今日は珪化木です。
手取川上流で採取した植物(葉)化石
上の写真は私が小学生の時に手取川の上流で採取した何かの植物の葉の化石です。それほど珍しいものではないと思いましたので、いつぐらいの何の化石なのか?調べておりません。白山近辺では植物化石は数多く採取されています。
そういえば、我らが関戸信次先生は手取層群の植物化石研究の第一人者でした。今度見てもらおうかとも思っています。
アメリカ オレゴン州 Schwants cnayon産の珪化木(漸新世)
この写真は年輪のはっきりと出ている珪化木のスライスです。片面がピカピカに磨かれていてコースターとして日常使いできるかも知れません。少し贅沢かもしれませんが、その珪化木の生きていた太古の時代を思い描きながらお茶を飲むのも優雅な時間かも知れません。
漸新世は地質時代の一つで新生代古第三期の時代にあり、約3400万年前から約2300万年前までの期間です。この時期の初期は気候的には不安定で、気温低下があり、大規模な海退が起こったようです。北アメリカとアジア(シベリア)はベーリング海付近でしばしば接続し、動物の行き来があったそうです。インドがアジアに衝突し、テチス海は急速に消滅した時代でもあります。
化石から太古の時代を想像するのも楽しい事です。地球史を考えると、大規模な劇的な変化は何度となく起きていました。そのような地質変動はこれからも起こりうると考えた方が自然だと思います。
岐阜県産の珪化木
この写真は土岐石と言われる珪化木です。土岐砂礫層の中で産出する貴重な石です。この写真の珪化木は年輪が読み取れるくらいで分かりやすい珪化木ですが、土岐石の中には見た目も美しいジャスパーになったものもあり、青緑色のものや黄色、紅色等を基調として、そこに様々な模様が加わった美しい色合いが魅力的です。その色の原因は鉄のイオンに寄る、と聞いた事があります。中にはピンク色のものもあり、「鉄は七変化」という言葉を思い出します。
石と色のテーマはいつか話題にしたいと思っております。
ドイツ ハンブルグ産の白亜紀後期のウニの化石
モロッコ産のデボン紀の直角石
上の2つの写真はウニと直角石の化石です。先週から化石の話題を続けていますが、今日は化石の形がテーマです。
私の鉱物結晶や化石に対する興味は主に形から入っていきました。形以外にも色や質感や成分や希少性等、石それぞれに個性があり、そのヴァリエーションも楽しいと思いますが、私の場合は形が一番でした。石選びの基本的な選択基準は形が美しい事がまず最初に来ます。
今日の化石も形です。少し変かもしれませんが、ウニの化石も直角石も何となく宇宙船を想起してしまいました。両方とも流線型をしており、SF映画に出てきてもおかしくないかのような形をしております。
化石は元々は生物だった訳で、その生物が生息した環境に合った合理的な形をしているはずです。
よく考えてみると、生物の適応や進化は不思議な事だらけです。
生物は何故環境に適応するのでしょうか?それも自らの形を変化させて行きます。その時のDNAの変化はどのように起きるのでしょうか?生命情報はどのようにして伝達し、修正し、適応し、進化していくのでしょうか?そのメカニズムは謎に満ちています。
アンモナイトの異常巻きも不思議な現象です。せっかくあのように美しい螺旋形になっているのに、進化にともなって複雑な形へと変貌しました。そこにはアンモナイトの都合があったのでしょうが、不思議な事だと思います。それは異常でも何でもなく、アンモナイトにとっての合理的な適応だったのだろうと思います。アンモナイトは標本としての美しさを競って自らを変化させた訳ではないのです。
フランス産の腕足動物の化石(リンコネラ)
この化石も不思議な形状から選んだものです。腕足動物は2枚の殻を持つ海産の底生無脊椎動物です。見た目は二枚貝に似ていますが、貝類を含む軟体動物門ではなく、独立の腕足動物門に分類されています。
私はこの化石 を見た時に2つの絵を想起しました。ひとつはエルンスト・ヘッケルの「生物の驚異的な形」の腕足動物に出てくる絵です。その絵はまさしくリンコネラを描いたものです。この印象的な形には私以外の人でも反応してくれると思います。因みにエルンスト・ヘッケルは高校時代の生物の時間に出てきた「個体発生は系統発生を短縮して反復する」のヘッケルです。
もうひとつは野中ユリの版画です。野中ユリはコラージュで有名な芸術家ですが、そのコラージュ作品の中に印象的にリンコネラの化石が入っている作品があります。野中ユリもリンコネラの形に反応したのだと思います。因みに野中ユリも鉱物趣味があるのか?いくつかのコラージュには水晶やヘリオドール等の鉱物が登場します。
今日は形の話でした。今日はこの辺で終わります。
ようやくアンモナイトです。
↑Tulear,Madagascar産 ジュラ紀のアンモナイト(ペリスフィンクテス)
↑Satatov,Russia産 ジュラ紀のアンモナイト(クラスペディテス ノディガー)
↑マダガスカル産アンモナイト
