大学・専門学校に進学した若者が就職するが安定した仕事に就いている人の割合が5割に満たないと、19日政府発表の衝撃的なニュースを記憶されていると思う。就職出来ない人と就職しても直ぐ辞める人が多い為で、高卒は更に悪い数字で安定就業の割合は32%だという。
翌日の日本経済新聞は「卒業したら正社員になって安定的に働くという、日本で長く続いてきた雇用モデルが崩れてきた」と報じ、野田首相はこの憂うべき事態に国として6月までに対策を講ずると発表した。ところがひょんなことで若者の離職率は昔から高いことが分かった。言う程の堅い雇用モデルでもなかったようだ。
若者世代は常に批判の対象になる。今回の「安定就業5割未満」のニュースに接して、先ず最初に感じたのは今時の若者は根性無で直ぐ仕事をやめると思ってしまった。だが、実は高度成長期は離転職の多い時代だったというのだ。労働省「新規学校卒業者の離職就職状況調査」によれば、1968年当時高卒者は3年目で51.7%、5年目で69.3%離職していたという。
現状は若者の大企業志向が強く、中小企業で働いたり求人の多い介護の仕事はやりたがらない、いわゆるミスマッチが多くの若者が安定した仕事に就かない理由と報じられている。だが、現在の若者が就職しても直ぐやめるというが昔も今も一緒、現在の問題は仕事をやめても暮らしていけるから、中々次の職に就かないことにあるという(団塊世代を総括する 三浦展)。
高度成長期といっても当時は、働かなければ暮らせない時代だったと三浦氏は指摘している。休みもろくにとらないで長時間残業もいとわず猛烈に働いていた私にはそんな記憶はない。しかし、言われてみれば、高度成長期が終りバブル時代の魁となる80年代に入りやっと豊かになったと感じるようになった気がする。昔からそれ程転職が多かったとは感じてなかった。
このように統計情報には気をつける必要があると常々気をつけているが、少子高齢化対策に関連して気になる情報を見つけた。というのは、厚生労働省統計情報部『衛生年報』,『母体保護統計報告』および『衛生行政報告例』によると、1949年から2005年までの人工妊娠中絶数が何と3630万もあるのだ。直近の10年間(1996-2005)でも942万もあるという。
53-64年頃の妊娠中絶の実施率は40-50%だったというから驚きだ。上記の10年間では実施率が大幅に低下して安定し、2005年は10%台で推移している。現在、少子高齢化社会が将来の社会保障を脅かすと国を挙げて消費税増税等の議論がなされている。
中絶の理由の内訳を知らないで論ずるのは乱暴だが、例えばこの実施率を1/3でも改善したら人口減のスピードをスローダウンさせ、近い将来に来ると予想される高齢化社会の風景も少し違って見えてくる、それによって議論の方向付けも変わってくるのではないだろうか。■