経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

消費が伸びなければ、成長はできない

2024年07月28日 | 経済
 今週は、1-3月期の家計GDPがオープンになり、可処分所得は前期比+2.7%と高い伸びとなった。要因は、低所得層向けの物価高対策によって、社会給付が前期比+7.2%と跳ねたためである。その割には、既報のとおり家計消費(除く帰属家賃)は、前期比+0.16%と平凡だ。細かく見れば、給付の翌2月に消費は高まったので、効果はあったものの、3月には加速した物価高に食われてしまったというところか。

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 成長戦略というと、産業政策を使って、設備投資を伸ばすことばかりなのだが、経済は、消費が54%を占めるのだから、消費を伸ばさなければ成長しない。ついでに言えば、政府消費がほかに21%ある。成長するには、消費を伸ばさなければ話にならないが、そちらは、まったく視野の外であり、負担増で可処分所得を抑制しておいて、なぜ成長しないのかと言い出す始末である。 

 今週は、中長期の経済財政の試算が漏れ、2025年度には基礎的財政収支の均衡に到達するという話が聞こえてきたが、まだまだ緊縮が必要という論調である。補正まで含めれば、まだ赤字という議論は分からないでもないが、補正さえやめれば、均衡させられるという経済政策上の意味は大きい。成長のために再分配で可処分所得を追加する手段を得ているわけである。

 現実の経済というのは、政府が黒字を出せば、企業がすぐに投資を増やして吸収してくれるというような単純なものではなく、むしろ、可処分所得の抑制で消費が鈍れば、設備投資を躊躇するようなことが起こったりする。「試算」の外にある公的年金は、既に黒字になっていて、雇用増と適用拡大で、ますます強まる。経済にとっては、将来、使う貯蓄だからといって、今の投資の状況に合わないことをされてはたまらない。

 財政は、全体状況を見ながら、貯蓄投資の調整速度を考えつつ、ゆっくり動かしていくのが基本で、財政の都合だけで、やりたいだけやって、あとは神の見えざる手が調整してくれると思っているようではダメである。そうは言っても、成長戦略と銘打っても、投資促進しかないように、一所懸命で全体戦略が欠けている日本人にとっては、最も不向きなことかもしれない。

(図)


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 5月の人口動態速報の出生は、前年同月比-3.9%、当月含む過去1年間の前年同月比は-5.4%と、合計特殊出生率は1.15人レべルだ。ただ、若年層の経済状況が改善されてきたせいか、婚姻の過去1年間は-1.5%と、まだ水面下ではあるにせよ、緩んできた。財政が黒字になったら、まずどこに返してやらなければならないかは、明らかなんだけど、それは、全体が見えていればの話である。


(今日までの日経)
 賃上げも鈍い氷河期世代。トヨタ、福岡に電池新工場 アジアの輸出拠点に。バイト時給、地方も上昇。米消費、低価格品にシフト。産業投資、財源を「備蓄」。国内旅行は近場が人気。運輸・建設、DX投資加速 人手不足で。基礎収支、25年度に黒字 政府試算、物価高で税収上振れ。国立大授業料、標準53万円の妥当性検証。東南ア貿易、日本のシェア20年で半減。

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