先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

平取町が「おためし留学」 全国の中学生対象 10月に2泊3日

2024-08-08 | アイヌ民族関連

石井純太 有料記事

北海道新聞2024年8月7日 21:38(8月7日 22:33更新)

 【平取】町内唯一の高校、平取高の入学者減少に歯止めをかけようと、町は全国の中学生を対象に、マチの魅力を知ってもらう「おためし地域留学」を実施すると明かした。2泊3日滞在し、アイヌ文化や農業を体験してもらう。7日の臨時町議会で、業務委託費190万円を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案が可決された。

 おためし地域留学は10月12~14日の3日間で、参加者は10人程度を見込む。5~7月にクラウドファンディングで資金を募り、90万円を集めた。不足分は企業版ふるさと納税の寄付金を充てる。

 ・・・・・

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1048530/


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

<ウポポイ オルシペ>95 藤戸竹喜の「樹霊観音像」 熊木彫り一筋からの転機

2024-08-08 | アイヌ民族関連

有料記事

北海道新聞2024年8月7日 9:52

熊の木彫り一筋だった藤戸の転機になった樹霊観音像(正徳寺蔵)

 国立アイヌ民族博物館は25日まで第8回特別展示「生誕90年記念 藤戸竹喜の世界展」を開催しています。そこで展示されている高さ188.5センチの観音菩薩立像は、普段は阿寒湖畔の正徳寺に安置されていて、「樹霊観音像」と命名されています。

 藤戸竹喜(1934~2018年)は、この作品の制作を1968年の秋から始めています。それまで熊一筋に木彫りを行ってきた藤戸は、樹霊観音を彫りあげた後、身近な先人たちの生活の様子や等身大の肖像彫刻、鹿、キツネ、オオカミ、オジロワシ、ウサギ、イルカ、クジラ、シャチ、ラッコ、カニ、エビといった生き物の彫刻を手掛けていきました。その意味で、木彫家としての転機となった作品といえるでしょう。

 樹霊観音の制作にあたって、藤戸は京都と奈良に1週間滞在し、古仏の姿形を目に焼き付けています。そして、デッサンをすることもなく「来る日も来る日も大木とにらめっこをし、悩みつつ、ようやく最初のまさかりを入れ」、翌69年6月に完成させました。

 この観音像は、阿寒で森林開発を行ってきた前田一歩園の3代目園主・前田光子が、夫の2代目園主・前田正次の十三回忌にあたり制作を依頼したものです。その10年前の59年、光子は現在の阿寒湖アイヌコタンの土地を無償提供していました。

 そこにはアイヌの店舗兼住宅が集まり、・・・・・

<文・関口由彦=国立アイヌ民族博物館展示企画室室長補佐>

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1048125/


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイヌ文様の魅力を多くの人に知ってもらいたい アイヌ文様が描かれた衣服や小物などを展示・販売【徳島】

2024-08-08 | アイヌ民族関連

四国放送 2024年8月7日 19:22

アイヌ文様が描かれた衣服や小物などを展示・販売するイベントが、8月7日から徳島市で開かれています。

アイヌ文様は、民族衣装や生活用具などに描かれる特徴的な文様です。

今回の催しは、このアイヌ文様の魅力を多くの人に知ってもらおうと開かれており、衣服や小物などが展示・販売されています。

アイヌの代表的な民族衣装「カパラミプ」は、自然をモチーフにデザインされていて、普段着にも晴れ着としても用いられます。

文様や刺繍は地域や作り手によって異なり、会場では鉢巻とともに試着することができます。

また、口琴の一種で、アイヌの伝統楽器である「ムックリ」の演奏体験もできます。

このイベントは8月12日まで、徳島市のクレメントプラザで開かれています。

https://news.ntv.co.jp/n/jrt/category/life/jr45467dca30cf4641bcd5d6cfc75473d5


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セイオロサムに「アイヌ文様ラベル」 あす発売

2024-08-08 | アイヌ民族関連

十勝毎日新聞 2024/08/07 11:22

アイヌ文様が施された特別ラベルのセイオロサム

 【池田】池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は8日、十勝ワイン「セイオロサム」のアイヌ文様ラベルを限定発売する。
 セイオロサムの商品名は、池田町周辺がアイヌ語で「セイ・オロ・サム(貝殻の採れる所)」と呼ばれていたことに由来する。アイヌ語から名付けられていることを広く知ってもらおうと、池田ワイン城50周年の節目の年に特別ラベルを制作した。
 一般社団法人阿寒アイヌコンサルンを通じて、十勝にゆかりのあるアイヌの女性にデザインを依頼。十勝ワインのために、十勝らしいアイヌ文様を仕上げた。
 赤、白ともに金色の文様で、赤はピンク、白は緑のグラデーションが背景となっている。販売は各2000本限定。希望小売価格は1本2420円。(澤村真理子)

https://kachimai.jp/article/index.php?no=614437


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ペルーの「非接触部族」がアマゾンの伐採業者を弓矢で攻撃。生存が「きわどい状況」に追い込まれていくマシコ・ピロ族

2024-08-08 | 先住民族関連

ハフポスト 2024年08月07日 16時7分 JST

先住民族の人権を守るために活動する団体「Survival International」が、弓矢を持つマシコ・ピロ族の画像を公開しました。

ペルーのアマゾンで、外界とかかわりを持たない非接触部族であるマシコ・ピロ族と伐採業者の間で緊張が高まっている。自分たちの土地への侵入者に同族が矢を放ち、少なくとも伐採業者1人が重傷を負ったという。

