【21~22日、さくら道国際ネイチャーラン】
名古屋から金沢までの260キロ余を桜のトンネルで結びたい! こんな壮大な夢に向かって桜を植え続けた男性がいた。旧国鉄バス名金線の車掌、故佐藤良二さん(1929~77年)。給料と蓄えのほぼ全てを注ぎ込み自ら桜の苗を育てては、休暇を利用しバス路線に沿って1本1本植樹した。だが病魔に倒れ、夢半ばで亡くなった。享年47歳。植えた桜は2000本ともいわれる。
1984年、NHK名古屋放送局が「北陸東海桜紀行」の中でこの佐藤さんのことを取り上げた。その10年後には映画「さくら」(神山征一郎監督、篠田三郎・田中好子共演)にもなった。さらに2004年から05年にかけてNHKアーカイブで再放送された。そのNHKの中で、繰り返し流れていたバックミュージックが「鏡の中のアンナ」というギター曲だった。
奏者はフランスのニコラ・デ・アンジェリス。ピアノの貴公子・リチャード・クレイダーマンと同じレコード会社デルフィンに所属するギタリストで、「鏡の中のアンナ」(ポール・ド・センヌビル作曲、1981年発表)は彼のデビュー曲だった。ギターの温かい音色と優しいメロディーがなんとも心地よい。最近もNHKラジオで時々、番組案内などのバックミュージックとして流れているが、この曲を聴くとつい佐藤さんのことを連想してしまう。
ニコラは80年代に数回来日しており、この写真のCDは86年の3回目の来日コンサートの記念アルバム。オリジナルヒット曲とラテンの名曲が交互に入っており、彼の卓越したテクニックでギターの魅力を存分に堪能させてくれる。彼の消息が気になっていたが、数年前ジャッキー・トリコワール(本名?)の名前で、レイモン・ルフェーヴル・グランド・オーケストラの一員として来日したらしい。「鏡の中のアンナ」以外にも「ルドルフへの贈り物」「夢の散歩道」などの名曲を残してくれた彼にはただ感謝の一言。
佐藤さんの出身地、岐阜県白鳥町(現郡上市白鳥町)は遺志を引き継ごうと毎年桜シーズンに「さくら道国際ネイチャーラン」を企画、今年も21~22日に開かれる。コースは名古屋城から金沢・兼六園に至る250キロ。21日午前6時にスタートし、ゴール制限時間は22日午後6時15分。昨年は福島原発事故の影響からか海外参加予定者の辞退が相次いだが、今年は海外22人も含めほぼ定員に近い115人(うち女性21人)が挑戦する。翌23日には白鳥町内で桜を記念植樹する予定だ。