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経済政策と社会保障を考えるコラム


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10-12月期GDP2次・上方修正で1.6%成長

2018年03月11日 | 経済
 2/4のコラムで、10-12月期GDPは前期比+0.4程としていたが、1次速報の+0.1を経て、2次速報の+0.4へと収まった。輸入が急増していたので、在庫を強めに見ていたことが奏功したように思う。いずれにせよ、2017年各期の実質成長率は、年率1.9%、2.4%、2.4%、1.6%と好調に推移したことになる。いつの間にやら、日本経済は2%成長が当たり前のようになっている。次の2018年1-3月期も、危ぶまれていた消費がまずまずの滑り出しにある。

………
 2次速報のポイントの一つは、設備投資の上方修正で、前期比+0.7から+1.0になったことだ。これにより、設備投資の実質GDP比率は16.1%に上昇し、ハシモトデフレ前のピークを超え、リーマンショック前の最高である2006年10-12月期の16.2%にあと一歩まで迫った。世上、「企業はカネを溜め込んでばかりで投資をしない」とされるが、意外になされている。かつてとの違いは、生産設備の投資より研究開発の投資が重きをなすことだ。

 投資全般について、2006年10-12月期と今期を比較すると、設備投資は0.1%の違いしかないのに対し、公共投資は0.4%、住宅投資は1.0%もの差がある。設備投資をかつてないレベルに引き上げるのはもちろん重要だが、今さら公共や住宅ではないにせよ、介護や教育・保育など代替えとなる社会的投資が求められる。日本は、もはや土建国家とは言えず、少なくとも、公共投資を削って他に振り向けるといった状況にはない。

(図)


 2次速報では、家計消費(除く帰属家賃)についても、若干の上方修正があり、前期比+0.5から+0.6となった。これで、2017年の消費は、前年同期比だと+0.5、+1.8、+0.5、+1.1となり、消費増税以来、初めて一度もマイナスがない年となった。暦年の伸びは1.1%と、GDPの1.7%とは差があるものの、3年連続のマイナス成長からは脱することができた。もっとも、水準となると、消費増税の駆け込み前の2013年10-12月期より2.7兆円も少ない。

 消費の水準が低く、伸びも成長率を下回ることは、今後の加速への可能性につながる。消費増税前の消費の伸びは前期比+0.4程あって、GDPの伸びに近かった。したがって、伸びは未だ十分でなく、加速の余地がある。反面、伸びが十分でないことは、消費増税がなかった場合のトレンドから、乖離が広がり続けていることも意味し、それは19兆円にも及ぶ。たった8.1兆円の税収増のために失った消費の犠牲は、実に大きいのである。

………
 今月から、統計局・家計調査と同時に、消費動向指数の公表が始まった。家計調査は、変動が激しく、消費の基調をつかむのが難しい統計だったが、新しい動向指数は安定した動きとなっている。1月は悪天候に見舞われ、商業動態の小売業が前月比-1.9と落ち込んだのに対して、総消費動向指数は実質で+0.4となった。日銀・消費活動指数も+0.5であり、符合する動きを見せる。GDPに即した内閣府・消費総合指数も同様の動きが予想される。

 動向指数は、四半期単位となると、活動指数や総合指数とズレが見られるため、1-3月期GDPの消費を予想するには、これらと合わせて判断するのが適当だろう。いずれにせよ、1月の商業動態の公表時における消費の落ち込みの危惧は消え、1月の消費の滑り出しは、まずまずとなった。むしろ、生鮮の値上がりを踏まえれば、消費は、12月に続き、予想以上の粘りを見せたと言える。特に、動向指数の名目は高く、消費の潜在力を感じさせる。

(図)


 これまで、本コラムでは、速報性を得るため、商業動態と家計調査・消費水準指数(除く住居等)を足して二で割る手法を用いてきた。これは、昔の消費総合指数の作り方である。家計調査の公表が遅れることで、若干、速報性は失われるものの、消費動向指数の開発によって、誰でも基調が読めるようになった。長年の懸案であったものが、統計改革によって、信頼性という大きな成果が得られる。関係者の努力にユーザーとして感謝する次第である。

………
 1月の家計調査の消費性向は、7か月ぶりに大きく上昇した。実収入が大きく低下するという不自然な動きが背景にあるが、1月の消費者態度指数の雇用環境も上昇していたので、回復の兆しかもしれない。ただし、2月の態度指数は一転して下降しているので、今後の推移は要注目だ。もし、消費性向が回復に至れば、春にかけて、意外な消費の加速が見られることになる。消費増税によって潰された景気回復は、ようやく消費に波及して本格化する。すなわち、景気は次の局面に移るのだ。


(今日までの日経)
 大震災7年、コンパクトな街に。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-03-11 21:30:31
もし安倍政権が倒れたらやばそう。後任候補は脳みそに傷がついた連中が多いから。

石破
「税収以上のお金を使うと、借金が増えて次の世代は大変になる」
「消費税率を10%に上げる日は早ければ早いほどいい」

岸田
「財政健全化の道筋を示すことで、消費を刺激して経済の循環を完成させる」
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Unknown (基礎固め)
2018-03-15 02:03:03
失礼します。とりあえず現内閣には総辞職または首相と財務大臣には辞職してもらわないと収支がつかないですね。といいますか辞職が前提でそれからでないと、公文書問題の調査分析聞き取り…繰り返しを始めることさえできない状態迄悪化させてしまったというところですね。

なぜなら佐川氏が文書を破棄したとこ答弁していた時に内閣で調査し、書き換えした文書を出していれば…偽証された文書を分析できない調査能力の問題だけでしたが、調査自体をしなかった…ましてや適材適所だと迄発言したため調査をする気がない、又は状況的に問題の当事者の可能性を自ら認めたような状況になってしまったために、今回の調査に加えることができなくなりました。

まして内閣の長、行政の長なので一端調査への影響を排除するには止めていただくしかないです。俗議員的な感じでしたらその時の関与の疑いある議員と省庁だけでよかったのですが…。そして財務省だけでなく検察や他の省庁や会計検査迄出てしまったので余計内閣総辞職後、大規模調査に売ってでないとなりません。もしそれをしないならガバナンス能力つまり制度の構築能力の前提でさえ今の自民党にはないことになりますね。

政策担当能力としての…集団的自衛権や共謀罪で事実解明…今回で調査能力、法人税や消費税や労働法でインセンティブ分析力、生活保護や今回でセーフティー的な制度の構築能力、裁量労働や水産庁や原発等の科学調査の無視でデータ収集分析がヤバすです。。 あとは調整力位ですかね
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