先住民族の人権を守るために活動する団体「Survival International」が8月6日、弓矢を手にしたマシコ・ピロ族の写真を公開し、同族の生存のついて「きわどい状況にある」と訴えている。

【画像】こちらに向かって大きな弓矢を手にするマシコ・ピロ族

マシコ・ピコ族はペルー南東部で孤立した生活を送る人々で、同団体によると非接触部族としては世界最大規模という。 

マシコ・ピロ族については、自分たちの土地に入ってくるようになった伐採業者から逃れるように、食料を求めて熱帯雨林から姿を現す頻度が増えていると、先住民の権利保護団体「FENAMAD」が懸念を示していた

同族に通じる言語を話すYine族によると、マシコ・ピロ族は自分たちの土地に伐採業者が入ってきていることに憤っていた。政府がマシコ・ピコ族による領有権を認め、法律で保護に動かねば、部族と伐採業者の双方が暴力的な手段を選ぶことにもなりかねないと心配されていたところだった。

Survival Internationalは、マシコ・ピロ族による今回の攻撃で重傷の1人を含めて、3人の伐採業者が怪我を負ったとみられるとしている。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_66b2e7d6e4b0b3da47534ca4


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モーガン・オイとズルファ・マハラニがポール・アグスタの新作映画に出演し、結婚式

2024-08-08 | 先住民族関連

VOI 07 Agustus 2024, 21:10

風の結婚式の監督兼キャスト(エンテクレーメディア)

ジャカルタ - エンテケレー・メディアは、リレート・フィルムズと共に、ポール・アグスタ監督の最新作『マリッジ・アルワ』のキャストを発表しました。別のタイトルも持っているこの映画「バタフライハウス」は、今月制作を開始します。

アルワの結婚は、異なる人種のカップル、すなわちサリムという名前の中国系インドネシア人男性と、祖先の家で結婚式前の写真撮影を行っていたタシャという名前の先住民族の女性、すなわちサリムおばさんの物語です。

サリムはまた、彼の命が脅かされるのを避けるために、神秘的な祭壇でスローを燃やす儀式を受けなければなりませんでした。しかし、過去の悲劇的な物語を隠したインドネシアの新郎新婦の形で先祖の霊に会ったとき、彼らの生活は危険にさらされています。

「大画面ではあまり取り上げられていないインドネシアの中国の文化と伝統へのアプローチにより、この映画が観客に新しく思い出に残るホラー体験を提供できることを願っています」とポール・アグスタ監督は述べています。

「私たちは、物語に自然に溶け込む文化的、歴史的背景が、強制されることなく本物の体験を生み出すことができると信じています。ポール・アグスタの独特のタッチとリレート・フィルムとの緊密なコラボレーションにより、この映画は観客にとって非常に思い出に残るものになると信じています」と脚本家のアルド・スワジアは語った。

モーガン・オイとズルファ・マハラニは、ジュルディ・プラナータ、ブリジッタ・シンシア、プティ・シャフルル、アマ・ジェラルド、アラム・ジャエラニ、ヴェルディ・ソライマン、ボニータとともに主人公です。

「この映画に関われることにとても興奮しています。この物語で提起された中国の伝統の背景に加えて、私が演じるキャラクターも非常に興味深いです」とモーガン・オイは言いました。

アルワの結婚は、2023年に映画「オンデマンデ」を監督した後のポールアグスタの最新作です。

映画「マリッジ・アルワ」は2025年に初演される予定です。

The English, Chinese, Japanese, Arabic, and French versions are automatically generated by the AI. So there may still be inaccuracies in translating, please always see Indonesian as our main language. (system supported by DigitalSiber.id)

https://voi.id/ja/lifestyle/405302


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヨーロッパは自由、平等を米先住民から学んだのに隠した...デヴィッド・グレーバーの遺作『万物の黎明』から受けた「知的なパンチ」

2024-08-08 | 先住民族関連

アスティオン 2024年08月07日(水)10時25分

小埜栄一郎+松田史生

<生命科学研究者が、考古学や人類学などの画期的な研究から生まれた「新しい世界史」を読んでみて、得た気づきとは?>

ともにデヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』を愛読していた、2人の生命科学研究者がグレーバーの遺作『万物の黎明』を手に取ったのは自然の流れだった...。

代謝適応進化を研究する小埜栄一郎(サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社主幹研究員)と代謝工学を研究する松田史生(大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻教授)という2人の理系研究者が、社会・経済人類学者の本(デヴィッド・ウェングロウとの共著)を読んで得た気づきとは? 研究との共通点、相違点について議論した。

◇ ◇ ◇

小埜 『万物の黎明』での主張は目から鱗でした。西洋の啓蒙思想は、「野蛮で愚かな未開人の先住民文化」に対して「西洋文化は高度に成熟した文化」であると意図的に設定することで自分たちの優位性を保っていた。

