経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

財政出動はなぜ効かないと言われるのか

2021年07月18日 | 経済
 7/16に2020年度の地方税収入決算見込額が公表され、前年度比-0.7兆円であることが判明した。コロナ禍にもかかわらず、増税に伴い地方消費税が+0.6兆円、個人住民税が+0.2兆円だったのに対し、地方法人二税と法人譲与税が合わせて-1.5兆円だったことによる。ただし、この減少は、計上年度のズレによるもので、今後、国税と同様、大きく伸び、緊縮が強まることになる。

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 「金融政策は効かない」と言うと、「財政出動だって効かない」と、突っかかって来る人がいるのだが、金融政策には使い方次第のところがあるように、財政出動も規模やタイミングによって、効くかどうかが決まってくる。日本の場合、「どうして、こんなにダメなんだ」というくらい下手を重ねてきた。この拙劣さこそが膨大な国の債務を積み上げる結果にもなっている。

 成長の原動力である設備投資は、需要リスクに強く支配される。経営者は、金利や産業政策など気にかけず、需要がどれだけ出て来るか、すなわち、売上げが立つかだけを考えて設備投資を判断する。実際、日本の設備投資は、1997年のハシモトデフレ以来、嫌になるくらい、輸出・住宅・公共の需要を追ってなされている。これだけで完全に予測ができると言って良いくらいだ。

 裏返せば、投資が投資を呼んだり、消費ブームが起こったりという、市場経済にありがちな現象が見られなくなった。なぜなら、経済危機の際には、大規模な財政出動を行うものの、一服後の回復期に、急速な緊縮に走って、需要リスクを与えてブレーキをかけ、需要の循環で成長が加速するのをさえぎってしまうからである。十分に加速せず、デフレにくすぶるようでは、かえって財政再建も進まない。

 そして、コロナ禍でも、2020年度の国の税収は増税で過去最高になり、ここから、景気の回復に連れ、21年度は+3.2兆円、22年度は+3.1兆円と伸びて行く。当然ながら、税収規模が国の7割の地方も、21年度は+1.9兆円、22年度は+1.8兆円と増す。他方、成長による増収は、高齢化に伴う0.7兆円弱の自然増以外は、すべて財政収支の改善に充て、所得を吸い上げ、デフレを保つというのが、「空気」のままなされる経済運営の「ウラの大戦略」である。

(図)


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 今年は、総選挙後の秋にも補正予算が組まれと思われるが、3~4兆円の追加では、例年並みであり、これに国と地方の5兆円の税収の増加分を加えて、ようやく、財政は中立に至る。こうした規模とタイミングは、「常識外れ」とみなされ、それだけにデフレからは、いつまで経っても脱せない。これほどの規模となると、産業政策や公共事業での執行も難しく、ちゃんとした再分配の制度を用意する必要がある。

 少子化や非正規の貧困で苦しんでいても、再分配の制度がないために、消費に結びつけられないまま、その時限りのバラ撒きで、いくら産業政策をしても、設備投資は出で来ない。むしろ、企業は、次世代の先細りを感じ、海外へと流出する。需要の動向を把握しつつ、それに即した経済運営をするという、ごく基本的なことも分からず、衰退の道を転げて行く、それが日本の姿である。


(今日までの日経)
 東京の感染、半年ぶり水準。東南ア、デルタ型猛威。高齢者、1回目接種8割到達。米欧の財政支出、脱炭素・ITに集中。小売り、コロナ前上回る 3~5月純利益。最低賃金3%上げ930円。


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