経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10-12月期GDP2次・長期の消費率にみる衰退

2022年03月13日 | 経済
 3/9に公表された10-12月期GDPの2次速報は下方修正となり、名目の前期比は+0.3、年率換算で+1.2%だった。前期が年率-4.2%もの低下だったことを踏まえると戻りは小さい。またも1-3月期から4-6月期に見られた「大きく落ちて小さく戻すバターン」の繰り返しになった。その背景には、資源高に伴う外需の大きなマイナス寄与がある。実感に近いとされる名目値は、落ちても上回って戻す形の実質値とは違うトレンドにある。

………
 2次速報で2021年の数字が固まったので、今回は長期の消費率を見て行こう。消費率は、名目GDPに占める消費の割合で、景気の方向や量感をよく表す指標だ。好況時には投資が盛んになって消費率は下がり、不況時には逆に上がる。2021年は+0.5の上昇だった。前年よりコロナの悪影響はマシだったはずだが、景気は更に後退していた。実は、消費率の上昇はコロナ以前の2018年からで、ちょうど輸出がピークを過ぎた年である。

 景気の大きな転換点は、下図の青縦線で示した戦後4回しかなく、ニクソンショック前の1970年、対米輸出が急増する前の1983年、バブル崩壊の1991年、円安転換で輸出が復活したアベノミクスの2013年である。アベノミクスは、好況への転換という点で画期的であったものの、量的には小泉政権下の水準に戻した程度で、4年の短さで途切れてしまい、コロナ禍の今に至っている。

 日本の景気は、輸出が設備投資を引き出しており、金融緩和の効果があったとされる高度成長期においても同様だ。実際、昭和40年不況の際は、緩和しても、すぐには効かず、輸出拡大と財政出動に連れ、遅れて回復している。そして、1997年以降のデフレ期に入ると、緊縮で消費への波及を妨げるようになったため、設備投資は、輸出とパラレルに動くようになり、住宅と公共を合わせた追加的需要で完全に予測できるまでになった。

 この関係は、リーマンショックで一旦は乱れたものの、一服した後には、元へ戻っている。今、我々が目にしているのは、コロナの影響に紛れてはいるものの、輸出の推進力を失う中、資源高によって衰えている姿であり、名目GDPの動きは、これを端的に表しているように思える。こうした動きは、緊縮が波及を妨げるところまで含めて、しばらくは続きそうな情勢となっている。

(図)


………
 好況の期間に消費率が下がるということは、成長が加速する中で、投資の伸びが消費より高いことを意味しており、景気を動かすのは、投資であることが分かる。その投資を主導しているのが輸出だ。設備投資が、金利ではなしに、輸出などの追加的需要で決まるのは、正統派の経済学には合わない話になるが、日本経済はそうだったとしか言いようがなく、いわば、理論的に間違った現実が50年以上も続いてきたわけである。

 3月の証券各社の企業業績見通しは上方修正となり、ウクライナ戦争の影響で変わる可能性はあるにせよ、法人税の増収で緊縮は一段と進み、巨大なコロナ対策の補正を打ったにもかかわらず、平時並みの財政出動の状況になっている。資源高による消費の抑制は確実で、春以降、コロナが収束しても、どれほどのリベンジ消費が出るか予断を許さない。次の輸出ブームまで耐える時期となるが、いつ終わるか分からないし、輸出という起動力を失う日もいずれやって来る。


(今日までの日経)
 主要商品4割が最高値 米インフレ率8%台も。米、労働参加率45年ぶり低さ 賃金・物価上げ加速。米、ロシア産品に高関税 IMF対ロ融資停止。企業物価2月9.3%上昇、41年ぶり水準。米でLNG6割増産。全世代型社会保障、「人への投資」優先。シェルを動かす「べき乗則」。


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3/9の日経 | トップ | 3/17の日経 »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (水鏡仁)
2022-03-14 13:20:49
理論こそ、間違っています。
需要と供給が釣り合うこと自体は、物理的現象に過ぎません。下記のように価格は関係ありません。
また、買い手は売り手を差別しています。1年間に買いに行く店の数は、1週間に買いに行く店の数倍程度でしょう。差別していなければ、50倍程度にはなるはずです。費用の問題なので、差別ではなく区別と呼ぶべきかもしれません。現実の市場は小さな独占市場の集まりです。
独占市場なので、供給曲線は存在しません。供給曲線から導かれる「金利の上下が投資を増減させる」という理論も成り立ちません。


需要と供給の一致に価格は必要ない
https://suikyojin.hatenablog.com/entry/2021/09/11/163630
現実の市場は小さな独占市場の集まり
https://suikyojin.hatenablog.com/entry/2021/09/05/134936
供給曲線は存在しない
https://suikyojin.hatenablog.com/entry/2021/09/07/105545
返信する

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事