先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

日高山脈襟裳十勝国立公園 地域振興へ期待と課題 日高管内の関係者に聞く

2024-06-26 | アイヌ民族関連

聞き手・加藤敦 、聞き手・石井純太 、聞き手・山田智 、聞き手・和田樹 有料記事

2024年6月25日 18:50(6月25日 19:10更新)

 日高管内の7町を含む、陸域の面積では国内最大となる日高山脈襟裳十勝国立公園は25日、国から指定が告示され、正式に誕生した。新ひだか町の旧JR静内駅では管内の首長らが集まり、横断幕を掲げ記念撮影をして祝った。管内の自治体、観光、登山、自然保護の各界の関係者に、新国立公園誕生の喜びや期待、課題を聞いた。

■高山植物の今知って アポイ岳ファンクラブ会長・田中正人さん(67)=様似町

 アポイ岳は国立公園エリア内では気軽に登れる山です。温暖化や土壌の乾燥で高山植物は大きく減ってしまいましたが、それでも春や夏には楽しめるので多くの人に来てもらい、花を見るとともに現状も知ってほしい。

 ファンクラブ会員は、登山道が荒れないようボランティアで整備しています。国立公園化で、行政がもっと関わってくれるといいのですが。

■地域ごとの発信必要 沙流川愛クラブ事務局長・平村徹郎さん(51)=平取町

 私たちが取り組んでいる自然保護に加え、いかに地域ごとの魅力を発信できるかが課題です。

 海側と山側、日高側と十勝側とで、山への思いが異なる側面がある。平取では山々の景観に加え、アイヌ民族と強い結びつきがあるという文化的な価値が重要です。たくさんの関係者の声に耳を傾け、広い視野での保護、利用の取り組みが必要と考えます。

■安易な登山、事故懸念 平取町山岳会会長・山木正生さん(55)

 待ちに待った国立公園化ですが、インバウンドのほか初心者を含む登山客の増加は間違いありません。幌尻岳をはじめ難関の山への安易な登山で事故が増えないか懸念しています。

 ・・・・・・・

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1029422/


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別海ゆかりアイヌ語通訳・加賀伝蔵の半生紹介 町郷土資料館でパネル展

2024-06-26 | アイヌ民族関連

森朱里 有料記事

北海道新聞2024年6月25日 18:23(6月25日 18:34更新)

絵本「アイヌ語通辞(通訳)加賀伝蔵物語」のパネル展

 【別海】町郷土資料館は、絵本「アイヌ語通辞(通訳)加賀伝蔵物語」のパネル展を7月19日まで加賀家文書館(別海宮舞町)入り口付近で行っている。

 絵本は江戸時代末期に野付半島などでアイヌ語通訳を務めた加賀伝蔵の半生をまとめたもので、町図書館や町生涯学習センターなどで閲覧できる。展示パネル12枚で、絵本の見開き2ページを拡大した。伝蔵がアイヌの人々と共に畑を耕す場面や、学問を教える場面などのイラストが目を引く。

・・・・・

 見学には通常の入館料350円が必要で、高校生以下は無料。問い合わせは同資料館、電話0153・75・0802へ。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1029395/


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桜木紫乃さん新刊「谷から来た女」 アイヌ民族像 自らに問う

2024-06-26 | アイヌ民族関連

中村公美 、大沢祥子 会員限定記事

北海道新聞2024年6月25日 10:2

「谷から来た女」 (文芸春秋 1870円)

 作家桜木紫乃さんが、アイヌ文様デザイナーを主人公にした小説「谷から来た女」(文芸春秋)を刊行した。桜木さんは「デビューしたころからずっと書きたかったテーマ。小説家として原点回帰の作品」と強い思いを明かす。

 主人公の赤城ミワはアイヌ民族で、彼女を軸に6編の物語が展開する。舞台は札幌や日高管内平取町の二風谷など。ミワと出会う人々は恋愛関係、友人などそれぞれ立場は異なるが、ミワの気高さに触れ、それぞれ心に痛みを感じていく。

 釧路市出身の桜木さんは「アイヌ民族という人が周囲にはたくさんいて、それは普通のことでした。ならば、私は本当に意識していなかったのか。それを問い直したかった」と振り返る。

 だが、作家デビュー後、何度もチャレンジしては書きあぐねていた。

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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1029200/


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<平取>二風谷アイヌ文化博物館の新しい学芸員 守屋李佐子さん(24)

2024-06-26 | アイヌ民族関連

石井純太 有料記事

北海道新聞2024年6月25日 9:24

守屋李佐子さん

4月から町立二風谷アイヌ文化博物館に勤める学芸員。「先住民の視点で展示方法を改めて考え、より良いものにしたい」と話す。

 東京生まれ名古屋育ち。名古屋外語大2年時に授業で平取町や白老町を訪れ、抽象的なクマの木彫りを見て驚き、アイヌ文化に関心を持った。卒業後は北大大学院でアイヌ民族の先住民学を学んだ。

・・・・・

 ※「アットゥシ」の「シ」は小さい字

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1029158/


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アフリカ先住民とアイヌ民族の交流を計画 西原智昭(にしはら・ともあき)さん

2024-06-26 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2024年6月25日 9:05

 南米アマゾンに次ぐ規模の熱帯林が存在するアフリカのコンゴ川流域。長い間、森の中で暮らしてきた先住民族を札幌市などに招待し、アイヌ民族らと交流する事業に向けて準備を進めている。

 「われわれの直接の祖先と同様、熱帯林の中で暮らしてきたアフリカの森の民は、人類の生き方の原型を残している。だが資源や森林の開発、農場や牧場の拡大などによって熱帯林の破壊が進み、彼らの暮らしが脅かされている」と訴える。

