【今日の 地学】
川越し市にある川越し川は、約400年前に人力で山を切り開き、川の流れを替えた。
この大工事のおかげで東海道金谷宿は洪水を免れ、新田開発も同時に行われたのである。
江戸時代に立派な仕事が行われ、今ワシらはこの恩恵にあずかっているというわけである。
ところが・・・・この開削工事は完全ではなく、一部山が残ってしまったので全体の流れからみると
川幅が狭くなってしまっているところがあるのである。
(なかなか表題のノジュールにたどり着かないがダイジョブか?)
数年前から国土交通省でこの山を切り開き、川越し川の洪水対策の強化をはかることになった。
江戸時代以来歴史上初めてのことである。
これが切り開いた山の断面である。
中央下に人がいるが同僚のWIDEクンである。
ことのついでに言うと、この山のてっぺんあたりには、先の戦争で軍が電波兵器を作ってB29爆撃機を打ち落とそうとした秘密研究所の跡がある。
この秘密研究所は湯川先生も携わったほどの最先端な研究施設であったそうな。(湯川先生とはガリレオの福山雅治のことではなく、ノーベル物理学賞の湯川秀樹のことであるぞ)
電波を照射して重爆撃機を撃ち落とすことまではできなかったのだが、この話は機会あれば後日にしよう。
この山の中から下のような完全に球形な石が出土?されたのである。しかも何個も、なんで丸くなったのか不思議だ。
昨年度の工事が終了したところでこれらを現地に残しておいてくれた工事業者に感謝である。
実際にはこの何倍もの数の石が出土されたであろうと推測される。
大きいものでは直径37cmもあって、とても人の力では持てない。
径は、先に登場したWIDEクンが農林課にある樹木の直径をはかる器械で計測したそうだ。
国土交通省にはもっと大きい球があるそうだ。
◆ で、これを単なる珍しい石だと言うだけではもったいない。というわけで
ワシがボランティアをしている静岡科学館に持って行き、石に詳しい館の次長に鑑定?を依頼したのである。
次長は静岡地学会の会員であり。地学会の会長はじめ数人にこの石を見せたのである。
地学会としては非常に興味深い石だということで、これはひょっとして「ノジュール」ではないか。しかあれば現地を見せてほしいということになった。
(ふう、やっとこ「ノジュール」が出現した)
◆ここで少し時間をいただいて【ノジュール】
【ノジュール(Nudule)】
堆積岩中の珪酸や炭酸塩が化石や砂粒を核として、化学的な凝集を受けて形成された塊。 まわりの母岩より固く、球状になる場合が多い。
科学館の次長がいうことには「化石を探すにはノジュールを探せ」というほど特徴のある石だそうで、中心には化石が出現する(ことの確率が高い)石だそうである。初めて聞いたぜ。
ワシらのような世代の人間を団塊の世代と言うが。そういえば定期刊行物で通信販売専門の旅行雑誌に「ノジュール」というものがあるが、なるほどここから来たか。
◆去る8月5日午後に静岡県地学会の主要な面々が現地に集まり、ここの現場の現地踏査をした。
さすが石の研究者たち、登山靴にリュック、手には思い思いのハンマー、測量に使う野帳も携えてきている。
上の写真:左側はこの工事を担当する国土交通省の出張所長とドウゼンクンである。右端に地学会の会長がいる。
色々な大学の先生方であるが、さすが専門家、もう無いだろうと思っていた斜面にとりつくと「あ、ここにもある」「これもそうだ」
と次々に球状の石を掘り出す。(岩だけに)ガンガン出てくるぞ。
大先生方を例えては失礼だが 「お菓子の山を目の前にした子供」 「砂糖に近づいた蟻」 状態で
このクソ暑い気温にもかかわらず、まるで時間のたつのを忘れた様子であった。
最後に堤防の上でこの場所・この石の検討会を始める。
さすが研究者たち、傍で聞いているワシらにはチンプンカンプンな地学専門語が飛び交う。
まあ様々な意見が出て、一致しないところが研究者たるゆえん。
いずれにしても持ち帰って研究室で石の内部を詳しく見てみないと結論は出せない、ということとなった。
◆工事再開が10月ごろに予定されているので、それまでに地学会の【巡検会】をすることになったようである。
その日も野次馬で参加しようと思っているWIDEクンとワシである。
【巡検会】
- 地理学、地質学では実地調査、現地調査を意味する用語。Field Excursionsの訳語である。一般に言うとフィールドワークであるが、実地に現場を見て資料収集をしたり、聞き取りをしたりして客観的な研究の材料を得るという研究手法のことである。研究活動の中では、「○○半島東部巡検」というような表現を使用する。また、地理学、地学分野で市民対象に社会教育という意味で、化石採集、地質・地層の観察会を催したりする場合も「巡検」という言葉を使用する。