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<社説>「解」を探して《5》 個を尊重し人権守る国に

2024-01-12 | アイヌ民族関連

北海道新聞2024年1月11日 05:00

 日本国憲法は、基本的人権を侵すことのできない永久の権利として保障している。

 しかし、差別や暴力などの人権侵害はやむことがない。とりわけ昨年は深刻な事態が続いた。

 首相秘書官が性的少数者をさげすみ、自民党衆院議員はアイヌ民族への差別的投稿を続けた。

 旧ジャニーズ事務所の創業者による少年たちへの性加害は世界に衝撃を与え、自衛隊でのハラスメントに有罪判決が出た。

 憲法施行から77年がたとうとしてなお、人権の確立からほど遠い実態が浮き彫りになっている。

 誰もが法の下に平等な個人として差別を受けず、尊重される。自由と幸福を求める権利を確保され、人間らしく生きる―。

 それが実現した社会をどう達成するか。重い課題に向き合い続けなければならない。

■聞こえぬ声が訴える

 旧ジャニーズ事務所の性加害は英BBCが取り上げ、元所属タレントが記者会見で告発してようやく社会問題化した。新体制の下、被害補償金の支払いといった進展がここにきて出てきた。

 しかし見過ごしにできないのが、改めて浮かび上がったこの社会の声の上げづらさだ。

 創業者からの性被害を訴えていた男性が亡くなった。自死とみられる。「売名行為」などと中傷され悩んでいたという。

 「意見を言うことが日本では良しとはされてこなかった」

 昨年12月、日本外国特派員協会で記者会見した俳優で文筆家の睡蓮(すいれん)みどりさんは強調し、個々人の主張より集団のまとまりを優先しがちな日本社会を批判した。

 睡蓮さんも映画監督からの性被害を告発している。声を上げられない被害者は多いとして「聞こえない声に耳を傾けて」と訴えた。

 自身の不条理な境遇に沈黙を強いられることなく、誰もが声を上げ、それを受け止める社会でありたい。勇気ある訴えが攻撃されるようでは社会の息苦しさが増す。

 マスメディアの役割も重要になる。人権侵害に見て見ぬふりはもう許されないと自戒したい。

■相互理解図るべきだ

 性的少数者を巡っては、権利保護に向けた動きがあった。

 国会では理解増進法が成立した。最高裁は、性別変更には生殖能力をなくす手術が必要だとする法規定を違憲・無効と判断した。

 ただ、揺り戻しも見られた。

 理解増進法の立法過程では「全ての国民が安心して生活できるように留意する」との文言が加わった。保守派への配慮だった。

 最高裁の違憲判断に対しても、女性の権利保護を目指す団体が女性用トイレなど女性のスペースを守る法律の整備を訴えている。

 性の多様なあり方を前に戸惑う人は確かに少なくない。

 ただこうした経緯の根底には、少数者の置かれた状況への多数者側の理解の不足もないだろうか。

 多数者の権利のみが「公益」として優先されれば、少数者の人権は置き去りにされる。過去には公益の名の下で、旧優生保護法が多くの人権を蹂躙(じゅうりん)した歴史がある。

 第一に考えるべきは個々の尊厳であり国家はそれを守るためにある。順序を間違ってはならない。

 少数者が多数者の安心を脅かす存在のように言われることに、当事者らは心を痛めている。

 同性婚訴訟を担当する札幌の加藤丈晴弁護士は、性的少数者のうち例えば体と心の性が一致しないトランスジェンダーについて「周囲とのトラブルを避ける涙ぐましい努力をしている」と話す。

 不安や分断を強調するのではなく、少数者らへの理解を深め、包摂の社会を実現する方策を考えていかなければならない。

■「不断の努力」実践を

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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/961614/

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