 京都大で人類学を学んでいた1989年以降、2019年までの30年間、コンゴ共和国やガボンでの森林保護プロジェクトや調査研究に取り組んだ。野生生物の生態に詳しく、現地の言葉も流ちょうに話す。

・・・・・・・

(共同)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1029153/


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国交省北海道局長に柿崎氏 開発局長は坂場氏 

2024-06-26 | アイヌ民族関連

鈴木孝典 、本庄彩芳 有料記事

北海道新聞2024年6月25日 4:00

 国土交通省は24日、次の北海道局長に柿崎恒美開発局長(58)を充てる人事を固めた。後任の開発局長には、坂場(ばんば)武彦大臣官房審議官(58)=北海道局担当=を起用する方針。橋本幸北海道局長(59)は退任する。いずれも7月上旬に発令する見通しで、近く発表する。

 ・・・・・・

 北海道局長は旧北海道開発庁出身者が2代連続で就いており、旧建設省出身者の起用は4年ぶりとなる。近年、道内でも増加傾向の気象災害に備える防災・減災対応や脱炭素化社会の実現、来場者数が伸び悩む胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の誘客などが課題となる。

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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1029001/


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【申込者募集】ウレㇱパウタㇻ(育てあう仲間たち)~カルチャーナイト2024~

2024-06-26 | アイヌ民族関連

札幌大学 2024年6月25日 

令和6年7月19日(金)、認定NPO法人カルチャーナイト北海道(カルチャーナイト実行委員会)主催の「カルチャーナイト2024」の「ウレシパ ウタラ」プログラムを本学で開催します。

本イベントは、札幌市内全域の公共施設や文化施設、企業施設を一夜限り開放し、各施設の特色を活かした文化プログラムを地域の方に楽しんでいただくものです。
本学は、2014年度から本取組に参画しており、今年度は本学教育の特色の一つであるアイヌ文化をテーマにプログラムを展開予定です。
当日は、大学施設にあるシマフクロウの木彫やアイヌの伝統的な住居「チセ」などを本学の本田優子教授が解説しながら、施設をご案内するほか、ウレシパクラブ所属の学生によるアイヌの歌や舞踊を披露します。また、来場者の皆さんにも簡単な舞踊の体験をしていただきます。
なお、お申込みは先着で受付けています。この機会にぜひ札幌大学の魅力をご堪能ください。

プログラム名

ウレシパ ウタラ(育てあう仲間たち)

内    容

札幌大学ウレシパクラブはアイヌ文化を学ぶことを通じてアイヌと和人が育てあい(ウレシパ)、それを発信することを目的に2010年に設立した団体です。

札幌大学を会場に歌や舞踊を披露することに加え新たな試みとして来客者の方々に簡単な舞踊の体験をしていただきます。

タイムスケジュール

令和6年7月19日(金)

17:45~     受付開始

18:00~18:30 施設ツアー

18:30~19:00 アイヌの歌や舞踊の披露

会    場

札幌大学

定    員

先着30名

入 場 料

無料

(事前申込必須!)

下記URLにアクセスし、必要事項を入力ください

URL:https://forms.gle/RRE9S7jDRwKUGZoG8

電話:011-827-5877

※締切:7月18日(木)17:00まで

※定員になり次第、受付終了です

※参加者の最終確定は後日メールで通知します

※フォームからの申込が難しい場合は電話でお申し込みください

駐車場・受付場所

駐車場・受付場所map

問い合わせ先

札幌大学 地域連携センター
TEL:011-827-5877

https://www.sapporo-u.ac.jp/news/lecture/2024/06250115.html


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【北海道白糠町】今秋公開!映画『シサㇺ』の舞台裏撮影を支えた町の人々だけが知る、制作秘話を初公開!

2024-06-26 | アイヌ民族関連

北海道白糠町 2024年6月25日 11時00分

2024年9月13日に公開される映画『シサㇺ』は、アイヌと和人の歴史を壮大に描いた歴史スペクタクルです。この映画の多くは白糠町で撮影され、町民の皆さんがさまざまな形で関わっています。公開を前に、映画を陰から支えた白糠町の人々にお話を伺いました。町全体が一丸となって作り上げた映画『シサㇺ』の制作秘話や、現場の雰囲気、アイヌ文化にまつわる興味深いエピソードなどをたっぷりとお届けします。

▶白糠町note  https://note.com/_shiranukacho/
今観るべき映画『シサㇺ』のストーリー

江⼾時代前期。北海道の南⻄部に位置する松前藩は、アイヌとの交易品を主な収入源としていました。松前藩の藩⼠の息⼦、孝⼆郎(寛⼀郎)は兄、栄之助とともにアイヌとの交易で得た品を他藩に売る仕事をしていました。ある夜、使⽤⼈の善助の不審な⾏動に気付き、栄之助は善助に殺されてしまいます。兄の敵討ちを誓った孝⼆郎は善助を追って蝦夷地へと向かいますが、アイヌとの出会いを通じて、大切なことに気づいていきます。
白糠町の人々の反応は?熱気に包まれた試写会

完成した映画はいち早く白糠町の人々へと届けられ、2024年3月31日、白糠町社会福祉センターで行われた試写会には、町民や関係者約300名が集まりました。会場は熱気に包まれ、主演の平野貴大さんの軽快なトークで大いに盛り上がりました。

監督の中尾浩之さんからは、「脚本を読んで、この作品は今作るべきだと確信しました。町民の皆さんのおかげで無事に完成しました。本当にありがとうございました」と感謝の意が述べられると、観客からは「壮大な歴史の物語で、今を生きる私たちにも考えさせられる素晴らしい作品」と絶賛のコメントが寄せられました。
映画制作を陰から支えた白糠町の4人の人物

