いわゆる「高級インスタントラーメン」には、次のようなものがある。
(1)「マルちゃん正麺」(東洋水産)・・・・塩味、醤油味
(2)「日清ラ王」(日清食品)・・・・塩、醤油
(3)「サッポロ一番頂」(サンヨー食品)・・・・しお味.
(1)は、役所広司のTVコマーシャル「うまい」「嘘だと思ったら食べてください」で大ヒットした。生麺のような味わいをアピールし、それが消費者に受け入れられた。
このヒットに刺激され、(2)が、さらに(3)が次々に発表された。
「高級インスタントラーメン」の最大の特徴は、麺を油で揚げていないことだ。
従来の「チキンラーメン」や「サッポロ一番塩ラーメン」などは、油で麺を揚げているため、①油臭さが強く、②脂肪が酸化して有害な過酸化脂質が多くできる・・・・という問題があった。油を加熱すると、酸化しやすく、過酸化脂質ができやすくなるのだ。
過酸化脂質には毒性がある。ラットに投与した実験では、成長を阻害することが確認され、多量に投与すると死ぬ。人間も、胃もたれ、腹痛、下痢などを起こすことがある。
「高級インスタントラーメン」を毎日食べ続けた場合、体に悪影響はないか?
従来の油で麺を揚げた製品に比べれば、過酸化脂質の量が少ないので、胃や腸への悪影響は少ない。
ただし、(1)と(2)は、麺に植物油脂が練り込まれているため、過酸化脂質が多少できている。一方、(3)の場合、麺の原材料は「小麦粉、食塩」で植物油が使われていないため、過酸化脂質ができることはなく、本来の生麺に近いものになっている。
問題なのは、いずれの製品も、食品添加物が多く使われていることだ(8種類から14種類程度)。
(a)特に問題なのは、カラメル色素だ。カラメル色素は、いずれの製品でも、醤油味や味噌味に使われている。スープを褐色にするために必要なのだろう。塩味には、いずれも使われていない。
カラメル色素は、カラメルⅠ~Ⅳの4種類がある。カラメルⅢとⅣには、発癌物質(4-メチルイミダゾール)が含まれている。原料に糖類のほか、アンモニウム化合物が使われているため、熱処理の過程で副産物として生成されてしまうのだ。・・・・しかし、「カラメル色素」としか表示されないため、4種類のうちどれが使われているか、わからない。
一般にカラメル色素は、ⅢとⅣが多く使われる傾向にあり、コーラに使われているのはⅢかⅣだ。そのため、4-メチルイミダゾールが含まれている。
「高級インスタントラーメン」の醤油味や味噌味にも、ⅢあるいはⅣが使われている可能性がある。そうなると、4-メチルイミダゾールを摂取することになる。
(b)次に問題なのは、麺を黄色に着色しているクチナシ色素。クチナシの実から抽出された黄色い色素だが、ラットに体重1kgあたり0.8~5gを経口投与した実験では、下痢が見られ、さらに肝臓の出血と肝細胞の壊死が認められた。・・・・ただし、この投与量は体重が50kgの成人に単純換算すると、40~250gという大量になるため、麺に少量添加された場合に同様な毒性が現れるかは不明だ。
なお、(2)の場合、カロチノイド色素とあるが、これはクチナシ色素と考えられる。
(c)鹹水は、ラーメン独特の風味や色合いを出すために添加されている。炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなど16品目のうちから1品目以上が使われる。全般的に毒性は低いが、多量に摂取した場合、胸焼けを起こすことがある。
(d)増粘多糖類は、樹木の分泌液やマメ科植物、海藻、細菌などから抽出された多糖類だ。粘性やとろみをもたせるために使われる。30品目程度あり、中には安全性の疑わしいものもあるが、「増粘多糖類」としか表示されない。
結論。いずれの製品も問題を抱えている。
塩味はカラメル色素を含んでいないため、リスクが低い。特に(3)の「しお味」は、添加物が8種類と少ないほうで、過酸化脂質もできにくいので、今回の5製品の中では最も体に悪影響が少ない製品だ。
とはいえ、どの製品も添加物が胃や腸を刺激する可能性がある。毎日食べ続けるのは避けたほうがよい。
□渡辺雄二(科学ジャーナリスト)「「高級インスタントラーメン」は中身も“高級”なのだろうか ~新買ってはいけない 第203回~」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
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(1)「マルちゃん正麺」(東洋水産)・・・・塩味、醤油味
(2)「日清ラ王」(日清食品)・・・・塩、醤油
(3)「サッポロ一番頂」(サンヨー食品)・・・・しお味.
