かぶれの世界(新)

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本格的景気後退期に入った米国

2008-02-10 14:17:51 | 国際・政治

失望のG7

京で開かれたG7(主要7カ国財務省・中央総裁会議)は共同声明で、世界経済減速に各国が共同して行動をとることを確認したが、各国の財政事情の違いで具体的な景気刺激策を打ち出せずに閉幕した。私の見方は、残念ながら未だに事態の深刻さを共有できず適切な対策を打ち出せず失望のうちに終った、という評価だ。

米国が既に本格的な景気後退期に入ったのは最早議論の余地が無い。世界経済も諸に影響を受け、米国と世界経済のデカップリング(非連動性)という言葉もこのところ見かけなくなった。IMFや世界銀行から民間アナリストまで経済成長率予測を軒並み低下させた。

このところの議論は、この景気後退がどれほど酷く、何処まで続くか、その処方箋はどうあるべきかに移ってきた。そこで盛んに引用・比較され始めたのが90年代日本のバブルだ。最初は米国あんな酷い日本の轍を踏むことは論外という雰囲気だったが、どうもそうでもなくなった。

過剰消費の付け

それはサブプライム問題に端を発した金融危機が何時までたっても収束する見込みが立たないうちに、従来から米国経済で懸念されてきた問題が火を噴き始めたからだ。最も深刻なのが過剰消費の付けが回ってきそうだということだ。3年前に「稼ぐより使う米国消費者」(下記URL参照)と題してその危うさについて記したが、遂に具体的な危機として浮上し始めた。

http://blog.goo.ne.jp/ikedaathome/d/20050227 

ビジネスウィーク誌(123)によれば、過去10年間GDP成長率2.9%に対し個人消費支出の伸びは3.6%であり、ITバブル崩壊後をとっても消費の過大支出は累計3兆ドルになるという。1997年以降家計は平均7.5%負債が増加(その前の10年間は4.2%)し、借金して世界経済を支えてきた。

昨年までの世界経済の繁栄のかなりの部分は、米国家計の借金に基づく消費が支えてきた。サブプライムはグローバル・マネーを米国に吸い上げる材料であったが、米国消費は世界の実業を支えた。吸い上げた資金を世界に投資し還流させた。この「都合のいい」仕組みが破壊される恐れが出てきた。

実際、サブプライム問題が広がりこれら消費者ローンなどが焦げ付き始めたのだ。そうなると、現在までに金融機関が公表している損失$100B(約10兆円)が、実際10倍以上に広がる(ルビニNY大教授NYタイムス2/9)との見方がある。損失を全て明らかにしろと迫られても、銀行はそう簡単に公表できそうも無い。

対策はスピードが鍵

バーナンキ議長は金利を下げる金融政策だけでは問題は解決しない、政府の積極的な財政政策を含む強力なトータルパッケージが必要であると言明している。FRBは金利を立て続けに0.75%0.5%下げ、ブッシュ大統領は15.6兆円の経済刺激策を発表した。

NYタイムズの同じ記事中に今回の経済後退は規模や対応の速度において日本とは違うという説を紹介している。しかし、どうも日本のバブルとの共通点が思ったより多いという説も紹介している。その真意は、現実的にサブプライムだけで問題が収まりそうも無くなってきたからだ。軟着陸の鍵は一にも二にもスピードが求められるのにだ。

長期間に渡って金融機関が傷んだままだと経済システム全体が傷み、回復に何年もかかる。対策はやりすぎでもいいから時間をおかず徹底して実行しなければならない、というのが日本のバブルから学んだ教訓であり、為政者の共通認識である。しかし、個々の政策となると大統領選、選挙区の事情があるし、国レベルの認識の差は更に大きい。

米国の底力

だが、私は危機に陥ったときの米国の底力はしたたかで侮りがたいと思う。以前「21世紀型グローバル経済のパラダイム」で混乱の後、新しいルールの基づくパラダイム変換が起こると予想した。既に米国企業はこの事態に備えたかのような対応をしているように私には感じられる。

あれだけ損を出してもCitiバンクは赤字ではないし海外から資本増強の投資を受けた。米国の海外投資の5割は海外通貨ベース、海外から米国への投資は9割がドルベースだそうだ。つまり、ドル安になっても損するのは日本を含め海外投資家ということだ(日経BP2/4)。

誰かが損しても他のところで誰かが儲け、トータルで勝てば良いという発想だ。ロムニー大統領候補がミシガン州でインタビューされ、自分の地元なのに未来の無い自動車産業を救済するより、将来のある分野に投資すべきと明言するのを聞いてショックを受けた。地元の既得権益にしがみつくメンタリティはない。日本では絶対ありえない。

危機に瀕した米国はその度に有利に戦えるルールを発明した。万が一大恐慌が起こっても最後に誰が笑っているだろうか。サブプライムは米国の問題だと対岸の火事を見る気持ちでいると、火事が収まった時はパラダイムが変化し、バブル後のように日本の富が大きく目減りしかねない。うかうかすると身ぐるみはがれてしまうくらいの積りでいたほうが良い。■

コメント (1)
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