しかし実際にはその逆で、先住民の洗練された思想によるに西洋批判に対する「バックラッシュ」として西洋の啓蒙思想が生み出されたというのです。

松田 20世紀の先史学者・考古学者であるV・ゴードン・チャイルドが1925年に出した書籍『ヨーロッパ文明の黎明』が、内容的にも『万物の黎明』に影響を与えていると、訳者の酒井隆史氏は本書の解説で指摘しています。「そもそも人間を人間たらしめている自由を再発見できるかどうか」(609頁)という切り口から人類史にアプローチしたのが本書である、と。

まず、ルソーやホッブスの社会理論が説明する、「社会契約を結んだ社会へと進歩した」や「好戦的な存在が卑しい本能を手なずけて社会が生まれた」といった、社会的不平等の起源を批判します。

17世紀のアメリカ大陸では、イエズス会宣教師が先住民の啓蒙を試みていました。しかし、ネイティブ・アメリカンの哲学者カンディアロンクなどから、ヨーロッパ社会は寛大でも親切でもなく、「自明である三つの自由」を実現している先住民社会よりも劣っていると逆に痛烈な批判を受けます。

小埜 今では想像することも困難ですが、カンディアロンクは、①移動し、離脱する自由、②服従しない自由、③社会関係を創造し、変化させる自由が社会の安定化に必要だと唱えたんですよね。

松田 まず、その対話を収録した『イエズス会書簡集』が広くヨーロッパ社会で読まれ、アメリカ先住民の説く自由、平等といった概念が浸透し、フランス革命へとつながったっていったという指摘。さらに、ヨーロッパ側からの反論として上のような起源の神話が形成されたという指摘には驚きます。

ヨーロッパは自由、平等という概念をアメリカ先住民社会から学んでおり、その事実を隠し、アメリカ先住民社会にマウントを取るためにルソーやホッブスの社会理論が作られたというグレーバーの主張は、目から鱗どころか、なにか知的なパンチを喰ったような気がしました。

グレーバーの手法と限界

小埜 学問分野や研究者に限らず、人間は物事をシンプルに理解したい動物です。前よりも「知的負荷」が軽減されると「分かった」となります。

人類史もそうですが、我々の専門である生物学でも、知り得た知識を持ってしか現象の因果を説明できません。ですから、説明の精度は知識の量に制約を受けてしまいます。これまで語られなかった例外を集めて定説を覆す新しいストーリーを紡ぐというのはフレッシュな視点を与えてくれます。

本書で取り上げられた先住民社会の事例が、どれほど世界全体を反映しているのか、定量的なことは分かりませんが、少なくとも例外として片付けられない説得力がありました。

松田さんは人文学のケーススタディーの頻度や信頼性についてどのように感じておられますか?

松田 自然科学の歴史とは、いろいろな現象を統一的に説明するシンプルな理論体系が構築され、万物の理論となることが期待されます。しかし、やがて説明しきれない現象が見つかり、無視できないくらいの証拠が積みあがると、新しい理論体系が再構築される、というパターンの繰り返しです。

「例外として無視できないくらいの証拠」というのは、学問の作法にのっとり、検証可能な形で提出され解釈されたものであり、自然科学でも考古学でも同じです。なので、本書で提出される考古学的資料の取り扱いにも違和感はありませんでした。

小埜 再現性を強く要求される自然科学分野と、その困難さから再現性を強く要求されない歴史分野にも共通点があります。

松田 自然科学でも人文・社会科学でも、理論とは、現状の知見をもとに構築された仮説にすぎず、いつか反証されて新たなより包括的な理論に至る、捨て石の一つとなることが期待されています。

しかし理論や仮説には、それを作った人類、または西洋社会、あるいは白人や男性といったカテゴリーの人たちが持つ無意識の願望や欲望が反映されがちです。さらに、理論や仮説のわかりやすさと心地よさに安住すると、捨て石の一つである、という謙虚さが失われてしまいますよね。

ですので、グレーバーのように「われわれが見ている世界には、自分たちの無意識の願望や欲望のバイアスがかかっており、われわれはそれに気づかないまま集団的に多くのものを見落としている。では、われわれが見落としているものとは何か? 無意識の願望とは何か?」という問い立ては必要です。

小埜 恣意的なバイアスに加え、無意識の偏向を問う、これは重要な視点ですね。

松田 しかし、もし本書に1つケチをつけるとすると、図版や説明資料の少なさです。とくに自然科学系の論文では、理解を助ける図表が大事です。図がメインで文章がその補足ということも少なくありません。

一方、『万物の黎明』は、世界中の先史時代の遺跡を1万年以上のスパンでわたり歩くにもかかわらず、取り上げたすべての遺跡の年代や位置を示した年表や世界地図などがなく、今一つイメージしにくいと感じました。

小埜 グラフや図に語らせることに拘りがないですね。これは自然科学系と人文学系の作法の違いかもしれません。

松田 例えば、158ページにでてくる紀元前1600年頃にネイティブ・アメリカンが建造した「ポヴァティ・ポイント(poverty point)」という遺跡は、Google Mapで調べると草原に作られた同心円上の構造であることがわかり、さらにストリートビューで遺跡の中を歩くことができます。

また、同じ頃にクレタ島にあったミノア文明では成人女性による支配システムがあったようなのですが、Googleで調べると出てくる当時の少年のフレスコ画を見ると一目でなるほどと思ってしまいます。

小埜 多くの図版や写真が掲載された図解版はニーズが高いのではないでしょうか。デジタルではなく、書棚から飛び出すような、重厚で内実共に規格外の画集・図録があるといいです。

松田 訳者の酒井氏による本書の解説本『グレーバー+ウェングロウ『万物の黎明』を読む』(河出書房新社)も楽しみですが、「万物の黎明フォトブック」のような写真と図表をまとめた副読本も出てくると嬉しいですね。

「そういうもの」を許さないグレーバーの主張の背景

小埜 ところで、「そういうもの」という妥協や諦念といった姿勢を許さない、グレーバーらの強い動機はどこから来ているのでしょうか?