制作陣からは、「福祉課の全員に感謝していて、頭が上がらない。映画の恩人である」と言われるほど、映画制作に尽力した白糠町役場 保健福祉部介護福祉課。課長である吉田昌司(よしだまさし)さんにお話を伺いました。
吉田:アイヌのお祭りや施設、そして生活という部分では、福祉課が担当しているので、映画のことも福祉課で対応することになりました。我々は、映画の調整役といったところでしょうか。制作陣からの要望を可能にするためにはどうしたらいいか……と、あれこれ調整しました。例えば、アイヌの伝統的なマレク漁(独特な道具を使用して鮭を獲る)のシーンのために鮭を用意したり、エキストラが足りない分を職員で調整したり、毎日幅広く対応しました。撮影期間中は、役場の職員約180名が一丸となって手伝ったといっても過言ではないと思います。
地域に慣れていない人がたくさん撮影でやって来るということで、細かなお世話も福祉課で行いました。毎日のお弁当の配達はもちろん、商工会女性部、漁協女性部、農協女性部、女性ボランティアクラブの方々に頑張っていただき、現場での炊き出しも行いました。一番人気があったメニューは、ジンギスカン。現場もいい香りが漂って、とても喜んでいただけましたよ。

吉田:一番大変だったのが、ヨシという植物を刈ること。アイヌが住むチセ(家)のセットに使われます。「やれる人がやる」と決めて、通常業務を終えてからヨシを刈りに行きました。2022年の春から1年間かけて行った作業です。
町のいたるところに生えているものだったので、「映画のためだ、みんなでやるか!」という話になりました。しかし、いざやってみたら本当に大変でした(笑)。刈っても刈っても足りない。遠くから見るといっぱい生えているように見えるけど、近くに行ったらスカスカだったりして、やってもやっても追いつかないんです。
手作業でやっていたら、埒が明かない。草刈り機でやってみたら、絡まったり折れてしまったりでうまくいかない。結局、手作業に戻りました。
採ったあとには長さを揃えたり表面の皮を取り除いたりと、仕分け作業も待っています。最終的には時間が足りず、残念ながら全てを揃えることはできませんでしたが、セットの半分くらいは福祉課で揃えることができたと思います。

吉田:完成した映画を観て思うことは、今こそアイヌ文化を手本にしなければならない部分があるということ。人との関わり方や、食べ物も必要以上に獲らないとか。映画を観ると、地球にやさしい生活をしていたんだなということが分かると思います。
そもそも、映画のテーマにアイヌを取り入れてくれたことがうれしく、アイヌの人も実際に喜んでくれている。そして町自体も盛り上がったというのが、私の一番うれしいところです。白糠町には、『アイヌ文化活動施設 ウレシパチセ』や『白糠アイヌミュージアム ポコロ』といった、アイヌを学べる施設がありますし、この映画をきっかけにぜひお越しいただいて、アイヌの歴史に触れていただければなと思っています。

鋭い感覚で意見を出し、心から映画を愛した人物

プロット(ストーリーのあらすじ)の段階から映画に携わり、鋭い感覚でさまざま意見を出しながら、積極的に出演もしたというのが、白糠町役場 保健福祉部町民サービス課生活環境係の谷口加奈(たにぐちかな)さん。
谷口:当時のメールを見返してみると、ファンの感想のようで(笑)、プロットの確認というよりも感想を綴ったような内容です。映画を作っていく段階のものを見せていただくということは、なかなかできない経験なのでとても感激しました。
初期のプロットと脚本完成までの変遷を拝見させていただいたのですが、同じキャラクターでも、立ち位置や動きが大きく変わっていき、推敲を重ねていくことでより良いものが作られていくという過程を目の当たりにし、普段は見ることができない脚本家さんの努力の一端を知ることができました。

谷口:完成した映画も拝見しまして、主人公の孝⼆郎がこんな姿でこんな風に活躍しているのかと、とても感動しました。最終的に俳優さんたちの演技で肉付けされていき、こんなにも奥の深い映画に仕上がったのかと思うと、言葉では表せないほど感激しました。映画を作ると聞いたとき、“派手で壮大なエンターテインメント映画”といった華やかなイメージを受けたのですが、実際に完成した映画は、しっかり地に足のついた考えさせられる深い映画になったと感じました。

谷口:私もアイヌの女性役でエキストラ出演していまして、暗い川を松明で照らしています。このシーンでは、アイヌ独自のマレク漁というものを行うのですが、白糠町に住んでいながら自分も初めての経験でした。アイヌの方がやり方を教えてくださって、一緒に川に入って色々とお話することもでき、非常に貴重な体験になりました。
監督さんなどスタッフの皆さんは、撮影のため長期間白糠町に滞在していたので、町のことを褒めていただけることも多く、町民としてもうれしかったです。実は私の実家が町内で『はまなす』というレストランを営んでいて、「あのメニューおいしかったよ」と声を掛けていただくこともありました。我が町でスケールの大きなことがなされているというのも感激でしたし、地元の歴史に沿った内容になっているというのも、町にとっての大きな財産になると思います。
映画では、アイヌと和人それぞれに信じるものがあって、正しいと思うことをやった結果、争いが起きてしまいます。これは、現代にも通ずるものがあると思います。昔の話やフィクションとして観るのではなく、今の私たちの生活にも重ねて観ていただきたいし、おそらくご覧になった方々は、色々と感じていただけるのではないでしょうか。私は、この映画をきっかけに、アイヌの問題や関連のニュースにも興味を持つようになりました。この映画が、他のみなさんにとっても同様のきっかけになると信じています。