(1)は、役所広司のTVコマーシャル「うまい」「嘘だと思ったら食べてください」で大ヒットした。生麺のような味わいをアピールし、それが消費者に受け入れられた。
このヒットに刺激され、(2)が、さらに(3)が次々に発表された。
「高級インスタントラーメン」の最大の特徴は、麺を油で揚げていないことだ。
従来の「チキンラーメン」や「サッポロ一番塩ラーメン」などは、油で麺を揚げているため、①油臭さが強く、②脂肪が酸化して有害な過酸化脂質が多くできる・・・・という問題があった。油を加熱すると、酸化しやすく、過酸化脂質ができやすくなるのだ。
過酸化脂質には毒性がある。ラットに投与した実験では、成長を阻害することが確認され、多量に投与すると死ぬ。人間も、胃もたれ、腹痛、下痢などを起こすことがある。
「高級インスタントラーメン」を毎日食べ続けた場合、体に悪影響はないか?
従来の油で麺を揚げた製品に比べれば、過酸化脂質の量が少ないので、胃や腸への悪影響は少ない。
ただし、(1)と(2)は、麺に植物油脂が練り込まれているため、過酸化脂質が多少できている。一方、(3)の場合、麺の原材料は「小麦粉、食塩」で植物油が使われていないため、過酸化脂質ができることはなく、本来の生麺に近いものになっている。
問題なのは、いずれの製品も、食品添加物が多く使われていることだ(8種類から14種類程度)。
(a)特に問題なのは、カラメル色素だ。カラメル色素は、いずれの製品でも、醤油味や味噌味に使われている。スープを褐色にするために必要なのだろう。塩味には、いずれも使われていない。
カラメル色素は、カラメルⅠ~Ⅳの4種類がある。カラメルⅢとⅣには、発癌物質(4-メチルイミダゾール)が含まれている。原料に糖類のほか、アンモニウム化合物が使われているため、熱処理の過程で副産物として生成されてしまうのだ。・・・・しかし、「カラメル色素」としか表示されないため、4種類のうちどれが使われているか、わからない。
一般にカラメル色素は、ⅢとⅣが多く使われる傾向にあり、コーラに使われているのはⅢかⅣだ。そのため、4-メチルイミダゾールが含まれている。
「高級インスタントラーメン」の醤油味や味噌味にも、ⅢあるいはⅣが使われている可能性がある。そうなると、4-メチルイミダゾールを摂取することになる。
(b)次に問題なのは、麺を黄色に着色しているクチナシ色素。クチナシの実から抽出された黄色い色素だが、ラットに体重1kgあたり0.8~5gを経口投与した実験では、下痢が見られ、さらに肝臓の出血と肝細胞の壊死が認められた。・・・・ただし、この投与量は体重が50kgの成人に単純換算すると、40~250gという大量になるため、麺に少量添加された場合に同様な毒性が現れるかは不明だ。
なお、(2)の場合、カロチノイド色素とあるが、これはクチナシ色素と考えられる。
(c)鹹水は、ラーメン独特の風味や色合いを出すために添加されている。炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなど16品目のうちから1品目以上が使われる。全般的に毒性は低いが、多量に摂取した場合、胸焼けを起こすことがある。
(d)増粘多糖類は、樹木の分泌液やマメ科植物、海藻、細菌などから抽出された多糖類だ。粘性やとろみをもたせるために使われる。30品目程度あり、中には安全性の疑わしいものもあるが、「増粘多糖類」としか表示されない。
結論。いずれの製品も問題を抱えている。
塩味はカラメル色素を含んでいないため、リスクが低い。特に(3)の「しお味」は、添加物が8種類と少ないほうで、過酸化脂質もできにくいので、今回の5製品の中では最も体に悪影響が少ない製品だ。
とはいえ、どの製品も添加物が胃や腸を刺激する可能性がある。毎日食べ続けるのは避けたほうがよい。
□渡辺雄二(科学ジャーナリスト)「「高級インスタントラーメン」は中身も“高級”なのだろうか ~新買ってはいけない 第203回~」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
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