酒井氏の「訳者あとがき」で、筆者である2人のデヴィッドはともにアウトサイダーの感覚は抜けなかったとあります。定説に対するカウンターアクション、つまりアカデミアにおける彼らの立ち位置が執筆の動機にも見えます。

アカデミアにおける「同質化の圧力」に迎合しない格好良さがあり、先行するダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』やハラリの『サピエンス全史』などのベストセラーに影響を受けているのは明らかです。

松田 長い時間をかけて発展してきた現代社会は合理性と必然性があり、その結果、生じた不平等などの課題を解決するのは難しい、などと私たちは諦めがちです。

しかし、現在から過去を見るから「そう見えているだけ」であることを『万物の黎明』は気づかせてくれます。社会は歴史的な必然でも社会進化の最前線でもないのだから、よりよい社会を構築できるはず...。読んでいると「めいっぱい考えよう!」と背中を押されて元気が出てきます。

これはグレーバーが社会を宿命や必然として諦める気が全くない、筋金入りのアナーキストだからです。根源的な問いを立てることができる稀有な研究者であり、社会を変えることができるという強い信念を持った活動家だからでもあります。
※後編:農耕開始から国家誕生までの4000年に何があったのか...デヴィッド・グレーバーの遺作『万物の黎明』の自然科学研究への影響 に続く
【参考文献】
1)『ブルシット・ジョブ──クソどうでも良い仕事の理論』(著)デヴィッド・グレーバー (2020) 岩波書店
2)『銃、病原菌、鉄──1万3000年にわたる人類史の謎』(著)ジャレドダイアモンド(2012)草思社
3)『サピエンス全史──文明の構造と人類の幸福』(著)ユヴァルノアハラリ(2023)河出書房

小埜栄一郎(Eiichiro Ono)
1974年生まれ。岡山大学農学部卒業。奈良先端科学術大学院大学バイオサイエンス研究科分子生物学専攻博士前期課程修了。博士(バイオサイエンス)。2000年サントリー株式会社に入社、現在、サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社主幹研究員、静岡大学客員教授、科学技術振興機構さきがけ領域アドバイザー(植物分子の機能と制御)、ソムリエ(J.S.A)。専門は酵母と植物のゲノムとメタボリズム研究。趣味は植物観察と雑魚獲り。

松田史生(Fumio Matsuda)
1974年生まれ。2002年京都大学農学研究科応用生命科学専攻博士課程を修了、学位を取得後は、日本学術振興会特別研究員、ポスドク、理化学研究所植物科学研究センター研究員、神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究部准教授、大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻准教授を経て、2018年より同教授。専門は代謝工学。趣味はバイクと釣り。

万物の黎明
 デヴィッド・グレーバー /デヴィッド・ウェングロウ [著]
 酒井隆史 [訳]
 光文社[刊]

 (※クリックするとアマゾンに飛びます)

https://www.newsweekjapan.jp/asteion/2024/08/post-185.php


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

農耕開始から国家誕生までの4000年に何があったのか...デヴィッド・グレーバーの遺作『万物の黎明』の自然科学研究への影響

2024-08-08 | 先住民族関連

アスティオン 2024年08月07日(水)10時30分

小埜栄一郎+松田史生

<理系研究者が「新しい世界史」から得た気づきとは? 自然科学研究への影響について>

ともにデヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』を愛読していた、2人の生命科学研究者がグレーバーの遺作『万物の黎明』を手に取ったのは自然の流れだった...。

代謝適応進化を研究する小埜栄一郎(サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社主幹研究員)と代謝工学を研究する松田史生(大阪大学大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻教授)という2人の理系研究者が、社会・経済人類学者の本(デヴィッド・ウェングロウとの共著)を読んで得た気づきとは? 『万物の黎明』の自然科学研究に対する影響について議論した。

◇ ◇ ◇

※前編:ヨーロッパは自由、平等を米先住民から学んだのに隠した...デヴィッド・グレーバーの遺作『万物の黎明』から受けた「知的なパンチ」 から続く

「ホビー」としての農業

小埜 私たち理系の人間はよく、比較対象の「共通する変化」と「共通しない変化」をベン図で描きます。前者は最大公約数的であるゆえに普遍的要因と推定し、後者は独自性に関わると推定します。

2人のデヴィッドは、カリスマ的英雄や官僚主義が前者にあれば、農業は後者(共通しない独自性)に位置付けられることを多くの事例で丹念に調べ上げて結論づけています。

シンガポールのような超近代国家は食料を輸入によって調達することで農業以外のことに専念しています。当然、依存先があってのことですが、農業が国家維持に必須ではないことが分かります。

松田 農耕が開始されてから国家が生まれる4000年の間に人類が何をやっていたのかは、謎ですよね。そもそも耕作は食料獲得法としては手間がかかりすぎて効率が悪い上に、狩猟採集だけで食べていくことができる食料が豊富な地域で農耕が始まっているので、必要に迫られていたとも思えません。