アイヌを未来に伝え続ける 映画のキーマン

この映画では、リアルなアイヌの生活を垣間見ることができます。その中でも興味深いのは、やはり「食」。当時のアイヌ料理を再現したのが、白糠アイヌ文化保存会 会長磯部惠津子(いそべえつこ)さんです。
磯部:実は、アイヌがテーマの映画を作ると聞いたとき、本当かな?と疑いました。正直、最初はピンと来なかったのですが、制作の方々が来てお話をしていくうちに、これは素晴らしいことだと思いました。私もせっかくアイヌに生まれてきたのだから、「残していかなければいけない、忘れられたら困る」と思っていたので、そういう意味で、この映画は大チャンスだと思いました。これは一生に残る記念すべき映画だと思います。なんといっても、ご先祖様が喜ぶと心から思いました。
映画では、再現料理の担当をしていますが、ふきの剥き方や鮭の捌き方にはじまり、かじか汁や、鮭のオハウ(汁もの)などを作りました。かじか汁っていうのは、魚自体に味があってお出汁もよく出ます。つまり、とてもおいしい。一度食べたら忘れられなくなる味なんです。この辺では、“鍋壊し”とも言われていて「もうなくなっちゃったか」と鍋の底を突っついてしまうので、そう呼ばれているんです。魚のどこの部位を誰が食べるかというのも、意味があり決まっています。映画の中で、かじか汁が出てきたらぜひ注目してみてください。

磯部さんと娘さん、そしてお孫さんと3世代に渡りエキストラ出演をしており、娘さんは、なんとセリフのある役だったのだとか!

磯部:料理もそうですが、映画にはアイヌの教えが散りばめてあって、それらの意味を事前に知っておくといいかもしれませんね。例えば鮭を獲ったあとに頭を叩くのですが、これにも意味があります。動物でも魚でも、獲ったら中途半端にしてはいけない。すぐに命をいただかないと苦しむでしょう? 命をいただいたからには、絶対に粗末にしないんです。それは昔からの教えです。また、鮭が獲れたあとに踊るのは、神様や命に対する奉納舞踊なんです。
そのほか料理以外にも、衣装のことや小道具のこと、刺繍の模様など、細々した確認やアドバイスなどもやっていました。約2か月間、映画のことばかり毎日やっていましたよ。
試写を観終わったあと、「すごくいい映画だな」と感じました。シサㇺという言葉は、アイヌ語で「よき隣人」という意味なのですが、この映画を日本全国の人に観ていただいて、アイヌはこうだよというのを知ってほしいです。アイヌは争わない。もし何か揉め事が起きたら、エカシ(長老)同士が三日三晩かかっても話し合い、そこに裁判官的な存在の人を立て「もうよし」というまで対話します。これは、アイヌ語で“ウコイタック”といって心から話し合うという意味。アイヌは言葉で戦うんです。そして、 困ったときは皆が助け合う。優しさ……というより、当たり前のことですよね。いつどこで何をしていても恥ずかしくない生き方をしなさいと教えられて私も生きています。これがアイヌの教えです。

磯部:キャストやスタッフさんは、皆さん仲良くしてくださって、撮影期間は、一緒に飲んだり食べたりして本当に楽しかったです。今は、白糠町に来てくれたキャストの方々の活躍を見るのがとてもうれしくて、まるで自分の子どもがテレビに出ているような気持ちになりますね。それがまた居酒屋などで話題になって、みんなで「昨日出たね」なんて盛り上がっています。撮影が終わっても、映画はずっと心の中で輝いています。

安全かつ円滑に。現場を守り抜いた正義の人

映画の企画から携わり、「アイヌと和人の橋渡し的な存在」と云われる白糠町議会議員の池村美博(いけむらよしひろ)さん。映画では企画やキャスティングにも携わり、映画の全てを知る人物です。 

池村:「いわれなき差別の誤解をなくそう」と、ボランティアで35年くらいさまざまな活動をしています。今回、アイヌを題材にした映画ということもあり、制作側にも学んでいただくべきことが多くありました。一緒に道内を回ったりしてアイヌを正しく知っていただき、いよいよ撮影開始というところで、新型コロナウイルスが世界的に大流行し、制作がストップしてしまいました。しかし、そのため制作陣の勉強時間がすごくできた。脚本家の尾崎将也さんは、何度も書き直して大変だったと思います。そういった経緯もあって、映画の完成までに5年かかりました。だからこそ、思い入れがあります。
実は、映画の題字や、エンドロールに流れるキャストの名前も私が書いています。アイヌは文字を持たないため、日本語として読めるけどアイヌ文様に見えるようにという難しい発注でしたが、自分で編み出して書きました。文字に魂を入れて書いています。

池村:映画の撮影でとても大変だったのは、熊の存在です。山の中で撮影をしたので、当然熊が出没する可能性が出てくる。実は、台本の最後のページには、“熊が出たときの対処法”が書かれています。
猟友会の方にお願いしようと思っていたのですが、日没になったらもう鉄砲を撃つこと自体が禁止。そのタイミングで帰っちゃうんです。夏だったとしても17時までですね。
キャストやスタッフが100人現場の山の中に入ったとして、撮影の終了がだいたい20時。まず俳優さんが帰って、残り80人。21時くらいになったらようやく半分くらい帰る。ただ、大道具さんは最後まで仕事があって残っているんです。どうしても最後の10人とか5人とかが危ない。というのも、熊は人が多くいるところには出ないから。当然、最後はライトとかもなくなるわけで、周囲は真っ暗。時間にすると、21時から22時がとても危ないんです。
ならばということで、私が熊の対策をしました。ライトのついたヘルメットをかぶり、手には懐中電灯。笛と大きなナタを持ち、警棒も持参。そして爆竹も用意しました。その姿を見た農家の人に、「熊退治にナタ!?金太郎じゃあるまいし!なんぼ強くても無理でしょう!」と大笑いされました。しかし、誰かがやらないといけないんです。正直、ストレスはすごかったです(笑)。結局、熊は出ずに終わったので、本当によかったです。

