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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

1-3月期GDP1次・景気はもっと悪くなる

2019年05月26日 | 経済
 1-3月期GDPの1次速報は、若干のマイナス成長になるとの大方の予想を覆し、実質年率2.1%の高成長であった。むろん、その高成長に内実はなく、弱い内需を映す輸入減によるもので、そうした分析が広く知られたことは幸いだった。ただ、エコノミストの読み違えは、これが理由ではない。設備投資が不可解なほど粘りを見せたためである。すなわち、設備投資には、もっと悪くなる可能性が潜んでおり、今後の景気の行方には、相当な警戒が要るということだ。

………
 今期のGDPの特徴は、消費、設備投資、輸出という重要な3つの需要項目が揃ってマイナスに転じたことである。前期比-0.2となった家計消費(除く帰属家賃)は、けっこう深刻な状況にあり、237兆円台は、消費増税前どころか、アベノミクス開始時の2013年1-3月期をも下回る。6年の時を経て、国民生活をまったく豊かにできていない。当然、10月の消費増税までに、2014年増税の駆け込み前の水準まで回復するのは絶望的である。まるで、国民が豊かになることに怨みでもあるかのようだ。

 消費増税の悪影響は、公共事業の積み増しなどで相殺することになっているが、どうして、ここまで消費の圧迫に拘るのか、まったく理解できない。財政赤字は国民を甘やかしているという思い込みでもあるのか。また、消費削減を公共事業で補っても、経済構造に歪みを作るだけである。こうして見れば、消費増税にこそ、2%目標が必要であろう。MMTではないけれども、消費水準が前年より2%増す状況で、消費者物価が2%を上回るなら、税率を1%上げるといった条件を付すべきである。

 設備投資は、前期比-0.3という結果だったが、よくこれで済んだというのが率直な感想である。なにしろ、鉱工業指数3月確報での資本財(除く輸送機械)出荷の前期比は、-8.0にもなっている。国内総供給で見ても落ち込みは大きいし、これほどの違いが季節調整で出るとも思われない。加えて、機械受注の内需の前期比は、10-12月期-5.6%、1-3月期-6.2%である。これらからすると、1-3月期法人企業統計に拠るGDPの2次速報で下方修正がなされたり、4-6月期で低下が表れたりという事態が考えられるのである。

 下図で分かるように、設備投資と輸出とはシンクロするものなのだが、1-3月期の設備投資の微減は、輸出の動きと合わないし、3需要と比べても下げが足りない印象である。むしろ、2次速報での下方修正や、4-6月期での低下がずっと自然だ。公共事業と住宅は、増加傾向にあるものの、この1年の低下を取り戻す程度でしかなく、新たな設備投資の材料になるとは考えにくい。そして、緊縮にさらされる消費は、横バイが続いており、設備投資を刺激できる状況にはない。

 ついでに言うと、今期の成長要因だった在庫投資にも下方修正の懸念がある。輸入が大幅に減り、消費や設備投資が大して減っていないのに、在庫が増えるというのは、やや不自然だからだ。1次速報では、原材料と仕掛品の在庫は仮置き値のため、在庫投資も1-3月期法人企業統計の結果で変わる可能性がある。通常、GDPの2次速報は、あまり重視されないものだが、6/10公表の次回ばかりは、消費増税の最終判断と絡んで、注目されることになるかもしれない。その後の6/19が今国会最後の党首討論である。

(図)


………
 5/21のシノドスで、上智大の中里透先生が『消費税は引き上げられるか? 現代金融理論と「反緊縮」の経済学』を書いて、論点をきれいに整理しておられる。もはや、結論は見えているように思う。MMT以前の問題として、外需に大きなリスクがある中、消費と物価が低迷しているのに、増税で潰しにかかり、危難の時に切り札となる公共事業の積み増しを予め使ってしまうことに、どんな合理性があると言うのか。

 まさか、債務残高の数字しか見ないで、財政を論じているわけではあるまい。6年前と比較して、収支は大幅に改善されており、時期を選ぶくらいの余裕はある。5/25の日経社説は、いつものごとく、「消費税率上げ準備は着実に進めよ」と旗を振るが、子会社のM・ウルフ論説委員が主張するように、極端を避け、財政政策と金融政策を組み合わせ、個人消費を高める政策に転換すべきである。

 日本の財政の仕組みは、中央では、高齢化に伴う年間5千億円の歳出増しか認めず、地方では、税収増の分だけ交付税の補填が減らされ、年金では、保険料が増えても、給付をマクロ・スライドで抑制するようになっており、景気が上向いて所得が増すと、自動的に強力な緊縮のブレーキが作動する「構造的デフレ」がビルトインされている。これを1兆円に緩める程度なら、MMTに入信しなくとも、財政破綻を心配せずに済む。「反緊縮」の制度設計は、まじめに考えれば、ドラスティックでもなく、存外、現実的なのである。


(今日までの日経)
 トランプ氏「数か月内、大きな発表を」日米交渉に言及。米、人民元安けん制。ファーウェイ、スマホ開発困難に 英アームが取引停止。過剰債務の破局 どう防ぐ・Mウルフ。


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3 コメント

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Unknown (はるこ.inc)
2019-05-26 11:02:01
内需総崩れですね!

強者に甘く弱者に厳しい安倍政権の悪政をいい加減終わらせなければいけません (#`皿´)

私の周りでは参院選では立憲や共産党に入れると言う人が増えてて嬉しいです (#`∀´)ノ
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Unknown (bnm)
2019-05-26 12:26:19
結局、まともに勉強することもなく宗教呼ばわりって、最低じゃないですか?
「人は考えを変えない、悲しいほどに」、筆者さんも例外ではないということでしょうか。
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Unknown (Unknown)
2019-05-27 23:56:34
「G20で、世界経済下支えの為に、各国は財政拡大路線をとることで合意した。これに従い、日本も増税を延期する」みたいな感じになると予想。
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