ描いた「ふる里へ」(文・星野知子)=下の写真2点=などもある。

   

 画業40年の中で一大転機だったというのが1986年の「ごんぎつね」。黒井氏は「この物語との出会いがなかったら今の私は考えられない。絵本への考え方を根底から変えてくれた」という。「私の迷走していた心ははっきりとした意志を持ったような気がする」とも。会場の一角では大滝秀治の語りで「ごんぎつね」が上映されていた。

 児童文学作家・あまんきみこ作の「おかあさんの目」や「天の町やなぎ通り」の原画も並ぶ。「おかあさんの目」に出てくる女の子は娘をモデルに描いたという。絵本から飛び出てきたような立体フェルトの作家として活躍している凪(なぎ)さんのことだろう。母の瞳の中に自分がいるのに気づいた女の子に、母は美しいものに出会ったら、一生懸命見つめなさい、心にすみつくのよと教える。

   

 原画に添えられたコメントから、絵が完成するまでの大変なご苦労もしのばれる。「天の町やなぎ通り」では「幻想的な文からイメージを損なわない絵を描き上げるのには時間がかかってしまった」。殺意をテーマにした「だれかがぼくを」(内田麟太郎作)では「描き終えるのに5年近くを要した」。さらに世界中の灯台が集まるお祭りヒカリンピックの物語「よるのふね」(山下明生作)は「原稿をもらって十数年の歳月が過ぎての出版になった」。このファンタジーな世界を表現する画法として、試行錯誤の末にオイルパステルにたどり着いたという。

 海外作家コーナーにはパール・バックの物語を基にした「つなみ」の原画も並ぶ。大きな津波が押し寄せてくる様が大迫力で描かれている。2005年に出版された。その横には「時が経って2011年、津波の悲劇が現実になったことに強い衝撃を受けています」との一文が添えられていた。

 このほか、森山京・作の「ぶたのモモコシリーズ」や「バスがくるまで」、深山さくら作「かかしのじいさん」、にしもとよう作「うまれてきてくれてありがとう」、宮沢賢治作「猫の事務所」、自作絵本の「でんぐり でんぐり」「12月24日」などの原画も展示されている。会場の一角のテーブルには多くの絵本や画集。誰でも自由に手に取って読むことができる。ひらがなを覚えたてなのか、小さな女の子が声を出して一生懸命に読む姿が印象的だった。

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