アンモナイトの魅力は何と言ってもその美しい幾何学的な螺旋です。さらにその質感です。あるものは黄金色に輝く黄鉄鉱に、あるものは虹色に輝くアンモライトという宝石に、あるものは煌く真珠光沢に、あるものは光沢のある大理石に、等々、その質感は多様性があります。そして、縫合線というフラクタルな幾何学模様も魅了的です。
そのような生物が太古の海に生きていたのです。そしてその環境には様々なドラマがあったと思います。
アンモナイトも三葉虫と同じ様に地球史的に地球を代表する生物だったと思います。そしてやはり示準化石でもあり、多品種です。
アンモナイトの化石は石好きの人たちを魅惑する美とロマンを兼ね備えていると思います。
実は、私は第一回東京国際ミネラルフェア(新宿ショー)に行っています。25年前の事になりますが、その頃はまだ本格的な鉱物趣味に染まってはいませんでした。ただ、何となく気になって、会場に行き、黄鉄鉱とアンモナイトの化石を買った記憶があります。
アンモナイトの化石は石好きの人とその予備軍的な人にも魅力的な石なのだと思います。
おすすめの本を一冊挙げます。それはその名も「アンモナイト」(2009年 著者:ニール・L・ラースン 発行所:アンモライト研究所)です。何がおすすめかと言うと、載っている標本が美しいのです。写真もきれいです。多様なアンモナイトもそれぞれ詳しく解説してあります。写真を見ているだけでも楽しい時間を過ごせると思います。
今日はいよいよ古生代の主役である三葉虫です。
↑モロッコ産のデボン紀の三葉虫(プロエタス)
写真は古生代を代表する三葉虫の化石です。三葉虫の化石は人気があります。実際、ミネラルショー等で見かける三葉虫の化石には、非常に美しい標本が沢山あります。保存状態が良く、見た目にも美しい形態をしているものも多くあります。ヨーロッパの中世ではそれが何だか不明のまま装飾品とされていた事もあったようです。
三葉虫の形態も様々あり、中には角が生えているものとか、宇宙船のような形のものもあります。
そういえば、高価な角付きの標本を買って、梱包を開ける時にその角を折ってしまった、という話を聞いた事があります。大切な標本を買って、それを楽しみに開ける瞬間に傷つける事、その傷は心の傷と同時に残ってしまうでしょう。私も鉱物結晶で同じ様な経験があります。 フラジャイルな感覚、それでこそ貴重なのかも知れません。
↑モロッコ産のオルドビス紀の三葉虫(デアカリメネオーズレグイ)
いわゆる三葉虫と言われる典型的な形をしている標本です。三葉虫は古生代で絶滅しますが、全地球史を考えると地球を代表する生物のようにも思えます。それは示準化石にもなっていて、広く世界中から産出します。種類も多く時代を特定する事も出来る貴重な化石です。
↑アメリカ オハイオ州産 オルドビス紀の三葉虫(フレキシカリメネミーキー)
この写真は丸まったまま化石になったものです。不思議な形をしています。三葉虫の面白さはその形態のヴァリーションかも知れません。
私はこの標本を初めて見た時は何かモダンデザインのように感じました。実際にはあまり似ていないのですが、小松市の郊外にある小松ドームの形状を連想してしまいました。そういえば小松ドームも何となく三葉虫的な形をしているように思います。
三葉虫の様々な形はWeb検索でも沢山見れます。形態ヴァリエーションを楽しんで下さい。
↑ナミビア産のペタライト(葉長石)
これは一見ローズクォーツに見えますが、薄いピンク色をしたペタライト(葉長石)です。その上面に見えるシダの葉のような形をした黒い模様は、一見何かの化石のように見えますが、しのぶ石(樹形石、模樹石)です。
しのぶ石は化石ではありません。しのぶ石の正体は、石の隙間に生じた二酸化マンガン鉱です。石の割れ目へ雨水や地下水が染み込み、マンガンが沈着してそのような模様ができます。
このペタライトの標本は二重に本性をごまかそうとしております。鉱物の肉眼鑑定は難しく、肉眼鑑定だけでは正確な同定は難しいものです。肉眼鑑定は多くの情報と、多くの実際の鉱物を手に取って見ると言う経験が必要だと思います。
さて、化石3、今日は偽化石である「しのぶ石」の話題です。
↑京都府相楽郡加茂町法花寺野産のしのぶ石
しのぶ石は化石ではない為、堆積岩に限って産出する訳ではありません。安山岩や結晶片岩など、いろいろな種類の岩石に普通に見られます。
↑上の三つは水晶と石英に見られる「しのぶ石」です。
水晶の中に入った「しのぶ石」(デンドライト)は宝飾として扱われます。それらはデンドリティック・クォーツと呼ばれ、中には非常に高価なものもあります。そのようなインクルージョンの面白さはその偶然性の美と希少性から人気の高いものとなっています。
しのぶ石は化石ではないのですが、生物の中にしのぶ石にそっくりの動物群がカンブリア紀にいました。それはフデイシです。フデイシの化石は分類学で有名なカール・フォン・リンネが「本物の化石以上に化石に似ている模様」と呼び、生命の化石ではないとしていました。それは電子顕微鏡が発達したおかげで生物化石だと考えられるようになりました。
フデイシの写真を見たい方はWeb検索してみて下さい。
今日の話題は偽化石と化石の話題でした。