池村:日本の中で、「アイヌ」という言葉を知っている人はいても、その歴史や文化まできちんと知っている人は、1割くらいしかいないんじゃないかな。9割の人は知らない。「で、実際アイヌってどうなんですか?」という感覚なのではないでしょうか?この映画では、私やアイヌ、そして監督や脚本家がじっくりと語り合いながら、アイヌの文化も丁寧に描いています。自然を大切にすること、必要以上に獲らないこと、みんなで分け合って助け合って生きていくこと。今、SDGsへの関心が高まっていますが、アイヌがとっくの昔にやっている。とても素敵な文化ですよね。映画としては、歴史スペクタクルになりますが、同時にアイヌ文化の入門編という役割になったらいいなと思っています。
この映画を通して、アイヌの文化や知恵など世界中の人に興味を持ってほしいなと願っています。今回、町全体がイオル(アイヌの伝統的⽣活空間)という考えの下、町中が一丸となって頑張りました。白糠の町で映画の世界を体験していただけるようなことも企画中です。映画を観終わったら、ぜひ聖地巡礼も楽しんでいただきたいと思っています。
今の時代に観るべき、壮大な歴史スペクタクル映画
『シサㇺ』 2024年9月13日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

監督:中尾浩之  脚本:尾崎将也
出演:寛一郎 / 三浦貴大 和田正人 坂東龍汰 平野貴大 サヘル・ローズ 藤本隆宏 山西惇 佐々木ゆか 古川琴音(特別出演)/ 要潤 / 富田靖子 / 緒形直人
制作プロダクション:P.I.C.S. 配給:NAKACHIKA PICTURES  

PG12 ©映画「シサム」製作委員会
HP:sisam-movie.jp
X (旧Twitter) :sisam_movie

▶白糠町note  https://note.com/_shiranukacho/

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000126577.html


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[イベント]支笏湖夏まつり~第74回支笏湖湖水まつり~

2024-06-26 | アイヌ民族関連

かわたびほっかいどう2024.06.25公開

(画像: 国立公園支笏湖運営協議会提供)

アコースティックギター演奏やアイヌ古式舞踏など各種ステージ行事を始め、環境にやさしい自動車の展示や電動バイク試乗体験など、国立公園支笏湖の素晴らしい自然環境を表現したまつりとなっています。
会場では、6月に釣りが解禁されたばかりの「支笏湖チップ(ヒメマス)の塩焼き」を数量限定で販売しますので、ここでしか味わえない支笏湖グルメをご堪能ください。
爽やかな初夏の支笏湖に是非お越しください。

◎日時:2024年6月30日(日)11:00~16:00
◎場所:千歳市支笏湖温泉湖畔園地

パンフレットのダウンロード→こちら

会場のマップコード:867 063 329*72

開催日程

2024年6月30日 11:00 – 16:00

会場

千歳市支笏湖温泉 湖畔園地

お問い合わせ

国立公園支笏湖運営協議会

TEL

0123-25-6152

URL https://www.welcome-to-chitose.jp/archives/12042.html

https://kawatabi-hokkaido.com/%3Fevent%3D26667


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大阪・関西万博 チリのパビリオンは「先住民の織物」テーマに ワイン楽しめるエリアも

2024-06-26 | 先住民族関連

8カンテレ6/25(火) 5:44配信

大阪・関西万博に参加するチリが、「先住民の織物」をテーマにしたパビリオンを出展すると発表しました。

南米のチリは来年の大阪・関西万博で、博覧会協会が建設して引き渡す「タイプB」のパビリオンを出展する予定で、現在、建設の準備を進めています。チリのパビリオンでは、先住民族から伝わる伝統的な織物を展示するほか、ワインなど、食文化を楽しめるエリアも設けるということです。

【チリパビリオン パウリーナ・ナサル代表】「(南北に長い)チリには様々な特徴があるので訪れた人に様々な面を知ってほしい」「日本人がパビリオンを訪れたらチリに行きたくなると思います」

博覧会協会は、パビリオンを出展する国の準備をサポートするため、25日から2日間、奈良県で国際会議を開催する予定です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6509df73b4336261dcacb6a7f1a31f9b17ccfe68


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日本、ユタ州への放射性廃棄物輸出で告発される

2024-06-26 | 先住民族関連

アラブニュース 25 Jun 2024 02:06:20 GMT9

東京:東京に拠点を置く原子力市民情報センターは、日本が現在、精製・処分される放射性廃棄物を米国に輸出していると指摘した。

同センターが月曜日に発表した声明によると、日本原子力研究開発機構(JAEA)は、米国で稼働している唯一のウラン製錬施設であるユタ州のホワイトメサ工場に、約136トンのウラン鉱石とウランを吸収したイオン交換樹脂を輸出する計画を進めているという。

放射性物質は東濃地科学センター(中部)と人形峠環境技術センター(西日本)に保管されていた。

グランドキャニオン・トラストというNPOが、5月16日にホワイトメサ工場の航空写真を撮影したところ、JAEAのコンテナと思われるものが写っていたと報告した。船荷証券によると、この貨物を積んだ貨物船は16日にワシントン州に到着した。これまでのところ、JAEAはこの積荷について何も発表していない。

輸出された物質は、日本のウラン鉱山の研究開発の過程で生産されたもの。精製後も99.5%以上がスラグとしてホワイトメサ工場に保管され、約70%の放射能が残ると同センターは報じている。

日本が負担する費用は1億8900万ドルである。日本は2005年にもホワイトメサ工場に約500トンのウラン汚染土を輸出している。

ホワイトメサ工場は、先住民の聖地ベアーズ・イヤーズ国定公園に隣接し、ユート族のホワイトメサ・コミュニティに隣接している。

同センターは「すでにこの問題で苦しんでいる先住民族に、日本の放射性廃棄物を押し付けることは絶対に容認できない。私たちは原子力機構によるこの非道な行為に強く抗議する」と述べた。

https://www.arabnews.jp/article/japan/article_122674/


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「多くの先住民が捕えられ2度と帰らなかった」迫害の歴史が作った「藁の島」に東出昌大&ひろゆき驚き「生きようとする気持ちってすごい」

