経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・消費を死なせ、地球に貢献

2019年12月29日 | 経済(主なもの)
 景気が減速しているにもかかわらず、消費増税を強行したために、経済は、もう滅茶苦茶である。鉱工業指数が前回増税を上回る大打撃となり、商業動態・小売業が東日本大震災以来の最低水準に沈んだ。2014年当時は、輸出が増えていたから、緩やかながらも、景気は回復して行ったが、今回は、輸出が低迷中であるために、底をはう状態が長く続くだろう。消費がよみがえるのは何年先か分からず、ことによると、もうないのかもしれない。つまり、消費は既に「死んでいる」のである。

………
 11月の鉱工業生産の前月比は、「消費増税の反動減と台風被害が重なった」とされた10月の-4.6から、更に下げて-0.9となった。天気のせいではなかったようである。前回増税の2014年4-6月期の前期比は-3.0だったが、今回の10-12月期は、10,11月実績と12月の経産省予測の+0.4から、前期比-4.3になりそうで、前回を上回る大打撃となるのは必至だ。しかも、前回は直前の期が+2.0だったのに対して、今回は-0.6であり、駆け込みの少なさを考えれば、落ち幅の見た目以上の大打撃なのである。

 水準も低い。11月の97.7というのは、消費増税の再見送りを決断した2016年5月の98.5を下回り、2013年4月以降の最悪である。ここでもアベノミクスは水泡に帰している。景気をリードする資本財(除く輸送機械)と建設財をチェックすると、92.7と96.5であり、2014年以来の最悪値から更に-2.7と-0.2も低い惨憺たる有様だ。予測を含む前期比については、それぞれ-7.3と-3.6と落ち込み、10-12月期のGDPは、消費だけでなく、設備投資も大きく低下することは避けられそうにない。

 他方、11月の住宅着工は83.4万戸、前月比-4.5万戸と2か月連続の減少となった。住宅には駆け込みがあまりないとされていたにもかかわらず、10-12月期は、7期ぶりの大きな下落幅になりそうである。水準としても、前回増税後の最低だった2014年7月の84.3万戸を既に下回っており、それより下は、大震災時までさかのぼらなければならない。住宅がここまで悪化するとは、正直、予想外だった。既に建設業活動指数は急落しており、一層の低下が考えられる危機的な様相となっている。

(図)


………
 商業動態・小売業については、10月に前月比-16.1も落ちたにもかかわらず、11月は、半戻しに全く及ばない+4.4にとどまった。これからすると、10-12月期の消費は、-2%台半ばまで崩れて、東日本大震災時の-2.4%を超えるかもしれない。この時は、住宅や設備投資はプラスだったけれども、今回は、どちらもかなりのマイナスになる公算が高く、大震災を超える需要ショックを、人為的に経済に与える形となる。4~5年おきにショックを与え、積み重ねた努力を御破算にしていたら、成長する方が不思議だ。

 消費を支える雇用については、11月の労働力調査は、男女計の就業者数、雇用者数ともに2か月連続の増加となり、失業率も2.2%に戻して、小康を保った。しかし、先行性のある新規求人倍率は、11月の「除くパート」が2.11倍と前月比-0.09となり、上下しつつも、緩やかな低下局面に入っている。低下は、前年同月差を見ると鮮明で、マイナス幅が拡大しており、産業別では、ここに来て建設業まで増加幅が縮んで、引き続き増加傾向にあるのは、景気と関係の薄い医療・福祉に限られる状況に変わっている。

 家計調査などの結果は年明けになるが、ポイントは、勤労者世帯の実収入の動向である。前回増税の時は、反動減から徐々に回復していったように見えて、実は、収入が増えることに伴って消費水準が戻っていったのであった。つまり、収入が増えて行かないと、反動減からの回復がほとんどないまま、落ち込んだ水準からL字で推移してもおかしくないわけである。足元の雇用の衰えぶりからすると、収入増は望めず、むしろ、L字に陥る可能性は高いと見るべきだろう。

………
 消費増税を重ねるたびに、消費の増加トレンドは弱まり、フラットに近づいてきた。景気が回復して収入が増えても、消費の際に一定率が徴収されるのだから、率が高まるほど、景気が波及しがたくなり、需要増から投資や賃金への好循環が回らなくなるのは当然だろう。消費税は、消費、物価、投資、賃金、成長を抑え込む手段として絶大な威力を持ち、「低温経済」を実現するには打ってつけだ。問題は、低血圧の時に降圧剤を処方するようなことをしてはいけないということである。

 将来の高血圧が心配だからといって、今から降圧剤を飲んでいたら、死んでしまう。そう、この国は、それをやってしまった。財政赤字におののき、増税と緊縮に取り憑かれ、「経済と人口を圧縮する構造への改革」を現出させたのである。こうなると、「地球環境のため、縮小の道を歩む」と開き直って誇るのも、世界史上での一つの在り方かもしれない。むろん、世界から哀れみは受けても、見習おうとはならないが、訳も分からず自滅したとバカにされるよりマシだろう。


(今日までの日経)
 お手上げ少子化対策 突破口は小泉環境相の育休取得?。安倍首相、出生率低下で対策指示「国難だ」。[社説]座視できぬ出生数86万人への減少。中国社債の不履行最高 今年2.5兆円。動かぬ円 消えぬリスク。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12/25の日経 | トップ | 1/1の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済(主なもの)」カテゴリの最新記事