経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

縮小した三次補正の規模

2011年09月10日 | 経済
 日経は怒らないのかね。三次補正の規模は一気に萎み、増税の必要性はほとんどなくなった。財政当局に過大な復興費を吹き込まれ、2兆円規模の増税が必要という「提灯」を持たされていたのだから。もっとも、踊らされていたことさえ、分からないのかもしれない。「財源の迷走で、予算規模が下回った」という説明を真に受けているようなのでね。

 本コラムの読者なら、被害額が過大に推計され、復興費の想定が膨らまされていることを逐次説明してきているから、復興費が一気に萎んだことについて、馬脚があらわれたとしか思わないだろう。結局、財政当局は、増税の野望が潰えたので、そのテコにしていた復興費の粉飾をやめただけのことである。

 一つひとつ見ていこう。市町村への復興交付金3兆円であるが、これは真正の復興費である。それにしても、積み上げが不要な交付金を用意するのに、半年もかけるなんて酷いものだ。これが復興計画の遅れにつながっているわけで、放置していた罪は大きい。本コラムは一次補正のときから指摘している事項だ。

 次に、金融支援9000億円だが、これは、いわゆる「真水」ではない。融資枠のようなものが含まれるので、復興費にそのままカウントできない。三つめのインフラの本格復旧3500億円、四つ目の医療等の再生支援2300億円は、復興費としてカウントして良いだろう。ただし、長期的に料金などで回収される部分がある。

 五つ目の福島での再生エネ開発1000億円だが、これは長期的に電気料金で大半が回収されるものであり、カウントすることはできない。六つ目の被災庁舎の整備等700億円は、カウントできる。七つ目の漁業の事業資金援助は、投融資が含まれるように思うが、とりあえず5000億円をカウントしておく。

 問題は、八つ目の原発賠償の3兆円である。これは国債発行枠なので、当面の財源措置は不要なものだ。財源措置は、東電の能力を超えた部分について、賠償が実際になされたところで措置すべきであろう。九つ目の節電補助金2000億円は、原発再稼動が見通せれば、不要ではないか。復興費というより景気対策だろう。

 雇用対策のうち、海外移転対応の2000億円は、円高対策であるから復興費ではない。被災者雇用の1500億円は復興費として、一応、カウントしておくが、二つの雇用対策は、雇用保険特会でなされる部分があって、一般財源での措置は限定されるように思われる。最後の、円高対策の立地補助金5000億円は復興費ではないし、もうひとつのレア・アース等確保の300億円は、円高対策であるかどうかも疑問だ。

 こうしてカウントしていくと、真正の復興費は4.3兆円ほどに限られる。円高対策は、通常の景気対策と変わらないのであるから、復興増税の対象にするというのは、筋が通らない。国民は、復興費だから増税も構わないと思っているのである。そして、先の4.3兆円に、一次補正で年金財源を流用した分の2.5兆円を加えても、6.8兆円にとどまる。

 他方、財源であるが、9/5で指摘したように、経済予備費の枠が8100億円もあるのだから、これを充てることにすれば、10年で8.1兆円の財源が用意できる。当たり前だが、20年なら倍の16.2兆円になる。円高対策を含めたり、将来の原発賠償が出てきても、十分に賄えるはずだ。JT株や郵政株などの売却があれば、おつりが来るだろう。

 財政支出の規模を考えると、三次補正のほとんどの執行は、2012年度にずれ込むので、2010年度補正後、2011年度一次二次補正後、三次補正+2012年度当初の規模は、いずれも同程度と考えられる。従って、資金調達で経済に負担をかけることもないし、反対に復興費が経済を盛り上げることもない。2012年度は、順調に成長すれば、2.5兆円ほどの自然増収があるから、財政収支の改善が見られるだろう。

 こうしたことからすれば、復興増税そのものが不要ということになるが、それでも、筆者は、当面、法人税減税の凍結(8000億円)だけは行い、財政再建の姿勢は示すべきだと考える。凍結だから法人税が重くなるわけではないし、他方で円高対策の支援が行われるから、企業負担は今より軽くなる。個人課税は、年少控除廃止と子ども手当削減で既に9000億円ほどの負担増が決まっているのだから、定率増税を重ねるのは避けるべきである。

 もし、三次補正が今日の日経のようなものであり、復興増税が法人減税凍結にとどまるのであれば、日本経済は、ヨロヨロとではあるが、回復を見せるだろう。すなわち、財政運営の緊縮・増税色が強まるほど、景気は弱いものになる構図だ。

 あとは、日経がこれを分かるかである。年金を「除いて」10兆円と聞かされていたものが、いつの間にか「含め」に変わり、復興方針の事業規模に勘定されてなかった原発賠償の3兆円まで入っている。こうでもしないと10兆円にならないのだ。これを見て、「おかしい」と気づかないというのでは、情けなさすぎるだろう。

(今日の日経)
 三次補正、復興関連7~8兆円、年金含め10兆円。中国経済の軟着陸に不安、物価上昇、消費は減速。ユーロ10年ぶり安値。地震保険支払い額1.2兆円。IMF・デフレ下でも増税を。GDP2.1%減に下方修正。中ロしたたか崩壊後を視野。ユーロ再生策に深まる溝。久慈のサンマをイオンが全量買い取り。

※年金2.5兆円と原発賠償3兆円を含んで10兆円とは、ずいぶん萎んだものだ。※中国の物価は前年度が高かった8月になっても収まらないね、スタグフになってきたな。※ラガルドと言っていることが違う、話にならんな。

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