2024-06-26 | 先住民族関連

ABEMA TIMES 2024/06/25 18:00

 ペルーとボリビアにまたがるチチカカ湖では、藁でつくられた島に家を建て、生活を送る人々がいる。“藁の島”誕生の背景にあるのは、インカ帝国時代のスペイン人による侵略。迫害から逃れ、「生きたい」と願った先住民に、東出昌大とひろゆきが思いを馳せる場面があった。

【映像】東出&ひろゆきが宿泊した「藁の島」のホテル

 6月23日、『世界の果てに、東出・ひろゆき置いてきた』がABEMAにて放送された。ペルー南部で迎えた南米旅13日目。一行は太平洋に面するカマナからバスを乗り継ぎ、チチカカ湖のほとりの街・プーノへ移動した。ひろゆきはこの日、島に宿泊したがっていた東出のために、チチカカ湖の島宿を予約。宿があるウロス島へ渡るため、一行はプーノの港を目指し、タクシーに乗り込んだ。港に到着した頃、すでに周囲は暗くなり始めていた。標高は富士山よりも高い約3800m、気温8度。東出とひろゆきは暖かい服装に着替え、宿の船が迎えに来るのを待った。

 一行を乗せた船は、雨が降るなかウロス島へ向けて出発した。船が進むに連れ、天気はさらに悪化。多発する稲光を遠くに眺め、寒さに凍えながら、ウロス島に到着した。そして、島に降り立った東出とひろゆきは「全然かたくない!フワフワしている」「おお~!藁だわ」と口々に驚きを語り、「これ大丈夫?だいぶ沈み込むんだけど…」と不安げな声も。ここチチカカ湖では、藁を束ねてつくられた浮島に、多くの家が点在しているのだ。

 「なぜこの島に住もうと思ったの?」。ひろゆきはこの日宿泊する宿の男性オーナーに、気になる質問を投げかけた。すると男性は「その理由はコンキスタドール(スペインの侵略者)の時代にさかのぼります」と切り出し、“藁の島”が誕生した経緯を次のように語った。

「インカ帝国はさまざまな南米の民族を統治していましたが、スペインの侵略ですべてが変わりました。スペインの侵略者は多くの先住民の男を捕らえました。国王に送る金銀などの鉱山で働かせるためです。しかし多くは2度と家に戻ってきませんでした。そこで湖にボートを浮かべ、逃げてきたのです」

 さらに男性は、藁の船の模型を見せながら「浮島は元々こんな形でした。1つの船に1家族ずつ家をつくって住んだのです」「1年中、湖を転々と逃げながら暮らしたのです」と説明。ウロス島は、人々の「生きたい」という強い想いがつくり出したものだったのだ。この話を聞いた東出は「生きようとする気持ち、すごいですよね。人間の根源的な」としみじみ語り、心を動かされた様子だった。

 チチカカ湖に浮かぶ島・諸島の数は、約30。今回、東出とひろゆきが訪れたウロス諸島では、約140の浮島に3000人以上が暮らしている。今も多くの先住民が、過酷な環境下で生活を送るペルー。同国のこうした側面にも触れ、番組はエンディングを迎えたのだった。

https://news.goo.ne.jp/article/abematimes/trend/abematimes-10131687.html


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100自治体が「地元の偉人」をマンガ化。100冊の偉人マンガをHPで無料公開

2024-06-26 | アイヌ民族関連

公益財団法人B&G財団2024年6月25日 11時50分

100自治体が「地元の偉人」をマンガ化。学校授業や市民講座・観光案内などに活用。

第3期マンガが完成、7月1日から100冊の偉人マンガをHPで無料公開。

サイトURL:https://www.bgf.or.jp/bgmanga/ ※7⽉1⽇11時から第3期マンガを公開。

 公益財団法人B&G財団(https://www.bgf.or.jp/)は、2021年度から3ヵ年にわたり全国100自治体・100冊の「ふるさとの偉人マンガ」制作を支援しました。

 完成したマンガは、昨年度までに250校以上の小中高校の授業に使用され、13万人以上の児童・生徒の郷土学習・キャリア教育に活用されています。また、マンガは市民の文化講座、観光の案内資料等としても活用が広がっています。

 7月1日11時から第3期マンガの公開が始まります。偉人の活躍した時代・分野・読後感想などによる検索機能、選んだマンガに基づくリコメンド機能、読者によるマンガ評価等で、「マンガ選び」ができます。

 注目のラインアップは、柔道家古賀稔彦、遣欧使節支倉常長、老中田沼意次、英雄ヤマトタケル、写真家土門拳、美術家岡倉天心、詩人北原白秋、建築家丹下健三、出光興産出光佐三のような「誰もが知る有名人」。

 アイヌ神謡集知里幸恵、法学者加藤正治、登山家加藤文太郎、武将菊池武光、新聞日本陸羯南、彫刻家平櫛田中、武将長連龍、講道館四天王徳三宝、ニッポン号世界一周飛行中尾純利のような「その分野のレジェンド」。

 たまごパック、国産カレー粉、東京タワー、あんぱん、花笠音頭、北海道米ゆめぴりか、花王石鹸、A5和牛、黒板コンパス、青年団などの「身近な物の産みの親」。

 そして、「その地域に隠れた偉人」、「時代に埋もれた偉人」なども紹介しています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000105328.html


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【2024年最新・エリア別】アートとグルメを堪能、Penおすすすめの青森旅

2024-06-26 | アイヌ民族関連

Pen 6/25(火) 7:01

いま、アート好きのあいだで人気の観光スポットとして注目を集めている青森県。4月13日から9月1日まで、県内初となる『AOMORIGOKAN アートフェス 2024』が開催されている。本記事では、必見の展示とともに、旬の青森を感じられるグルメスポットなどをエリア別に解説していく。