『万物の黎明』では「遊戯農耕」という概念が出てきます。農耕開始が国家誕生につながるというストーリーへの反駁としては十分ですが、では本当は何が起きていたのか? という説明には今一つ何か足りない印象を受けました。

小埜 現代の企業買収などのニュースを見ていると、官僚的な農業国家を乗っ取るという形で現代国家が成立したという説は然もありなんです。大衆が暴力的にヒエラルキーに組み込まれ、年貢として重労働を強いられたのが、実際かもしれません。つまり、従来は「自由なホビー」であった農業が、義務的なジョブとしての食糧生産になったということです。

可食であるかどうか置いておいて、愛でて育ててみたくなるという動機は個人的には同意できます。種を捨てたらそこに同じ実をつける木ができたというハプニングも栽培化(Domestication)に大いに寄与していると思いますが、採取同様に栽培も最初は楽しいホビーだったのだと想像しています。

松田 豊かな狩猟採取生活には、知識と経験をもとに、毎年変化する状況に応じて工夫するベンチャー企業のアイデアマン経営者のような能力が必要です。

4000年かけて動物、植物の遺伝子構造と形態を変える家畜化(飼い馴らしDomestication)が進み、最終的には圧倒的な生産性を達成して、国家形成の基盤となったという説明が1つあり得ます。しかし、それでもやはり効率の悪い耕作をあえて選ぶ動機が今一つわかりません。

おそらく面倒な作物や家畜の世話や見張りなどの仕事が好きで得意な人が相当数いたのではないかと想像をします。いずれにせよ、4000年の間にいろいろな試みや失敗があり、農耕と国家との関係もシンプルなストーリーには回収できない複雑な歴史があるということなのでしょう。

では、私たちの専門である自然科学研究分野から、農業と国家については何か言えることはないでしょうか。

小埜 遺伝学的なフレームで国家の進化は問いを立てられますが、国家規模の再現性実験を実行して検証することは困難です。

しかし、ヒト以外の生物群集の研究は参考になるかもしれません。共生や寄生など生物間相互作用の多様性を見ると、国家を維持するような、略奪や交易といった別のやり方を生むのはヒトに限らないからです。みな他者に依存して生きています。

それでも人間の強烈なところは、農耕技術の発明だけでなく、利己的な目的で家畜や作物そのものを品種改良したところです。これは急速な食料調達の集団拡大の基礎にもつながっています。私の研究材料である醸造用酵母の振る舞いを見ているとそう思います。人為選抜によって野生種と生理的に大きく異なっています。愛玩動物もそうですね。

松田 生物進化の側面からはどうでしょうか?

小埜 『万物の黎明』が人類史研究の標準的なアプローチなのか、それとも異端なのかを判断する術を持ち合わせていませんが、植物特化代謝を研究している身からすると強いシンパシーを感じます。

自然科学研究には「モデル」に対して「非モデル」という比較がかつてありました。最初に詳しく調べられたものが「モデル生物」で、それと共通するものが重要であるという視点です。先行する知見に縛られてモノを見てしまうという陥りがちな罠があります。

しかし、幅広く生物を調べていった結果、すべての生物がユニークであり、それぞれ異なっていることが分かってきました。これは「共通性の生物学」から「多様性の生物学」へのパラダイムシフトです。

共通することが大事なのではなく、生物の生き様・生存戦略を規定するのは他者(種)との違いにこそ宿るという認識です。「例外なく例外があることが普通である」と。国家や文化の起源や多様性も同様であると理解しました。

意図されていない偶然が、その後に起こったことに対しては必然(前提)であったという、連続的な因果における「偶発性」と「必然性」は、国家の発生にも多分に介在していると、私は解釈しました。

松田 進化論の領域ではでグールドがまさしく『ワンダフル・ライフ──バージェス頁岩と生物進化の物語』(1)(早川書房)でその話題を取り扱っています。

約5億年前のカンブリア紀には、現在の生物の祖先に加えて、全く構成原理の異なる生物が出現する大爆発が起きています。つまり、多細胞生物の多様性は最初が最大で、その後は狭い範囲で多様化していただけで、ヒトにつづく進化にも必然性があったとは言えないということです。

また、多細胞生物につながる真核細胞の進化過程では、「アーキア」という微生物の細胞内にバクテリアが取り込まれて共生していたことが確実視されています。しかし、全生物の歴史の中で一度しか起きていない。つまり特別な環境下で偶然起きたイベントの結果かもしれないということです。

多細胞生物への進化も偶然の産物だったのかの検証は、多くの研究者にとって熱いテーマです。しかし、「歴史にifはない」という通り、本当のところはやはり分からない、という点が面白いですよね。

小埜 生物進化を巻き戻すと別の生物が進化するいう、グールドの主張は「進化は一度きりの歴史である」という意味ではその通りだと思います。一方で、厳密な選択圧(淘汰圧)の中に同一の遺伝型や表現型を晒すと、定方向の進化が繰り返し観察されるケースも報告されています(2)。

ですから、「歴史が再現できない」というのは、厳密には「同じ環境は二度とあり得ない」という意味だと思います。しかし、今ある社会構造は必然ではなく、偶発的な要素が多分に含んで形成されているという点は大切な視点です。

