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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10-12月期の消費は、アベノミクスで最悪へ

2020年01月12日 | 経済
 週末に消費指標が公表され、事態は一層深刻であることが判明した。この分では、10-12月期の家計消費の前期比は-3%を超えるおそれがあり、そうなれば、前回消費増税時の2014年4-6月期を下回り、過去7年間のアベノミクスで最悪となる。この水準は、「悪夢のような」と腐される民主党政権の最終年より低い惨憺たるものだ。しかも、前回増税時より拙いのは、輸出の停滞で景気が失速しており、前回のような盛り返しが少ないまま、今後、L字型の推移が予想されることである。

………
 11月の日銀・実質消費活動指数プラスは、前月比+2.7であったが、10月の-9.9からの戻りとしては非常に弱く、仮に、12月に、駆け込み前の4-6月期の水準まで、+2.4伸びたとしても、10-12月期の前期比は、-3.3にもなってしまう。増税による実質的な所得の低下を踏まえれば、4-6月期の水準まで伸びることには難しさがあるので、更なる下ブレもあると考えなければならない。

 もし、GDPの家計消費(除く帰属家賃)の前期比が-3%を超えるようだと、前回増税時の2014年4-6月期の233.1兆円を下回るため、過去7年間のアベノミクスで最悪となる。民主党政権下の2012年の家計消費は235兆円であっから、これより少ない。他方、一般政府の財政収支は、アベノミクスの間にGDP比で6.6%程も改善しており、消費を犠牲にして財政再建を果たすという民主党政権の目論見は、成就したと言えよう。

 むろん、アベノミクスには、GDPと雇用を増やしたという功績もある。これは、異次元緩和による円安によって、輸出と、そのために必要な設備投資を伸ばすことができたからである。国民生活は、まったく豊かにはならなかったにしても、インバウンドを含む外需のために、たくさん働くことはできるようになった。この点において、民主党政権が実現できずじまいだった成果も上げている。

(図)


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 大切なのは、今後の動向である。前回増税時は、次の2014年7-9月期に、家計消費を235兆円へすぐ戻すことができた。その背景には、輸出が増加しており、景気が上り調子にあったことがある。その後、2015年になって輸出が失速すると、消費も、ズルズルと後退し、2016年4-6月期には233.5兆円まで逆戻りしている。今回がどうかと言えば、輸出は停滞し、景気は下り坂にあるわけであり、L字型の推移を予想せざるを得ない。

 景気の原動力である設備投資については、まだ堅調とされてはいるものの、今後の見通しは厳しい。前回のコラムで、設備投資は2期前の輸出、住宅、公共で予測できると指摘したが、1994~2007年(H17基準)に算出された重回帰分析の係数を、現在に当てはめ、切片を調整すると、下図の緑線となり、なぜか、ピタリと一致する。ここから分かるのは、堅調さには駆け込みなどの上ブレが含まれ、今後は、大きな反動減を経て、減退するということだ。

 緊縮財政下の需要の飢餓状態においては、景気の原動力である設備投資は、内需に反応できず、追加的な3需要をなぞるような動きになってしまう。リーマンショック前も、そうだったし、現在も、そうなのだ。同じことをしていれば、同じ結果が出る。日本経済は、実に、素直である。素直でないのは、20年に渡って失敗を重ねても、現実から目を逸らし、投資促進さえすれば成長できるという「思想」にすがる人達であろう。

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 皮肉にも、アベノミクスは、民主党政権の目論見を実現するに至った。民主党政権の計画どおりだと、緊縮が激し過ぎて経済が溶解してしまうところを、時機を見ながら、限界まで締め上げる一方、異次元緩和によって、民主党政権が苦しんだ円高から脱し、日本を安売りすることで、成長を牽引してきた。ある意味で、見事なまでの経済運営である。問題は、党派を超えてエリートが当然のように抱く、そうした実態の「思想」にどれだけ共感できるかだ。もっとも、庶民には、これ以外のものがあるとすら思えず、とにかく、生活を切り詰め、働くしかないと考える。それが、少子化で人口を激減させつつある、この国の現状である。


(今日までの日経)
 60代の過半数「70歳超えても働く」。人材大手、派遣料1~2割上げ 同一賃金に対応。景気後退 くすぶる懸念 11月動向指数、4カ月連続「悪化」。



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