【写真多数】県内初となる『AOMORIGOKAN アートフェス 2024』の見どころ・グルメスポットをすべて見る

『AOMORIGOKAN アートフェス 2024』とは

豊かな自然に恵まれ、伝統ある祭りや暮らしの手仕事、食など独自の文化が古くから伝わる青森県。その魅力をアートとともに再発見するアートフェスティバルが開催されている。青森県内の5つの美術館とアートセンターが、「つらなりのはらっぱ」というテーマのもと、ディスカッションを重ねて企画を練り上げた展覧会やプロジェクトを展開中だ。また共通企画として、栗林隆の体験型作品『元気炉』が各館を巡回する。

人間・動物・植物などの多様な訪問者たちが思い思いの活動を繰り広げる「はらっぱ」のように、そこには新しい風景が立ち上がり、子どもも大人も新鮮な何かに出会うことができるはずだ。各地で行われる夏祭りをはじめ、最も活気のある季節を迎える青森で、美術や工芸、建築 自然、食が緩やかに共振するアート巡りの旅を体験してほしい。

1.青森県立美術館

東京駅7時32分、新青森駅10時52分着の新幹線に乗り、地元のバスに乗り継いで、まずは、青森県立美術館へ。

世界遺産にも選ばれた日本最大級の縄文集落跡・三内丸山遺跡に埋蔵された縄文のエネルギーを糧に建設された青森県立美術館。隣接する発掘現場から発想を得た、トレンチ(壕)とホワイトキューブからなる斬新な建物は建築家・青木淳の設計によるもの。地面が幾何学的に切り込まれ、真っ白な「ホワイトキューブ」の展示室と、土の床や壁が露出する隙間の「土」の展示室が対立しながら共存する、強度の高い空間だ。

また、菊地敦己デザインの「青い木が集まり森になる」という成長を表すシンボルマークやサインといった洗練されたVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)や、ミナ・ペルホネンデザインの制服など、洗練されたVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)も見どころだ。

館所蔵のコレクションには、青森県を代表する版画家・棟方志功や、現代美術家・奈良美智、「ウルトラマン」シリーズで知られる彫刻家で特撮美術監督の成田亨など、青森の風土が産んだ作家たちが名を連ねる。さらにマルク・シャガールによるバレエ「アレコ」の舞台背景画を展示するアレコホールなど、特徴的な空間を活かした音楽や舞踏、演劇などの舞台芸術活動やナイトミュージアムを展開している。

青森県立美術館の見どころ1 『かさなりとまじわり』

開催中のメイン企画『かさなりとまじわり』展では、美術館を設計した青木淳氏が提唱した「原っぱ」論を出発点に、展示室のみならずコミュニティギャラリーやワークショップエリア、屋外ヤードなども活用。それぞれの空間を「原っぱ」に見立て、館内外のいたるところでアートを発見・鑑賞・体験できる場を設け、美術館全体に大きな「つらなり」を生み出そうとしている。さらに、美術館を構成する各空間が「かさなり」ながら作品がインストールされることで、青森の自然と人間の「まじわり」、死んだものと生きているものの「まじわり」、現代社会のありようとこれから未来を切り拓いていく人たちとの「まじわり」の諸相を浮かび上がらせる。

なかでも特に重厚な展示が展開されているのが、世界的に活躍し近年鬼籍に入った2人の作家―原口典之と吉田克朗の青森との関連性をベースに、時間と空間の「かさなり」と「まじわり」のインスタレーションを構築したエリアだ。20世紀の美術を牽引した骨太な表現と、混迷する現代を生きる作家のエネルギーが交錯する磁場に圧倒される。

青森県立美術館の見どころ2 美術館のシンボルの屋外彫刻

青森県立美術館を訪れたからには、当館のシンボルである奈良美智の2点の屋外彫刻に詣でることをお薦めしたい。美術館西側の屋外空間に常設された高さ約8.5mの犬の立体作品『あおもり犬』と、美術館南側の敷地にある高さ約6mのブロンズ像『Miss Forest/森の子』は、ともに目を閉じて沈思黙考し、そこに辿り着いた人々の心をも鎮静させてくれる。

7月13日(土)からは『鴻池朋子展 メディシン・インフラ』も開催される。東日本大震災以降、旅をしながら野外の技法を習得し、ときには土木工事や縫いものをメディアに「絵」を描いてきた鴻池。昨年スタートした『メディシン・インフラ(薬の道)』は、鴻池が東北各地を巡り、縁のあった場所に自作を展示保管してもらう長期的なプロジェクトだ。作家自身の身体性のリアリティを拠り所に展開された「場」に観客の身体が晒され、アートの持つ効用がメディシン(薬草)のように豊かに染み渡るはずだ。

青森県立美術館の見どころ3 café 4匹の猫

広い館内をまわった後は、館内のcafé 4匹の猫でランチ。白を貴重にし、開放的な大きな窓が印象的だ。メニューは青森県のブランド鶏「あべどり」を使ったカレーやベーグル、青森県産牛を使用したカレーやピラフなど青森県産の食材を主役にしたものが人気。現在、『AOMORIGOKAN アートフェス 2024』の限定カフェメニューも展開しているので、そちらもあわせてチェックしよう。

2.青森公立大学 国際芸術センター青森

2001年に開館した青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)は、八甲田山麓のダイナミックな自然と特徴的な建築が生み出す環境を活かし、現代芸術の多様なプログラムを発信するアートセンターとして活動している。作家が館に滞在しながら制作するアーティスト・イン・レジデンスのプログラム、展覧会、教育普及を3つの柱に、ジャンルを問わない展覧会やトーク、ワークショップなどを開催してきた。