自然科学研究に対する影響

小埜 最後に 『万物の黎明』の自然科学研究に対する影響を考えてみたいと思います。

アリ、ハチ、ヒトなど、生物にも社会形成する種が沢山ありますが、単細胞生物からすると、多細胞生物は組織立った細胞社会として生きていると見ることができます。役割分担することで、個体や細胞は集団や個体の生存率(適応度Fitness)を高めるという意義があります。言い換えると集団内に同じ機能しか持たない細胞塊は、機能分化した細胞集団に比べると集合しているメリットを生かせていません。

シロアリですら農業(キノコ栽培)しているという報告があります。「集約的食糧生産」としての農業は、規模の大きな集団の維持に効果的である。それゆえに収斂して何度も出現しているのかも知れません。

しかし、現存する生物種の中には食料生産しない集団が多く存在するので、食物連鎖中に自らのニッチを見つけることができれば、必ずしも食料の自給自足は必要ではないように思います。

ただし人間の場合は食糧生産を放棄しても輸入できる状況が永続的(あるいは自分が生きている間)に続くだろうという希望的(あるいは利己的な)観測が前提にあるように思います。

実際にはグローバルな社会では食料生産を誰かが引き受けないと国家的な飢餓に窮する脆弱な状況です。特定の国家のヒューマンエラーで大規模に人口調節される...そんな日が到来ないことを願っています。

松田 世界全体を国家が覆っているので、「移動し、離脱する自由」を行使するための外部はもうありません。だからこそ、社会の破綻を防がなくてはなりません。

『万物の黎明』の最後で、平等な社会では実力者が社会的な弱者を庇護してきた点、つまり平等な関係の中に非対称性(支配と被支配)が生まれるメカニズムについての指摘がありますが、それ以上詳しくは述べられていません。グレーバーがその先に何を見ようとしていたのかをよく考える必要があります。

このテーマは、日本中世社会を王朝と結びついていた社会的弱者の聖性が失われ、被差別民となっていく画期として描いた網野善彦の仕事に通底するように思えます。しかし、網野も聖性が失われるメカニズムまでは述べていません。

このテーマをおそらく深掘りするはずだった、グレーバーの次回作が読めなくなってしまったことが残念ですが、彼に続く研究者が日本からもぞくぞくと出てくるのではないかと思っています。

小埜 集団の定住、巨大化に伴う社会階層化、そしてその構造維持には農業に加え、宗教も深く関わっていると思います(3)。そして遂にはブルシット・ジョブを生み出すに至った現代社会を脱出不能の「万物の薄暮」としてではなく、そうではない社会のありようを考えていく時期にきています。

自然科学に携わる私たちに大いなる刺激と勇気を与えてくれた『万物の黎明』は、サイバースペース内でエッセンス化された情報がすさまじいスピードで大量消費されている現代の社会人にこそ読んでほしいと思います。本書が無批判に受け容れられている「神話」を再考するきっかけになることを願っています。手に取ると怖気付いてしまう質量が難点ですが、読む価値はあると思います。

また、本文中には青森の三内丸山遺跡や任天堂の「ゼルダの伝説」といった日本の事例が出てくることも最後に申し添えて、この対談を終えたいと思います。本日は、ありがとうございました。

【参考文献】
(1)『ワンダフル・ライフ──バージェス頁岩と生物進化の物語』(著) スティーヴン J.グールド(2000) 早川書房
(2)『生命の歴史は繰り返すのか?──進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む』(著)ジョナサン B.ロソス(2019)化学同人
(3)『宗教の起源──私たちにはなぜ<神>が必要だったのか』(著)ロビン・ダンバー(2023)白揚舎

https://www.newsweekjapan.jp/asteion/2024/08/4000.php


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドラマ「ゴールデンカムイ」は全話が異なるEDテーマに、ACIDMAN・[Alexandros]ら8組発表

2024-08-08 | アイヌ民族関連

映画ナタリー 2024年8月8日 8:00

上段左よりACIDMAN、[Alexandros]、&TEAM、神はサイコロを振らない。下段左よりGLIM SPANKY、THE SPELLBOUND、ストレイテナー、名無し之太郎。

野田サトルのマンガをもとにした映画「ゴールデンカムイ」の続編にあたる同作。金塊の在りかを示す暗号が刻まれた刺青を背負う囚人狩りが本格化し、それぞれの過去や信念が解き明されるさまが描かれる。山崎がアイヌが遺した莫大な埋蔵金を狙う元陸軍兵・杉元佐一、山田杏奈が杉元とともに旅をするアイヌの少女・アシリパを演じ、眞栄田郷敦、工藤阿須加、柳俊太郎、塩野瑛久、矢本悠馬、大谷亮平、高橋メアリージュン、桜井ユキ、勝矢、池内博之、木場勝己、大方斐紗子、井浦新、玉木宏、舘ひろしも出演する。

参加アーティストは[Alexandros]&TEAM神はサイコロを振らないGLIM SPANKYTHE SPELLBOUNDストレイテナー名無し之太郎。さらに映画版でも主題歌を担当したACIDMANが加わり、映画版の主題歌「輝けるもの」も使用される。各アーティストの楽曲名や、何話のエンディングテーマを手がけるかは後日発表される。

「連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―」は、10月6日よりWOWOWで放送・配信。演出は久保茂昭片桐健滋落合賢、佐藤洋輔、脚本は黒岩勉が担当した。

