く~にゃん雑記帳

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<けいはんな学研都市・市民公開講座> 「アジアの世界遺産をめぐる諸問題」

2013年09月21日 | メモ

【同志社女子大の大西氏「景観保護には地域住民の合意が不可欠」】

 国立国会図書館関西館(京都府精華町)で20日、「アジアの世界遺産をめぐる諸問題」と題した講演会が開かれた。3回シリーズの「関西文化学術研究都市6大学連携市民公開講座」の最終回。講師の大西秀之・同志社女子大学准教授は景観保全対策の遅れなどから危機遺産リストに登録された世界遺産を例に挙げ「景観保護には地域住民を中核とする合意形成が不可欠」などと話した。

 

 大西氏はまず世界遺産の選考基準に触れ、「世界の全ての人々にとって顕著な価値があり、最上の代表(主に文化遺産)または最上の最上(主に自然遺産)のもので重複しないことが原則」と指摘した。では、日本人が雄大な自然景観を誇りとする富士山はなぜ自然遺産ではなく文化遺産として登録されたのか。

 大西氏はごみなどの環境問題に加え、富士山型の雄大な火山は既に登録ずみなことや富士山に景観がよく似たニュージーランドのトロンガリロが文化・自然の複合遺産として登録されていることなどを挙げる。そのため、富士山を描いた浮世絵が西洋の画家に大きな影響を与えたことなどを理由に文化遺産として登録された。

 世界遺産は7月現在で981件(文化遺産759件、自然遺産193件、複合遺産29件)。国別にみると、最も多いのはイタリアの49件、次いで中国45件、スペイン44件、ドイツ、フランス各38件と西洋諸国が上位を占める。米国は21件で10位、日本は17件で13位。ユネスコの世界遺産センターは事務局をパリに置く。

 大西氏は「世界遺産は普遍的価値を最も重視するとしながら、西洋的な基準で選ばれているといわれても仕方がない。富士山が仮に西洋絵画ではなくアフリカ美術に影響を与えていたらどうなのか」と疑問を呈する。米国が意外に少ないのは米国がユネスコにほとんど資金を拠出していないことも影響しているのではないかという。

 アジアの世界遺産が抱える問題としてフィリピン・ルソン島の「コルディリエラの棚田群」(写真㊨)を例に挙げた。〝天国への階段〟ともいわれる世界最大規模の棚田で、1995年に世界遺産に登録された。だが、その6年後、危機遺産リストに登録された。その理由は①管理体制の不備による棚田の崩壊②不法開発による景観破壊③地域住民の村離れに伴う耕作放棄と水利システムの荒廃――などによる。

 大西氏は「現地の経済開発の促進によって、景観破壊が進むという悪循環に陥っている。外部者の視点による世界遺産登録の決定というトップダウン型の仕組みが限界に来ているのではないか。景観保護には主体となる地域住民の合意が欠かせない。同時にヨーロッパ中心の考え方も見直す必要があるのではないか」などと指摘した。(「コルディリエラの棚田群」はその後、日本ユネスコ協会連盟の支援活動などが実を結び、2012年に危機遺産の登録が解除された)

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