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再還流する資本

2007-02-06 13:54:34 | 社会・経済

10月に「リスクマネー海外に向かう」で、安定志向の日本の個人資産の一部が定期預金を解約し、リスクの高い投資信託、その中でもハイリスクハイリターンの海外に向かっている、その結果として円安傾向の一因になっていると報告した。この動きは今も続いている。

もう一つ先週「イラク後の世界」で中東などに集積された資本は投資効率の高いニューヨーク市場に再投資され、そこで最新の金融テクノロジーを駆使して有望だけどリスクの大きい途上国や資源国に再投資される資本が世界を動かしている、金の流れに目をつけるべきとやや極端と思われかねない報告をした。今回、具体的な数字からグローバルマネーの動きを実感してみたい。

急増する米国の海外投資

4日のワシントンポスト紙が、リスク志向の高い米国個人投資家の投資動向について報じている。米国の海外投資は日本の規模の遥か上を行っており、グローバル資本の大きな流れを形作っている。そして海外投資は米国の投資家を(物凄く)潤しているという記事だ。

6年前米国株式ファンドに新規流入する資本の8%が海外に投資されたが、現在は劇的に上昇し77%になったという。当時は半導体やIT企業など米国内に魅力的な投資対象があったが、この数年BRICsなど海外途上国のほうが圧倒的に効率的な投資先となった。最早中東のオイルマネーが米国の最先端企業に再投資されるという構図は主流ではなくなった。

海外ほど儲かる投資はない

私も77%という数字を見て驚いたが、ミューチュアルファンド調査会社[1]によると海外投資ファンドの平均リターンが26%、米国内投資ファンドは12%で半分にも満たなかったという。特にエマージング諸国(BRICsなど)への投資はリターンが32%に達したという。これじゃあ勝負ありだ。

私事ながら、昨年田舎で塩漬けになっていた定期預金を信託投資に買い換えた時、中国向け信託投資の年間リターンは50%、インドでも30%を越えた銘柄が何種類もあり驚いた。その時は目的を考えてリスクの少ない国・通貨・債権などに分散された銘柄を買ったが、それでも10%以上のリターンがあった。(今から思えば残念だった。)

米国株式資産53兆ドル(約6300兆円)のうちの18%の9.5兆ドル(約1150兆円)が海外株式資産にあると別の調査会社[2]は報じているという。しかも海外株式保有が今も急激に増えているそうである。米国内外の投資家達はこの数年こうやって資産を増やしてきた。

ヘッジファンドと日本海外投資の規模

一方、これと重なると思われるヘッジファンドの総資産が1兆ドル(約120兆円)といわれており、先端金融商品の持つレバレッジがかかってその何倍かの影響力があると見られている。昨年日本の個人資産1500兆円のうち2.3%の海外資産(約35兆円)と比較すると、米国の海外投資規模の桁違いの凄さが分かる。

手元に具体的な数字がないが、世界に占める日本のGDP比率が2000年から5年間で大幅に減少(16%から11%)したが、保有資産の比率はもっと減っていると思われる。この10年間に海外資産がバブル並みに急増し巨大なリターンを得、その間日本は後始末と格差議論で忙しく取り残された構図であった。

企業からの海外投資

資本の流れという点では、以上に加えてマイクロソフトなど米国内の大企業(日本で言えばトヨタなど)への投資は、その大半が国内よりも海外投資される。これを含めると金融統計以上に実質の海外に流れる資本の比率は高い。

資本の行き先となった国は経済成長し国民の収入が増え、そして多分格差が拡大する。マクロで見ると原油高で集積された産油国のオイルマネーや貿易黒字の中国の外貨と世界の個人資産などがニューヨーク市場[3]に吸い上がり海外金融商品に投資され、再度海外に還流していくのが昨今の資本のメインストリームとなった。■

【注意】この記事は読者に海外投資を勧める目的ではありません。資本の流れをマクロで見て今後の世界を語り予測する材料にしようというものです。通算すると海外投資で私は損しています。あえて言うなら、上記記事は海外投資がカントリーリスク、為替リスクなど多くのリスクがあり、元本割れもあるとして投資を国・通貨・株・債権などに分散させることを個人投資家に助言している。


[1] Lipper

[2] AMG Data Services

[3] ロンドン市場が後に続く

コメント
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