※山崎賢人の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
※柳俊太郎の柳は木へんに夘が正式表記
※片桐健滋の片は旧漢字が正式表記
※アシリパのリは小文字が正式表記

連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―

WOWOWプライム、WOWOW 4K、WOWOWオンデマンド 2024年10月6日(日)22:00~ 放送・配信
※全9話

https://natalie.mu/eiga/news/585513


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本の「文様」に世界から熱視線!ドキュメンタリー「フィシスの波文」8月再上映 フレッド・フリス音楽メイキング映像特別上映も

2024-08-08 | アイヌ民族関連

映画.COM 8/7(水) 17:00

 写真家・映像作家の茂木綾子監督が、古くから現代に至るまで人と自然の関わりを映してきた日本の「文様」に迫ったドキュメンタリー「フィシスの波文」。サンフランシスコ、ストラスブール、ロンドンでの上映が好評を博し、8月17日~30日の期間限定で再上映される。

 再上映を記念して各界のゲストによる9日間連続トークイベントを開催。また、特別企画として、土曜日の上映回では本作の音楽を担当しているフレッド・フリスのメイキング映像(14分)を同時上映する。

 サンフランシスコ・ユング研究所、IAAP国際分析心理学会(学会映画賞メルクリウス賞を受賞)、ジャパン・ハウスロンドンでの上映で好評を博した本作は、和紙に文様を手摺りする唐紙を400年にわたり受け継いできた京都の工房「唐長」の手仕事の現場をはじめ、葵祭や祇園祭などの祭礼や寺社・茶事の空間に息づく文様、1万年前にイタリアの岩壁に描かれた線刻、古代ローマの聖堂を飾るモザイク、北海道のアイヌの暮らしに受け継がれる文様などをたどり、文様とその源となった自然の様を丁寧に映し出す。

 唐紙に注目するエルメスのアーティスティック・ディレクターのピエール=アレクシィ・デュマや、ミナペルホネンのデザイナー・皆川明、造形作家の戸村浩ら現代のアーティストたちも出演。タイトルにある「フィシス」は古代ギリシャ語で「あるがままの自然」を意味する言葉で、日本の「自然(ジネン)」にも通じる。

 8月17日~30日シアター・イメージフォーラムで再上映。

▼トークイベント一覧

8/17(土)~25(日)午前11:00

※フレッド・フリスの音楽メイキング映像14分を本編上映の後、8/17 (土)・24(土)の2日間特別上映 (初上映)

8/17 (土) オノ セイゲン(録音エンジニア・作曲家)

8/18 (日) 鶴岡真弓(芸術人類学者)

8/19 (月) 中野民夫(東京工業大学名誉教授・ファシリテーター)

8/20 (火) 河合早苗(映画プロデューサー)

8/21 (水) 茂木綾子(映画監督 ※本作監督)

8/22 (木) 藤枝守(作曲家)

8/23 (金) 吉原悠博(写真館六代目館主・美術家)

8/24 (土) 高橋キンタロー(アーティスト・キュレーター)

8/25 (日) 皆川明(デザイナー / mina perhonen 設立者) ※「mina」の「a」は、正しくはウムラウト(aの上に点が二つ)で記載。

https://news.yahoo.co.jp/articles/bede1dfcee517a2227862f06deefc834852d6eb3


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アマゾンの不思議な家族関係 虐待も不倫もないわけは?

2024-08-08 | 先住民族関連

時事通信8/7(水) 14:00配信

 アマゾンの熱帯森林保護支援活動に30年以上関わり、2000日以上を先住民と共に過ごした熱帯森林保護団体(RFJ)代表の南研子さん。昨年は新型コロナ禍後に初めてアマゾンから帰国し、子ども向けの著書「アマゾンの不思議な森へようこそ」を出版しました。アマゾンの不思議な家族関係について南さんに話を伺います。

 (聞き手・文 海原純子)

カヤポ族カポト村人と

 海原 著書を読ませていただきました。私たちの多くは全く想像もつかないような緊張感のある、でもわくわくするようなアマゾンの暮らしがつづられています。見たこともない動物、毒蛇や毒グモ、巨大なピラニア、サソリ、呪術師、森の精霊の話など、お金も文字もない世界が生き生きと語られていて、子どもだけでなく大人も一気に読んでしまう本だと思いました。今年の夏休みの推薦図書になったんですよね。

 南 日本では小中高生の自殺が513人(2013年)に上っています。アマゾンでは、自殺などないし、うつも認知症も寝たきりもない。子どもの自殺なんて考えられません。

 海原 子どもの自殺は4、7、10月が多いのです。背景にあるのは学業の不安、虐待やいじめなどとされています。夏休みの後に不登校になるなど問題が多いです。アマゾンでは子どものいじめや親からの虐待はないということですが。

 ◇いまだに分からない家族関係

カヤポ族の少女マイラと

 南 私は30年以上アマゾンと関わっていますが、いまだにここの家族関係は分からないんですよ(笑)。というのは、ここの家の子どもだと思っていたら1カ月後になると、別の家でご飯を食べて一緒に暮らしている。「え~、どうなってるんだろう」と。要はどこの家にいてもいいんです。「どこの子」という囲い込みはなく、「みんなの子ども」という意識です。子どもが生まれると3カ月は母親が抱きかかえて育児します。でも、それを過ぎると、村人全員が自分の子どものように赤ちゃんに接し、あやしたりします。だから小さい頃から村人全員と関わりがあるんです。

