経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

増税とバラマキの戦略

2012年06月25日 | 経済
 やはり補正予算が来たか。日本の財政当局は、経済運営は無能でも、政治的な立ち回りは憎らしいほど巧みである。一気の増税を和らげるためにバラマキをするくらいなら、緩やかな引き上げにしておけば良さそうなものだが、そうした経済的に理に適った運営が顧みられることはない。

 2012年度予算の焦点の一つは、年金財源を賄う交付国債だった。手形のようなものだから、批判が集中するのも当然だが、それは戦略の内であったろう。ここに議論を集中させ、歳入庁などの面倒な問題に拡散しないようにすると同時に、社会保障に消費増税が欠かせないことをアピールする狙いがあったのだろう。

 今回は、税と社会保障の一体改革と銘打ったが、増税だけが合意され、社会保障は先送りになるのは、予想されたことだった。それは、財政当局にとって理想的だが、最低限、社会保障にリンクさせるための仕掛けも欠かせない。そして、増税が合意されたことで、めでたく、異例を作らずに、補正予算において年金目的の赤字国債に振り代わることになる。

 おそらく、消費増税を決める政治的な山場が6月末になることも、シナリオどおりだったのだろう。6月末には、前年度の税収が明らかになり、過少見積りで仕込んでおいた上ブレの財源が出てくる。これを年金財源に充てて、赤字国債を減らすことができれば、政治によるムダ遣いを防ぐ手立てにもなる。

 むろん、日経が解説するように、補正予算をエサとして、消費増税に民主党内の慎重派を取り込んだり、自公を引き入れたりすることに利用する道もある。例えば、7月には予算が底をつくと言われるエコカー補助金を延長するための財源にもできるから、そうなれば、自動車関連の企業や労組は、喜んで消費増税の働きかけを議員にするに違いない。

 一気の増税とバラマキの組み合わせは、国民の望むところなのだろうか。そもそも、一気の3%にしたのには、今の首相と総裁のうちにという思惑からだろう。同じ10%まで高めるにしても、まず2%上げ、その後に3%上げるというのが、デフレから脱却していない経済状況を踏まえれば自然だが、後で3%にしたら、政治がどうなっているか知れたものではない。

 たとえ、バラマキを組み合わせても、3%の転嫁に苦しむ中小企業の多くは、救いにあずかることはないだろう。政治的には巧妙でも、経済的な理に適わないというのは、こういうことなのである。国民の多くは、高齢化に対応するためなのだから、増税も受け入れようという心意気でいる。どうして、日本のリーダーは、それに無理のない戦略で応えようとしないのかと思う。

(今日の日経)
 秋に補正、成長促進、消費増税を念頭に、慎重派に配慮、自公とも協議。トヨタ、BMWにハイブリッドを供与。社説・電力改革。防災対策法案・衆院選にらむ。赤字国債法は解散なら協力。マネーが株式から退避。金融取引税で10億ユーロ課税。格安航空に人材。経済教室・社外取締役・宮島英昭。

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