【アヤメ科の中では珍しい常緑植物】
華やかな花ではないが、よく見るとなかなか凝った造りだ。花は外花被3枚と内花被3枚から成る。外花被は青紫と黄色の模様が入り縁はフリル付き。内花被は真っ白で模様はない。高浜虚子はその姿を「紫の斑(ふ)の仏めく奢莪の花」と詠んだ。なかなか清楚でかわいいのに、なぜ「反抗」や「抵抗」といった花言葉が当てられているのだろうか?
アヤメ科アイリス属。学名はアイリス・ジャポニカ。半日陰を好み、杉林や雑木林などの下に群生する。染色体が3倍体のため種はできず地下茎で増える。花期は4~5月で、1本の茎に10輪前後の花を付け毎日次々に咲く。群生地ではまさに多くの蝶が舞っているような幻想的な光景を醸し出す。関西では石山寺(大津市)や愛宕念仏寺(京都市)の群落が有名。
シャガより少し小型で花びらが薄紫のものにヒメシャガがある。こちらは絶滅危惧植物。「みちのくのあさかのぬまの花かつみ かつ見る人にこひやわたらむ」(古今和歌集)。この中の「花かつみ」という植物が万葉の時代からよく詠まれているが、どの花を指すのか不明で「幻の花」といわれる。諸説の中にヒメシャガ説もあり、福島県郡山市はヒメシャガを「ハナカツミ」として市花に指定している。「花奢莪に涙かくさず泣きにけり」(長谷川かな女)。