 海原 それはすごいですね。

 南 親にしても自分の子だからすべて気が合うわけじゃないですよね。中には相性が悪い親と子もあるわけです。親が虐待したくなる場合もあるかもしれない。だから、子どもが「この家は居心地が悪い」と思ったら、別の家で暮らしても問題はないんです。みんなの子どもだから。

 海原 それは選択肢があり、居場所ができて子どもにも親にもいいですね。「子どもは社会の子」という意識は日本では建前では語られますが、自分のことになるとだめなことが多い。最近は同級生の家を放課後に訪ねたり、友達の家でおやつをごちそうになったりするのも禁止という風潮があります。ところで、夫婦間のけんかは起きないんですか。

◇不倫は起きない

カヤポ族長老ラオーニと(2023年)

 南 それは長年、一緒にいると互いに飽きちゃうこともある(笑)。でもそんなとき、みんなで話し合う場があるんですよ。「男の家」という会議場のような場があります。そこでうちの夫婦は互いに飽きちゃったという話をすると、ほかの家でも同じようなことがあり、じゃあ、ちょっと夫婦を交換しましょうか、というようなことも起こるのです。

 とにかく、基本はうそがない、隠し事がない、ということなんです。これは他のことでも同じで、物事を決めるときすぐに多数決ということはせず、徹底的に話し合う。時には大げんかになることもあります。でも、とことん話し合うので反対意見の人も自分の意見を抑え込まず「全部伝えた」という満足感があるし、賛成意見の人も反対する人がなぜ反対なのかの理由を理解できます。ですから後腐れがない。

 海原 忖度(そんたく)やうそがないというのは素晴らしいですね。日本社会のストレス要因は、嫌でも我慢して自分の気持ちを表現できないことが根底にあります。しかし、互いに飽きたことの解決策は斬新というか、不倫防止策というか、びっくりです。

 ところで、いじめや差別がないというのは理由があるのでしょうか。日本だと、みんなと同じではないということ、孤立したり、いじめられたりすることが問題になっています。

 ◇死のリスクもある過酷な通過儀礼

正装したヤワラピチ族の長老2人と

 南 大きな要因は「通過儀礼」があるからだと思います。アマゾン先住民族の大人になるための通過儀礼は厳しいものがあります。女の子は初潮があると、その後1年間は家の隅に小さな空間をつくり、その中で一人で誰とも話さず、外に出ないで過ごします。家族と話すことも禁止です。食事は家族が囲いの近くに置いておきます。一人で孤独に耐え、ものを考える時間を過ごすのです。1年以上、外に出ないので肌は白くなり髪も伸び放題になります。この期間が終わると「儀式を無事に終えた」として祝福されます。

 海原 それは厳しいですね。男の子も通過儀礼がありますか。

 南 男の子の場合は、13歳くらいで過酷な儀礼があります。強い毒性のある薬草を煎じた飲み物を飲むのです。毒により強い幻覚が出て、場合により死んでしまうこともあるのですが、これを生き延びると大人として認められます。過酷ですが、これを通過したことで表情も変わります。こうした過酷な通過儀礼を生き延びたことで全員に平等感があるのです。誰が上、誰が下、ということではなく全員が同じラインに立っている。

◇それぞれが自分の居場所

 海原 身体的なハンディキャップがある人もいるのでしょうか。

 南 はい。どこの部族にも障がいがある数人がいます。耳が聞こえない、手足が不自由というようなことです。また、人と話をすることができず自分の世界に引きこもるような人もいます。ただ、そういう人はものつくりが上手だったり、子守が素晴らしくうまかったりして周りから頼られています。狩りの才能がある人もいます。ちゃんとそれぞれが自分の居場所を持ち、感謝され尊厳を持って生きています。

 海原 通過儀礼を乗り越えたという事実でみな平等になるのですね。先進国と言われる国の問題をいかに解決していくかのヒントがあるアマゾン先住民の人たちの暮らしですが、アマゾンも熱帯雨林が次第に伐採され畑に変わっていると聞きます。

 南 一番大事なことは他と比べないことです。そこに優劣もつけない。

 あるがままを尊重しているインディオの社会ですが、現在、猛スピードで開発が進み、森が消失の一途をたどっています。酸素供給源のアマゾンの森が残るように支援活動を頑張ります。(了)

南研子さん

 南研子(みなみ・けんこ)特定非営利活動法人 熱帯森林保護団体(Rainforest Foundation Japan: RFJ)代表。70年女子美術大学卒業。大学卒業後、NHKテレビ「ひょっこりひょうたん島」などの美術制作を担当。89年、英国の歌手スティングが行った「アマゾンを守ろう」というワールドツアーにてカヤポ族長老ラオーニと出会い、同年5月に当団体を設立。92年から19年まで34回にわたり、アマゾンのジャングルで先住民と共に暮らし、多岐にわたり支援活動を行っている。延べ滞在日数は2000日を超える。著書に「アマゾン、インディオからの伝言」(ほんの木)、「アマゾン、森の精霊からの声」(同)、「アマゾンの不思議な森へようこそ」(合同出版)がある。

https://news.yahoo.co.jp/articles/492cfa1f7b0428b381b622b27454a138ebe3b581


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする