語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】米国人とユダヤ人が共有する選民思想 ~米国とイスラエル~

2014年11月13日 | ●佐藤優
 世界を股にかけて動きまわらねばならないビジネスマンにとって、宗教は必須の教養だ。
 たとえばユダヤ教と米国的キリスト教の関係。
 イスラエルは、いまや世界中から非難される国家だ。
 そのイスラエルをマクドナルド、インテル、IBMなど多数の米国企業が支援し、世論調査では米国民の6割以上がイスラエルを支持している。何故か。

 米国には独特な宗教集団「ユニテリアン」があって、従軍牧師やCIAの職員に信者が多くいる。
 ユニテリアンは米国で勢力を持つ市民宗教なのだが、これが実はユダヤ教ととっても親和性があるのだ。

 正統派のキリスト教において、イエス・キリストは真の神であり、かつ、真の人であると信じられている。父(神)=子(イエス)=聖霊は「三位一体」である、というのが、キリスト教の根幹的な教理だ。
 ところが、ユニテリアンはこの教理を否定する。「イエスは真の神ではなく、偉大な教師である」というのだ。イエスの死後の復活など自然科学に反する、として認めていない。
 この考え方は、イエスという宗教指導者は認めるが、神の子とは認めないユダヤ教に近い。
 こうした感覚が米国のキリスト教の標準になっている。だから、米国大統領は「神に懸けて」とは言っても、「イエス・キリストに懸けて」とは言わない。

 エマニュエル・トッド(仏)『移民の運命』によれば、米国は差別する人たちの集団だ。
 米国の白人民主主義は、米国先住民を排除し、黒人を排除した。17世紀後半から1950年代ごろまで、多くの州政府は白人女性が先住民や黒人と結婚することを禁止した。
 これはカルヴァン派の「自分たちは神に選ばれたピューリタン(清教徒)だ」という意識からきている。
 ピューリタンは、英国国教会の迫害から逃れて米国大陸に渡り、この地に理想の国を築こうとした。この米国建国の民からすると、平等とは選ばれた民の中での平等であり、それ以外の者は差別してよい。これはユダヤ教の持っている選民思想とシンクロする。その意味で米国人はユダヤ教にシンパシーを感じやすい。

 シオニズムは、イスラエルの地に故郷を再建しようとするユダヤ人の運動だ。
 米国には、「クリスチャン・シオニズム」という思想が存在する。新約聖書には、この世の終わりがやって来るとき、イスラエルのエルサレムにイエスが再臨し、最後の審判を行う、と書かれている。そのために、聖地イスラエルを異教徒から守ることが宗教的に重要である、という考えだ。 

□記事「佐藤優が指南 宗教から読み解く国際ニュース」(「週刊ダイヤモンド」2014年11月15日号)
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