経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

賃金を増やすことと需要の管理

2021年10月24日 | 経済
 「賃金が増えていない」と言われるが、2015年以降、GDPの雇用者報酬は、名目、実質ともに増えてきている。つまり、全体のパイは大きくなっているけれど、雇用者の数も増えているから、1人当たりでは伸びていないというわけである。それは、毎月勤労統計を見ても明らかで、実質賃金が低迷する中、雇用者数は着実に増加している。どうして、こうなってしまったのだろう。

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 岸田政権では、再分配を強化するために、税制で賃上げを促進するようだ。それも一つの方法ではあるが、賃金もまた、需要と供給の法則に支配されるので、通常、賃金が上がるのは、人手不足のときである。実際、アベノミクスの間も、パート・アルバイトの時給は上昇していた。人手不足とは、売上が拡大する中で、提供がままならない状態であり、物価とも裏腹の関係にある。

 物価が上がらないのは、基本的に消費の弱さが原因だ。消費が振るわないのは、手元にお金が十分にないからで、それには賃金の上昇が必要になる。結局、循環するのである。物価、消費、賃金は、輪になっていて、どこかで堰き止められると、どれも上がらなくなる。そして、アベノミクスの間にしていたのは、徹底した消費の抑制であり、税と保険料を重くし、円安で買いにくくしていた。

 物価、消費、賃金は循環だから、循環の速度が十分に上がるまで待ち、それからブレーキをかければ、適度な上昇を保ちつつ、財政再建もできる。タイミングが大事なのであって、その前に焦ってブレーキを踏んでしまうと、いつまで経っても低速が続いて、デフレから脱することができなくなってしまう。その意味で、賃上げにおいても、需要の適切な管理が極めて重要になってくる。

 またぞろ、「財政赤字が積み上がっていても成長しなかった」との言説がなされているが、アベノミクスの間に、一般政府の資金過不足が急速に改善したことは事実であり、それだけの緊縮をやっておいて、意味がないとするのはいかがなものか。むしろ、そうした荒っぽさこそが、日本が異次元の金融緩和をしつつも、デフレから脱却できずにいる理由であるように思う。

(図)


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 朝日新聞の世論調査で、消費税率「10%維持」57%、「引き下げ」35%という結果が出ていたが、意外に国民は堅実なのだと思う。消費税は、上げるにしても、下げるにしても、大きな需要シッョクを伴うので、需要の管理で使うのは現実的でない。給付金にしても、貯蓄や返済で十分に需要に結びつかなかったり、一部の耐久財に集中して供給を攪乱したりといった難しさがある。賢い「再分配」が求められる。 


(今日までの日経)
 中小負債、10年ぶり高水準 返済猶予切れ迫る。賢い支出、成長主眼に 20年で債務1.8倍、先進国で突出 長期戦略に規律必要。迫る米緩和縮小、新興国の資金流出。難路の経済回復、米金利が予見 長・短期債の利回り差縮小。




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