【今日の 物申す】
寒い季節にはこれが一番「静岡おでん」
などと言った、ありきたりな文章を書くつもりはないけれど「静岡おでん」の巻
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いつの頃からか、「おでん」を「静岡おでん」と言うようになった。
フランスにフランスパンが無いのと同じ、ナポリにナポリタンが無いのと同じ、ウイーンにウインナソーセージが無いのと同じ、イギリスに・・・・・
・・・・・・・キリがないのでここいらへんで止めておく。
つまり、ワシらから言わせると、「おでん」とはこの頃よく言う「静岡おでん」のことである。
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先日書いた、ワシのしょんない爺さんの「川端のトラさん」の家は、その妻であるヤエちゃんが駄菓子屋をやっていたのだ。
つまりワシは駄菓子屋の孫である。だから子供の頃は駄菓子が食い放題(こっそりと)
この川端の店は、駄菓子のほかに夏はアイスクリーム、アイスキャンデー、一括してアイス、冬はおでんを商っていた。
だから、わしは「おでん」にとても詳しいのだ。
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いま全国で言うところの「静岡おでん」の定義は
①串にさしてあること
②黒い汁であること
③黒はんぺんが入っていること(注1)
④だし粉、またはだし粉と青のりの粉が振ってあること。
の4条件だそうだが。
このあたりのおでんはみんなそうである。これフツーで全国的におでんとはみんなこの様なモノだと思っていたが。
(注1)黒はんぺんなどとは言わないでハンベと言ったが、これもはんぺんとは黒い色をしているのがここいらでは普通であって、白いはんぺんは「白はんぺん」といってかなり特殊な食べ物であった。こんなのはふかふかしてとても食べられたものじゃない、がワシの記憶にある幼いころの思い出。
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でも、しかし、お立会い、おでんは以上で完結ではないのであるぞ。
ここいら辺では、おでんを入れた大なべの中心に陶器の壺がデンと鎮座していて、そこに各店の秘伝のたれであるところの味噌が入っているのであるお立会い。
所望するおでんを決めたらば、その串をおもむろに取り、一気に中心の味噌壺にズボッ、そして脇にあるだし粉を振りかけて食べるのである。(2度漬け不可)
この壺が「静岡おでん」にはないではないか、味噌壺は漁村市特有の様式なのであろうか、詳しいことは学会での発表を待たれるところである。
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検査室勤務のカッちゃんが、学生の頃に静波の海の家でバイトをしていた時の話を思い出した。
おでんを客に出したところ「てめえ、鋸屑を振りかけやがって、バカヤロー」と恫喝されたことがあったそうである。
本人はポカーンとした。なにがそんなに怒るのか。分かりませーん。
考えるに、おでんに振りかけただし粉のことを怒っているらしいぞ。
カッちゃんがその後どのようにしたか聞き忘れたが、困ったことであろうとは推察する。
こほど、食文化とは地方によって違いがあるものである。
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ところで、なんで「静岡おでん」とネーミングしたのか、
静岡市ではない周辺の市町村ではもっと怒っても良いではないだろうか。
知らない県外人から見れば、静岡市のみのおでんの特徴だと誤解するではないか。
黒はんぺんは、そもそも静岡市のものではなくて漁村市製造の練り製品であろうぞ。
これが定義の一つに入っているということは、このおでんは「漁村市おでん」と言うべきであろう。
また100歩譲っても「駿河おでん」であって静岡おでんなどと紛らわしいネーミングはワシは受け付けないぞ。
フンだ!
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これは、県名と市名が同じことにゆえんする誤解または個人的な反発である。が、
やっぱり漁村市生え抜きの駄菓子屋の孫としてはひとこと物申したいわけだ。