かぶれの世界(新)

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アフガンは私の歴史観を深く傷つけた

2021-08-18 15:04:23 | 国際・政治
私が我が家の台風に翻弄されている間に、世の中もまた巨大な嵐に見舞われていた。日本はコロナ感染が急増する一方で異常な夏の長雨が西日本各地を襲いいまだに続いている。だが、世界を最も驚かせたのは米軍のアフガニスタン撤退宣言し間をおかずタリバンが全土制圧したことだ。

私は第2次世界大戦後に生まれ物心ついた時は米ソ冷戦時代だった。子供の時から2000年頃まで私の人生は、西(民主主義)と東(共産主義)の冷戦からソ連崩壊とベルリンの壁崩壊を経て民主主義が徐々に広がる世界を見てきた。

世界は理想的な夢に向かっている、その道筋は多少の凸凹があっても大勢は正しい方向に向かっている、私は学校で教わった歴史上最も幸せな時代に生きていたのかもしれない。多少の凸凹はベトナム戦争から米国が撤退時に北ベトナムが一気に南になだれ込んだ時、その時は深刻だった。

西欧民主主義のリーダーが共産主義に敗れたのだ。だが、当時のソ連の衰えと中国の未熟さは米国の牙城を脅かすには程遠かった。米国の覇権は続き10年余り後にベルリンの壁が崩壊、冷戦は西欧民主主義の勝利に終わった。Fフクヤマは歴史の終わりだと言った。こんな歴史の中で育った私はアフガンの政変には心底驚いた。私の思い込んでいた歴史がひっくり返ったようだった。

何でこんなことになったのか。米国は200兆円以上投入し2000人以上の兵を戦死させても、数万人のタリバンに対抗できず撤退に追い込まれた。米国だけではないEUを初め多くの国が軍事介入し、日本も経済的に後方支援をした。つまりタリバンは世界の民主主義に勝ったともいえる。

実際、今世紀に入り西欧民主主義は傷つき縮小を続けている。アラブの春は頓挫し、トルコやEUに加盟したハンガリーを始め東欧諸国は強権化に向かっている。例によって極端だが大雑把に要約すると、今世紀に入り多くの国は経済格差が広がり、国々の格差も同時進行した。20世紀の民主主義がIT化して今世紀に怪物に変異し、世界と人々の格差を絶望的に大きくした。

民主主義は最早世界の人々が求める理想ではなくなった。私に言わせればそんなことはない、それは勘違いだ。だが、世界中で多くの人達は貧困で考えが曇り、民主主義より大事なのはその日の暮らしの為に必要なお金になった。結果、人々の声に応える強権的なリーダーを国民は支持した。

米国の支援の下で民主主義政治の真似事をしたアフガニスタン政府は、実はお金優先でタリバンの敵ではなかった。申し訳ないが、私に言わせればそんな人物を大統領にした国民は当然の仕打ちを受けた。第2次世界大戦に敗れた日本の復興ぶりとは随分違う。米国もここまでアフガン政府が機能不全だとは思わなかったようで、タリバンの速攻に驚いたようだ。

西欧民主主義の敗因(まだ負けた訳ではないが、早急に修正が必要だ)は、民主主義のもう一つの旗である資本主義の行き過ぎた自由が生んだ経済格差だ。表面手に真似ただけのアフガン政府は国民を守るより逃亡し、多くの貧しい人達は生きて行く為に(嫌々かも知れないが、戦うこともなく)タリバンを選んだ。それが瞬間的政変の現実だ。

アフガンは民主主義に対する、或いは全世界に対する警鐘だ。最も注目されるのは中国との関係だ。中国は地政学的な米国の影響力の低下を喜んでいるが、一方で中国内で共産政府の圧制を受けているイスラム民族の反発を無視できなくなる。報道ではタリバンと関係の深かったパキスタンの動向が先ず注目を受けている。イスラム過激派に手を焼いている中東の立場も微妙だ。

最後に民主主義に対する世論の支持の微妙な関係について述べたい。決してアフガンだけではない。今朝の日本経済新聞が米PR会社のエデルマンが世界11カ国のおよそ1万3000人を調査(2020年10~11月)した興味深い結果を報じた。政府を信じない国民が多い方がより民主的だとも読める。

政府を信頼すると答えたトップ3はサウジ・中国82%、インド79%に対し、米国42%に次いで日本は最下位の37%だった。つまり、民主主義より強権国の方が高い支持を受け、制度的に最も弱い日本が最下位に沈んだ。何と素晴らしい国民・・・!? ■
コメント
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