経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

実際の経済を知るとは、どういうことか

2020年11月29日 | 経済
 経済を知りたい、学びたい一番の理由は、景気を良くできたら、成長を高められたらとの想いではないか。しかし、机上の経済学は、技術を向上させるべきだ、人材を開発すべきだと、当然のことをのたまうくらいで、むしろ、政策によって伸ばすことは難しいとしたりする。あたかも、結核の患者に、特効薬を望んではいけないと説き、栄養と休養が大事と言うかのごときである。正しくはあっても、救われる気がしない。

………
 実際には、政策の良し悪しはある。例えば、アベノミクスでは、現実の成長率を毎年1%程上乗せすることは、十分に現実的な選択肢であった。理由は明確で、毎年1%程の緊縮財政を敷き、需要を吸い上げ続けてきたからだ。財政が需要を出せば、その分、経済は大きくなるという単純な理屈である。実際は、そこまで安易な足し算ではないにせよ、イノベーションで成長率を1%上乗せするという主張より、遥かに確実性がある。

 問題は、そうした選択肢が在ることさえ知られていないことにある。更には、緊縮財政をしていることすら、認識されていない。仮に、財政再建のスピードを半分にとどめ、0.5%程にしていれば、非正規への育児休業給付の実現、低所得層の社会保険料の軽減といった再分配が次々に実現できていた。成長は加速し、結婚難や少子化も改善されて、不安だった日本の将来展望は大きく変っただろう。

 それにしても、財政によって需要を調節し、成長を確保しようという素直な発想に、どうして、ならないのか。そこには、成長の原動力である設備投資は、金利で調節できるという現実離れした思想がある。金融政策で実現できるのなら、財政を気にする必要はないわけで、低金利にしても投資がなされないのは、企業への規制や負担のためだとなって、不毛な産業政策だの構造改革だのにのめり込んでしまう。

 これが、日本が20年を失って衰退途上国となった理由である。机上の経済学には反するかもしれないが、設備投資が先行する追加的な需要に従ってきたのは事実だし、消費税を上げるたびに、消費が一時的に落ちるだけでなく、伸びなくなったのも事実だ。事実なのだから、理論闘争は脇に置き、現実に合わせた需要管理の政策を採るべきだろう。財政再建を緩めるくらいなら、大してリスクがあるわけでもない。

………
 今はコロナ禍で、大規模な財政出動がなされているが、消えた需要を埋め合ているだけで、成長を促すような需要の調節とは異なる。経済が正常化すれば、今の財政構造では自動的に緊縮のブレーキが強くかかるようになっているので、これを見極めて積極的に需要を戻していく必要がある。調節次第で、意外なほどパフォーマンスは違う。薬はないと聞かされて、あきらめてはいけない。


(今日までの日経)
 中国輸出シェア 再び増勢。感染2670人 過去最多 重症者、連日最多の440人。雇調金支払いで財源急減。「第3波」対応で予算積み増し。感染急増地域と往来自粛を 分科会提言。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 11/25の日経 | トップ | 12/2の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事