世界的な建築家・安藤忠雄による建築は、周囲の豊かな自然環境を生かすため、起伏に富んだ地形を壊さないように配慮し、建物を森に埋没させる「見えない建築」をテーマにデザインされた。谷沿いに橋が架かるようなイメージの直線型の創作棟と宿泊棟、さらにギャラリーや円形の屋外ステージを備えた馬蹄型の展示棟の3棟から構成されている。春から秋にかけては、敷地内に点在する20 数点の野外彫刻を鑑賞しながら森の散策も楽しむことができる。

青森公立大学 国際芸術センター青森の見どころ 出自を異にする作家たちの滞在制作とその思考

国際芸術センター青森(ACAC)のメイン企画の展覧会は、『currents / undercurrents -いま、めくるめく流れは出会って』。滞在制作した展覧会の参加作家7名と青森ゆかりの3名、青森市教育委員会所蔵のアイヌの衣服(後期のみ展示)によるグループ展だ。世界各地から表現者が集うこの場所で行われる本展では2つのキーワードを掲げる。「current」は、「現在」という意味を持つ一方で、海流や気流など、ある一定の方向に動く水や空気、電流などの変わり続ける流れを示す。また、「undercurrent」は、表面上の流れの下にある目に見え難い流れや暗示を意味する。これらの言葉を手がかりに、場所とかかわり合いながら表現をつむぎ出す国内外のアーティスト、そして青森ゆかりの表現が本展に集う。

作家たちの生まれた場所、定住する場所、訪れた場所、これから行く場所はさまざまで、展示を追うごとに、彼らの境遇があまりに異なることに気付かされる。同時に、いずれの作家もこの青森の自然豊かな里山に辿り着き、厳しい自然環境や独特の歴史とかかわり、思考を深めながら、それぞれの創作に取り組んでいることに胸を打たれる。

3.ウィーン菓子 シュトラウス

1日の締めくくりは、青森駅から徒歩10分のアーケード街にある「ウィーン菓子 シュトラウス」へ。ウィーン菓子 シュトラウスは、1893年創業の老舗和菓子店「甘精堂本店」に併設された洋菓子店。甘精堂本店の5代目社長である故・三浦祐一さんが、オーストリアで7年間修業を積み、当時まだ日本で取得している人が少なかったオーストリアの国家公認菓子職人の最高位である資格「コンディトア・マイスター」を取得。帰国後、1987年に同店の2階にカフェをオープンさせた。 40年近く経ったいまも、三浦さんの秘伝のレシピが受け継がれ、まるで現地のような空間の中で、オーストリアの伝統的なスイーツが楽しめる。

いちばんの人気は、本場オーストリアのつくり方や味を忠実に再現した「ザッハートルテ」。使用するチョコレートは、大理石の上で温度調整をしながら丁寧にテンパリングしているので、見た目の美しさはもちろん口溶けも豊か。生地にサンドしたアプリコットジャムの酸味が、濃厚なチョコレートフォンダンの甘みをより一層引き立てている。

番外編 Penがお薦めする、青森を堪能できる宿2選

2泊以上の長期滞在をするのなら、ローカルな魅力を味わえる個性的な宿へ。番外編では、青森ならではのグルメや体験ができる2件をご紹介。美術館からは少し離れるが、無料のシャトルバスや県内ではお手頃な価格の往復貸切タクシーも出ているので、利用してみて欲しい。

星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル

奥入瀬渓流沿いに立つ唯一のリゾートホテルとして知られる、「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」。「渓流スローライフ」をコンセプトに渓流が目の前に広がる露天風呂や、奥入瀬渓流を巡るワークショップなど、自然を通じて心から満たされる滞在ができるホテルとして、連日国内外から多くの観光客が訪れている。

奥入瀬の美しい景観はもちろんだが、岡本太郎の作品である2つの巨大暖炉に注目して欲しい。東館にある『大暖炉「森の神話」』はラウンジに、『大暖炉 「河神」』は無料のカフェコーナーになっているので、人が少ない朝と深夜、静まり返った暖炉でドリンクを飲みながらじっくり旅の疲れを癒してみては。

旅の宿斉川@黒石市

旅の宿斉川は、黒石市の東側、八甲田連峰の東に位置する黒石温泉郷に位置する自然豊かな温泉宿。板留温泉の源泉掛け流しで、希望があれば貸切温泉に入ることもできる。十和田や八戸エリアからもアクセスがいいのもうれしい。旅館周辺には紅葉の名所で有名な「中野もみじ山」「津軽こけし館」「津軽伝承工芸館」など、すべて徒歩で行けるので、時間が許す限り散策してみては。

黒石市周辺は、青森県内でも山菜の種類が豊富なことでも有名。女将の斉川蘭子さんは、美容師時代に留学したニューヨークでの先進的なヴィーガン食に感銘を受けたことをきっかけに、青森県ならではの野菜を中心にした伝統食の魅力を再発見。この宿でも積極的に菜食メニューを取り入れることにしたという。

ダイニングにはカウンターが併設されており、食後は女将が選曲したジャズが流れるムーディーな照明のバーがオープンする。お酒もユニークなものが多く、青森県産の日本酒、シードル、ブランデーなど、青森を代表する酒蔵や蒸留所のお酒を中心にラインアップされている。アート好きな女将・蘭子さんと語らいながら、お酒を飲むのが楽しいひと時。

「アーティストや、アート好きな人の交流の場になれば」と語る蘭子さん。

近い将来、隣の土地に宿泊施設を増設してアーティストたちのアトリエをオープンさせる予定なのだそう。新たに計画中の新館にも足を運んでみたい。

次回は、青森旅【弘前編】。個性的な街の取り組みなど、見どころがたくさん!

https://news.yahoo.co.jp/articles/84a7b069a143e5962dad73ca47fa783770c2019e


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