く~にゃん雑記帳

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<伊勢神宮式年遷宮> 耐久性・技術の伝承に加え「常若」のために!

2012年10月27日 | 考古・歴史

【来秋で62回目、遷宮費用555億円、「遷御の日」は天皇がご決定】

 伊勢神宮(正式名は単に「神宮」)で20年に1度の式年遷宮の諸神事が行われている。すでに宇治橋の架け替えも完了、いよいよ来年秋には御神体を新しい社殿に遷(うつ)す「遷御の儀」が執り行われる。だが、そもそも式年遷宮はいつ、誰が、何のために始めたのだろうか。大阪国際会議場(大阪・中之島)で25日開かれた「三重県観光情報提供会」の中で、皇學館大学非常勤講師の千種清美さんがそんな疑問について詳しく解説してくれた。千種さんは大学で「伊勢学」を担当、著書に「永遠の聖地 伊勢神宮」などがある。

   

 式年遷宮は壬申の乱で勝利した天武天皇が発案し、次の持統天皇によって始められた。第1回は内宮(「ないくうで、ないぐうと濁りません」と千種さん)が690年、外宮が692年。今回で62回目を迎える。遷宮のための総費用は555億円。「遷御の儀」は天皇陛下がご決定するが、前回1993年の例から来年10月になるとみられる。伊勢神宮には別宮・摂社・末社なども含め125社が年間1500回のお祭り(神事)を行うが、「遷御の儀」はその中で最も重要なお祭りという。

 では、なぜ20年に1度遷宮を行うのか? 千種さんによると、その理由について触れた記述は残っていない。そこで考えられる理由としてまず挙げるのが、①ヒノキの素木社殿の耐久年限②宮大工や神宝調製者の技術の伝承③毎年行われる神嘗祭を20年に1度盛大に行う大神嘗祭として――の3点。耐久性という面では法隆寺や東大寺のように柱を礎石で支えるほうが優れているのに、伊勢神宮の社殿は地面の穴に差し込んだだけの掘っ立て柱。塗料も塗らない。屋根は萱葺き。

 次に挙げたのが「常若(とこわか)」という神道の考え。「常に若々しく瑞々しくありたいという日本人の常若の精神が、遷宮を行う根底にあるのではないか」。遷宮は東西に隣接する旧社殿の隣に新社殿を造営する。千種さんは「西洋では決して見られない方法で、東西で遷宮を繰り返すことが日本式の永遠の形、永遠のスタイルといえるのではないか」と話す。

 遷宮で解体された社殿や鳥居などは全国各地の神社などで再利用される。千種さんのお話を伺いながら、数年前、愛媛県西条市の伊曽乃神社を訪ねた時のことを思い出した。神職の方が社殿を囲む御垣(みかき)を指差しながら「これは伊勢神宮から頂いたものです」と実にありがたそうに話されていた。三重県桑名市では「七里の渡し跡」に「一の鳥居」が建っていたが、これも遷宮ごとに伊勢神宮の社殿の柱を使って建て替えるという。伊勢神宮では遠い昔から「もったいない精神」を実践し、リサイクル活動に取り組んできたというわけだ。

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