く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<国立民族学博物館> 「記憶をつなぐ―津波災害と文化遺産」展

2012年10月12日 | 祭り

【祭り・芸能、鎮魂とともに地域の人々の心の拠り所!】

 東日本大震災から早くも1年半余になるが、地震・津波・原発事故による傷はなお深い。その間、東北地方では祭りや芸能の奉納が例年以上に活発だったという。「祭りをしないと、散りぢりになった村のみんなが集まる機会がない」――。祭りが鎮魂・祈りとともに、地域のコミュニティーを守るうえで果たした役割は大きい。国立民族学博物館(大阪・万博公園内)で開催中の「記憶をつなぐ―津波災害と文化遺産」展(11月27日まで)は、文化遺産の意義を改めて見直すとともに、災害の経験をどう継承していくかを考える契機にしてほしいと企画された。

  

 会場に入ってすぐ左手に大きな獅子頭。宮城県南三陸町の戸倉神社に伝わり春の神事「春祈祷」で使われてきた。神社がある波伝谷(ばでんや)地区は今回の津波で集落全体が水没した。その地名には過去の被災の記憶が刻まれている。幸い、丘にある神社は獅子頭とともに被災を免れた。今年4月、この獅子頭を使って震災後2年ぶりに「春祈祷」が仮設住宅の前などで行われた。

 津波は各地の祭りや芸能を直撃、壊滅的被害をもたらした。岩手県を代表する民俗芸能、鵜鳥(うのとり)神楽もその一つ。毎年1~3月、沿岸部に点在する「宿」を訪ね公演してきたが、宿の大半を失った。そこで、追手門学院大の橋本裕之教授らが東京都歴史文化財団と連携、宿の新設など再生に向けて支援活動を続けている。今月21日には民族学博物館で復興支援の一環として公演も予定されている。

 東北では祭礼や盆行事で鹿踊(ししおどり)がよく演じられるが、津波で岩手県大船渡市などの3団体が衣装や道具類を保管庫もろとも流された。鹿踊に欠かせないのが鹿の角だが、なかなか入手が難しい。そこで立ち上がったのが京都や兵庫の人たち。「愛deerプロジェクト」と銘打って、丹波や福知山の猟師や鹿肉加工業者から角の提供を受け各団体に送った。

 「記憶の継承」コーナーでは安政の南海地震(1854年)の際、稲むらに火を放って村人を救った浜口梧陵の「稲むらの火」などを紹介。この「稲むらの火」は国内だけでなく、アジア8カ国・9言語とフランス語に翻訳され防災教育教材として活用されているという。1941年発行の「小学国語読本」やこれらの翻訳本も展示されている。

 今震災は地震予知やスーパー防波堤などハード面の限界をまざまざと見せつけた。古文書や地名などに刻まれた過去の教訓もいつの間にか忘れ去られていた。それだけに被災体験を風化させず、いかに後の世代にしっかり引き継いでいくか。そのことがいま改めて問われているといえそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする