かぶれの世界(新)

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イラク後の世界(後)

2007-02-03 18:26:21 | 国際・政治

そろそろ結論に入る。民主主義のグローバリゼーションは頓挫した。これからは、米国主導の資本のグローバリゼーションの世界展開が一巡し、世界は応用編に入る。資本は米国に限らず最も運用効率が高く価値を作り出すシステムに向かいそこで富を生み出し、格差世界がますます拡大する。世界は資本が自由に動ける制約されない市場作りの大競争に入った。逆説的だが世界レベルで改革の余地がある限りそれを埋めて世界経済の成長は続く。

しかし、主役は資本が向かう「資源」になるだろう。人為的に制御できない最大のアイテムが「資源の偏在」であり、世界経済成長下で益々拡大する資源の需給ギャップを裁定する資本が投下される。資源国はグローバリゼーションの教訓を生かし身に付けた応用力を駆使して資源帝国主義に向かう。資本対国家のせめぎ合いが最大のテーマになると予測する。これが私の仮説だ。

ヘッジファンドの影響力

この全ての議論の大前提は冷戦後の世界はパックスアメリカーナ下のグローバリゼーションである。その中で「アメリカ一人勝ち」から「辺境の反逆-テロとの熱戦」という時期を経て新たな時代に入ろうとしている。2008年の大統領選ではヘッジファンドが史上初めて大きな影響力を行使すると推測される。

ヘッジファンドの活動の場は世界市場しかない。彼らは国によって異なるあらゆる物、例えばカントリーリスク、市場、規制、金利、資源、労賃の差やリスク、を最新の錬金術(金融テクノロジー)を駆使して証券化して投資し富を増殖させ、運用総額は120兆円を越えたといわれている。

大統領候補の支持者

最有力とみられる民主党上院議員のクリントン女史や共和党のジュリアーニ前ニューヨーク市長の両氏とも強力な支援者にLisa Perry氏やPaul E. Singer氏など著名なヘッジファンドトップの名前が出て来る。他の有力候補にもいる。クリントンの娘チェルシーはヘッジファンド[1]に雇用された。彼らは資金提供者にとどまらず友人かつ重要な相談相手であり、支持ネットワークのキーマンだ。(CNN07/01/25

従来、ヘッジファンドの経営者はソロス氏のような例外はあるが政治から一定の距離を置き、いわば金儲けに専念してきた。次回の大統領選は史上初めて資金集めから政策にまでヘッジファンドが強い影響力を行使すると見られている。今までどちらかというと民主党寄りと見られていたヘッジファンド業界だが、今回Singer氏のように共和党支持にも有力なメンバーの名前が見られる。

グローバリゼーション大競争

昨年、ロンドン市場で新規上場する企業数が米国のそれを上回ったことが報じられた。エンロン・ワールドコムの粉飾決算スキャンダル以降厳格になった米国の規制を嫌がり、規制の緩やかな市場で資金調達する起業が増えたためだ。(NBonline

これを見て米国は直ちに規制見直しに着手した。米国らしい素早いリアクションだが、従来なら考えられないことであった。事の善悪ではない、市場には逆らえないと即断した結果だ。一方でニューヨーク・ロンドンの市場統合などあらゆる手段でグローバルレベルでの投資効率の改善をして資本還流を維持する強い決意がある。 

鬼っ子誕生

ヘッジファンドの主要な投資先の一つがエネルギー関連領域だ。昨年までの原油価格高騰の立役者はハリケーンやイラク戦争と中国の経済成長が引き金を引いたが、ヘッジファンドが実需以上に値を吊り上げた。しかし、その結果思わぬ鬼っ子が生まれた。

突然資源国(持てる国)に都合の好い環境が生まれ、ロシアなどの資源国がそれを利用する国家システム「資源帝国主義」に向かった。長期的にタイトな資源需給が続くことは間違いなくその影響力は核兵器より遥かに現実的で強力だった。時代を特徴づけるキーワードは「テロとの熱戦」から「資源帝国主義の冷戦」になる。彼らには市場のグローバル化はモラルも規範もない最適の戦場であった。

テロに強い資源

この環境では資源国にとってテロは怖くない。むしろテロの危機があるとその危機をヘッジした金融商品があらわれ裁定が起こり(値段が釣り上がり)、益々資源国に資金が投入される。極端に言うと新しい時代では何もしなくてもグローバル資本が助けてくれる。この商品価格高騰のサイクルは、単純に潜在需要が供給を上回り代替が無いからだ。

資源帝国主義時代への移行で中国の果たした役割は極めて大きい。欧米のように民主化や人権といった価値観を押し付けず資源さえ手に入れば取引を拡大し資源国の富の集積を助けるからだ。それが強い力を持っているのはグローバル資本の論理と矛盾しないからだ。民主国といわれるインドもいずれ「ならず者国家」との取引にもひるまないことになるだろうと私は予測する。

資源を元手に帝国主義の復活

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