かぶれの世界(新)

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パリは燃えているか

2005-11-05 22:06:25 | 国際・政治
先月末パリ郊外のアラブ系少年2人が警官に追われ感電死したことに端を発した暴動は、沈静化するどころかフランスの地方都市に飛び火しフランス全土に拡散する恐れが出てきた。欧米の報道や投書を読むと単純な若者の憂さ晴らしの暴力行為ではなく、根の深い複雑な背景がありそうでとても思いつきでコメントできないが、とりあえず理解の第一歩として気のついた要点を整理する。

+ 暴動はアラブ系住民が住むゲットーで起こっている。ゲットーは従来の労働者階級が住んでいた都市郊外に形成された。フランスはまともな同化政策のプランがなく移民社会がゲットー化するのを許した。
+ これらイスラム系2-3世は移民国に同化せず、昨年フランスで学校でのスカーフ着用禁止令の例など宗教的摩擦が起こり始めていた。
+ 高い失業率が続き高度な社会福祉レベル維持に不安を感じた国民は、移民に対する反発を強め近年右派が台頭、EU憲法の否決がフランス・オランダなどで続いた。
+ 失業率が全国平均9%に対しゲットーでは30%以上のものぼり、イスラムの若者(2-3世)は差別されているという不満が高まっていた。彼らは10年前までは北アフリカ系といわれたのに、今はイスラム系と呼ばれ危険物扱いされ(多分9.11後)、アラブ系の名前というだけで仕事に就けなかった。
+ 暴動に参加しているのはリングリーダーに唆された13歳から15歳の子供が殆どで、彼等は北アフリカやアラブからの移民の子供2世と3世である。
+ 80年代に移民を制限したがその後も不法移民や亡命が続き、2003年は驚くべきことにフランスは米国を抜いて世界最大の亡命受入国となった。
+ 地中海沿岸各国に北アフリカ・アラブ系移民が約300万人おり、多くは20歳以下の若者達で高い失業率のもと社会不安の要因となっていた。このイスラム社会が過激派の兵士供給源になり、各国の安全保障担当部門は9.11後警戒を強めていた。
+ サルコジ内相が強硬で非寛容な治安政策をとり一触即発だった時、暴動を「くず」とか「ごろつき」呼ばわりして移民社会、特に若者の強い反発を招き油に火を注いだ。
+ 次期大統領候補のライバルである話し合い路線のドビルパン首相に対抗して、サルコジ内相がその差を明確にするためより強硬な対応をしたとも言われている。
+ イスラムの暴動という宗教的な視点で捉えるより米国のハリケーン対応が黒人貧困階層に厳しい結果を招いたと同じように「貧困と差別」と捉えるべきという意見もある。

以上のことからアラブ系若者の不満のエネルギーはかなり強いことは明らかである。一方でイスラムがどこに行っても移民国の文化に同化しないようにも見えるが、確かに10年前までそれが社会的に問題になることもなかった。グローバリゼーションは「文明の衝突」を「爆発」までに高めたのだろうか。■


コメント
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